角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

寒い日には“熱いもの”。

2006年10月17日 | 実演日記
今日の草履は、9月25日、東京都杉並区からお越しくださった母娘さんペアからのオーダー草履です。『紺の唐草に紺でイイんだけど、鼻緒だけは赤くして!』がこちらになります。
これまで鼻緒だけの色替えはしたことがなく、もちろん展示品にもそのようなサンプルはありませんでした。お母さんのご希望を形にしたのがこの草履ですが、気に入っていただけると嬉しいです。
ご注文3足合わせて、明日の便で出発です。

昼頃から雨の予報が、なんとか夕方までもってくれました。しかし、降りだすとスゴい雨です。まるで会話にならない、けたたましい雨音でした。
雨が降ると寒さが余計身にしみます。熱燗で鍋がイイなと感じる時節になりました。

大雨が小降りになった頃、ひとりの男性が米蔵に入って見えました。私の草履を見つけるなり、目を爛々と輝かせて近づいてきます。
『こ、これはなんですかっ?』。簡単に草履のご説明をすると、さらに目の輝きが増しました。その先は、必死にメモを取りながら質問の嵐です。
『この草履を作ろうとしたきっかけは?』『はじめられてから何年?』『材料の調達先は?』『布巻草履という名前は?』『ほかに作っている人は?』・・・。

これまでいろんなお客様からのご質問にお応えしてきましたが、メモを取りながらこれだけ矢継ぎ早に、且つ真剣に訊かれたことは初めてです。
ようやくこちらから質問できたのは、『どちらからお越しですか?』。男性もようやく我に返り、『いやっ、これは失礼しましたっ』とおっしゃりながら差し出された名刺には、「フリーライター」という肩書きがありました。
大手新聞社を退職後、現在はフリーで「東北の匠」を取材しているそうです。暗くもなったし今日はこれくらいで‥と思いながら立ち寄った西宮家で、これまで見たことがない草履に出くわしたことでのこの興奮というわけです。

30分ほどの“取材”の後、『いやぁ~、ここへ寄って良かったぁ、ありがとうございました!』。深々と頭を下げられ、ニコニコと米蔵を出て行かれる左手には、30分前まで見たことも聞いたこともなかった「布巻草履」がしっかり握りしめられていました。奥様、きっと喜んでくださいますヨ。

寒い日には、「熱い鍋」と「熱い人」が良いかもしれませんナっ!

コメント (2)
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