晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

半村良 『江戸群盗伝』

2021-12-15 | 日本人作家 は

たびたびプライベートな近況話で恐縮ですが、スマホを買い替えました。思えば、つい3年前までガラケーでして、その理由として「携帯なんて出先で電話ができりゃいいんだよなんでわざわざ出かけてまでインターネットなんかやらなきゃならねえんだよ」と、世を拗ねていたわけですが、諸事情によりスマホデビュー、それから3年、起動や操作がだいぶ遅くなったので、新しいのにしようかと。同じ会社で同じメーカーでしたので、まあとてもスムースにデータも電話番号(MNP)も移行完了。便利な世の中になりました。あ、でも逆にもう連絡とらなくてもいいやって人に新しい番号教えないことがMNPによってできなくなってしまいましたね。

以上、情報技術の進化の功罪。

 

さて、半村良さんの代表作といえば、世間的な知名度からもおそらく「戦国自衛隊」なのではないでしょうか。でもまだSFは読んだことがありません。現代小説と時代小説だけ。まあいつの日か。

 

短編集です。オムニバス形式となっております。初めて知ったのですが、柴田錬三郎にも同名の作品があります。でもどうやらストーリー的にも特に関係は無さそう。

煙管職人の勘次、またの名を(猫足の勘次)、昼間に住人のいるときに忍び込んでもバレないという名人芸の盗人。先日、ひとり暮らしの女の家に忍び込み、金を盗んだのですが、じつは、賽銭吉右衛門という大盗賊の右腕、夜がらす五兵衛の愛人の家だったのです・・・という「夜がらす五兵衛」。

吉原の前に張り込んでいる男。「七之助さん・・・」と、吉原から出てきた男を呼び止めます。「なんでえ、甚六じゃねえか」と知っている様子。張り込んでいた男は(じべたの甚六)といって、いくぶん精神遅滞の盗っ人で、もっとも、肝心の盗賊働きでは失敗ばかりですが盗っ人仲間からは可愛がられ、仲間の顔を覚えることだけは長けていて、稼ぎといえば、吉原の前に座り込み、仲間を見つけると銭をせびる・・・という「じべたの甚六」。

悪どいと評判の勘定奉行の土蔵に(いつ、桔梗屋四郎兵衛が土蔵破りをしてくれるか・・・)と江戸の盗賊仲間はひそかに期待しています。ですがこのころ、権蔵という、金に飢えたゴロツキをかき集めて商家に押し込み家族や奉公人を片っ端からなぶり殺して金を盗む(畜生ばたらき)が江戸で犯行を重ねていて・・・という「桔梗屋四郎兵衛」。

(間男七之助)という二つ名の盗賊、七之助が道で人足どもに襲われそうになっていた女性を助けます。その女性は「扇屋をやっております、りくと申します」と自己紹介。すると七之助、「扇屋おりくさんといえば、あの・・・」と知っている様子。そう、江戸の盗賊界の大物中の大物、白鳶の徳兵衛の娘なのです・・・という「扇屋おりく」。

新川の久助という遊び人風の男が、ある女から仕入れた情報をどこかの盗賊に売ろうとしています。その盗賊の名は夜がらす五兵衛、かの賽銭吉右衛門の右腕という人。五兵衛はこの話をお頭の吉右衛門に伝えますが、五兵衛が「玄人の腕の見せ所」「世間にあっと言わせましょう」などと見栄を張りたい様子。これに吉右衛門は反対し、だったらお前が仕切ってやってみればいいと・・・という「賽銭吉右衛門」。

初音の文蔵という盗賊一味の中にいる若手の三次は、まだ一人前になっていないのに女と所帯を持ちたいと言い出し、儀助という老人が間に入り、(犬走りの長吉)という盗賊に三次を預けることに・・・という「犬走りの長吉」。

行商人の対立、縄張り争いなどをうまく差配する世話人藤三郎の住まいにある男が訪ねてきます。男の名は(先達の貫太)。藤三郎は勘太にあるお願いがあって呼んだのですが、そのお願いとは、火付盗賊改め方の屋敷を調べることで・・・という「先達貫太」。

おりょうという料理屋の女将が、お気に入りの飲み屋で(なおし)を注文します。(なおし)とは(本直し)ともいい、焼酎に味醂を加えた安酒で、おりょうが(富さん)と呼ぶあるじの飲み屋に、腹から血を流した男が転がり込んできます。「乙吉じゃないか」とおりょう。富さんはおりょうを帰らせます。翌日、岡っ引きがおりょうの店にやって来て「乙吉はどこにいる」と・・・という「なおし屋富蔵」。

権爺と呼ばれる百姓の家に、(神楽の芝蔵)という盗賊の手下がやって来て「沖の六兵衛が戻ってきた」と告げると権爺は「えっ・・・」と急に鋭い顔に。大事な用ということで、権爺は芝蔵のもとに。すると「六兵衛さんは白鳶の徳兵衛さんにかくまわれている」と言います。そもそも大事な用とは、最近、あちこちで起きている火事騒ぎのことで・・・という「沖の六兵衛」。

 

この作品に出てくる盗賊たちは、基本的には本格的な盗賊で、「鬼平犯科帳」でいうところの殺さない・女性を襲わない・盗まれて難儀するところからは盗まない、という(盗賊の三ヶ条)を守っていています。というか(人のものを盗まない)ってのを守れよという話ではありますが、そういえば、現代の刑務所の中でも子どもに対する犯罪はもっとも下に見られる、みたいなのがあるらしいですね。

 


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