晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

藤沢周平 『竹光始末』

2020-01-17 | 日本人作家 は
我が家の書棚に藤沢周平さんの本がじわじわと増えてきました。
「じわじわ」って書くとなんかまるでマイナスなこと(悪いウィルスとか汚染とか借金とか)が増殖していくようなイメージですが「物事がゆっくり確実に進行するさま」という意味で。じっさい、ここのところよく読んでます。

さて『竹光始末』です。短編集です。

みすぼらしい格好の武士と、その家族とみられる妻、ふたりの子。藩の木戸番士に「当城内に柘植八郎左衛門という御方はおられるか」とたずねます。話を聞くと、周旋状を持っているので、仕官を希望して来たということでさっそく柘植の屋敷に向かいますがあいにく多用で留守。後日、その周旋状を見た柘植は「はて、誰だったか・・・」。運悪く、仕官募集はつい先日締め切ったばかり。ところが幾日後、なんと仕官のチャンスが・・・
という表題「竹光始末」。

無役の藩士、馬場作十郎は、妻の小言にうんざりな日々。作十郎は(いちおう)一刀流の師範代という剣の実力なのですが妻は「それが一俵でも足しになるのですか」とにべもありません。ところがある日、家老に呼ばれ、藩で預かっていた他藩の家臣ふたりが逃げたので捕まえてくれと頼まれ・・・
という「恐妻の剣」。

繁盛している太物屋の見習い奉公、直太は、かつては賭場に出入りをするようなワルというか遊び人でしたが、今は足を洗って真面目に奉公しています。が、ここの太物屋の主人は妾宅に入りびたりで、後添えの本妻が可哀想に思います。そればかりか、その本妻の弟がたまに店に来ては売り上げを脅し取っていくので、可哀想に思った直太はその弟のところへ・・・
という「石を抱く」。

版木掘りの磯吉は初めて行った賭場で五十両と大儲けをしてしまいます。おそるおそる帰ると、あとから男がつけてきます。その男はおそらく賭場にいた男。どうにか逃げ切った磯吉ですが、数日後、仕事場の先輩に飲みに誘われるとその先輩が「お前、数日前に柳島の賭場に行ったか?」と・・・
という「冬の終りに」。

弥四郎は、同じ道場仲間の清野の家庭の問題を耳にしますが、本当なのかどうかわかりません。弥四郎と清野は江戸に出府となりますが、ある上役も江戸に行くと分かります。じつはその上役というのが清野の妻とただならぬ関係という噂で・・・
という「乱心」。

三崎甚平の家に、曾我平九郎という男が訪ねていたのですが、思い出せません。が「ああ、あの時の・・・」とようやく思い出し、平九郎は仕官を探しにやって来たとわかるのですが、甚平の家に寝泊まりをし、大飯喰らいで一部屋も占領されていい迷惑で・・・
という「遠方より来る」。

全作品の主人公、悲しいです。哀愁ただよってます。
なんていうんでしょうかね、藤沢周平さんの文章って「ぐいぐい引き込まれる」ようなものでもないし、ストーリー的にも地味っちゃ地味なんですけど、読み終わったら他の作品も読みたくなるというのは、やっぱり、その、「巧い」んでしょうね。
昔のヤクルトスワローズみたいな。
相手チームが恐れるような強さはないけど、負けない。

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