世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

稀な人種

2007年06月01日 23時16分04秒 | Weblog
ハイヒールを脱ぎ、ぐったりと身をソファーにあずけていた。時々、革のきつい臭いにむせりながら。
ようやく、閉じていた目を開けると、窓の外から光が刺しているのが見えた。
そして、どこまでも澄みきった青空。
四角に縁取られた空をずっと眺めていたかった。
頭の奥がまだズキズキするけど、起き上がる。
後場終了まで、あと20分。株価が気になる。
…仕事しなくっちゃ。


それは午後に始まった。
会社に赤ん坊を連れてきた産休中の先輩。
先輩は綺麗で優しくて仕事もできて、私を含め、多くの後輩の支持を得ている。
仕事上がりに上野のパセラへ私たち後輩を引き連れていってくれたのはそう遠くない過去のことだ。

あまりぐずらない子供だったが、数時間のフロア滞在中に何回かわめいた。
フロアの隅にいるはずなのに、子供の声ってどうしてあんなに響き渡るのだろうか。
何回かの「フンギャー」のあと、私の具合いは悪くなった。
電卓が叩けなくなった。
「今度はいつ泣き始めるのか」という心構えが強い不安になり、ソラナックスを多目に服用してしまったのも良くなかったのかもしれない。

打ち合わせ中の吉熊上司に「気持ちが悪いので」とホウレンソウをし、別室で横になった。
一昨年父親になったばかりの吉熊上司に、まさか「〇〇さんの子供の泣き声がうるさいので具合いが悪くなりました」とは言えなかった。

いくら子供嫌いと豪語している私でも、まさか体調が悪くなるほどだったとは予想外、初めての経験で驚いた。
これから出産ラッシュを迎えるあのフロア。
今彼女たちの腹にいる胎児が、一年後の私を脅迫する…。


「あなたも昔は赤ちゃんだったのよ」
とか
「あなたもいずれ子供を産んだら変わる」
なんていう言葉は聞き飽きた。
こんな私のような人間は少数派で、社会ではあまり市民権を得られていない特殊な意見保持者だという意識を持っている。いや、持たざるを得ないのだ。
きっと全人口の数%もいない稀な人種なんだろう。私は。
mixiでも「子供大好き」的コミュに比べて「子供嫌い」的コミュが極めて少ないという歴然たる事実がある。

何が言いたいんかというと、…とにかく、そういう人種もこの世に僅ばかりか存在するということなんである。

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