角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

通さんゾっ!

2008年09月05日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
藍色基調の井桁プリントをベースに、合わせは茶色の漢文プリントです。こちらも和が活きた配色じゃないでしょうか。
ときにお客様から言われる言葉、『外で履きたいよねっ!』。ほんとに外で履けたら「祭り」にピッタリと思いますね。

角館のお祭りでは、町内随所に「張り番」が設けられます。これは丁内単位にいくつもあり、曳山がその丁内に入るときは必ずお伺いを立て、「入丁許可」を得なければなりません。
張り番の立場で言うと、曳山が自分たちの丁内へ来てくれることは基本的に嬉しいことです。これは曳山の起源が、祭りの「余興」として出されたことに起因します。祭りを盛り上げてくれる人たちですから、それを大歓迎するのはフツーの考え方でしょう。

ただし、ときに入丁を拒否される曳山があります。これにはいろいろなケースがあって複雑なんですが、相応の数の曳山がすでに入丁済みであったり、近い過去にその曳山が当該丁内で無礼な行動があったり、その張り番のある丁内から出ている曳山に対して因縁がある場合などですね。
入丁を拒否された曳山は、進路を変えるしか手がありません。そうなると目的の行動に大きな制約が生まれ、計り知れないハンディを背負うことになるわけです。

青森県からお越しのご夫婦、ご主人が草履を気に入ってくださりオーダーとなりました。送り先に記された自治体名がはじめて聞く名前だったので、『どのあたりが合併して出来た市ですか?』とお訊ねすると、かつて私もよく出かけた地域でした。その合併に際して、あるトラブルがあったと言います。

隣接する町と村四つほどの合併協議会が立ち上げられたものの、ほぼ中間に位置する村が極度の財政難だったようです。ほかの町村がこの村を敬遠し、真ん中を外した「飛び合併」が成立してしまったんだそうですね。
敬遠された村は、そりゃあ気分が良いワケがありません。そこの住民は、『あいつらにオレたちの村は通さんゾっ』。

実際問題としてそんな「入丁拒否」が出来るはずはありませんが、他人事として見れば気持ちが分らないではありませんかねぇ。
そう言えば角館の曳山にも、隣接する丁内同志であまり仲の良くないところがあります。おおかたの理由は「分裂問題」、かつてひとつの曳山だったところが分裂により二つに分かれた場合ですね。

「合併」も「分離」も、人の世界は簡単に行かないようです。

コメント
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