晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

アーサー・ヘイリー 『マネーチェンジャーズ』

2012-01-09 | 海外作家 ハ
アーサー・ヘイリーの作品はジャンル的には「経済小説」に属する
のでしょうか、全部読んだわけではありませんが、企業内での出世
物語もあり、業界の内幕もありで、それでも堅苦しさはあまり無く、
自身を小説家、作家ではなく「ストーリーテラー」と称してるあたり、
なんとなくジェフリー・アーチャーのエンターテインメントぽくも
感じられます(翻訳者が永井淳さん、ということもありますが)。

アメリカの中西部にある大手銀行、ファースト・マーカンタイル・アメ
リカン(FMA)の創業者一族の頭取、ロッセリが、自分の死期が近い
ことを取締役会議で発言、そこでは後継者つまり次期頭取の指名はあり
ませんでした。

通常どうり、取締役会での投票で次期頭取が決まるという運びに
なるということで、副頭取の2人、アレックスとロスコーのどちら
かに期待が集まり、策士のロスコーはさっそく票集めの作業にとり
かかりますが、アレックスは、正当に評価されれば頭取に任命して
いただければ幸い、といったスタンス。

そしてロッセリが息を引き取り、次期頭取を決める会議で、アレックス
とロスコーは演説をしますが話し合いで決着がつかず、暫定的に、
副会長のパタートンが頭取に就任することに。

アレックスは、市内の貧困地域の再開発や支店の充実といった公共性
を主軸に、これは創業者であるロッセリ一族の信条でもあり、それを
守っていくことを主張、いっぽうロスコーはFMAを田舎のトップから
全米屈指の、バンカメリカ、チェースマンハッタン、モルガン、シティ
といった大手と肩を並べる銀行にすべく、悪評の耐えない巨大コングロ
マリット企業と提携をすべく奔走しますが・・・

物語はロスコーとアレックスの2人どちらが頭取になるかのレースを
中心に描かれていますが、それぞれのプライベートな部分もあり、
アレックスは心の病で入院している妻がいて、仕事にかまけて家庭を
顧みなかったことを悔やみます。そんなアレックスには弁護士の恋人
マーゴットがいますが、マーゴットは離婚を迫ったりはしません。
ロスコーの家庭はというと、こちらは仮面夫婦状態で、しかも妻は夫の
稼ぎ以上の暮し向きをして(ボストンの上流家庭出身)、家計は火の車
ということもあり、ロスコーは何が何でも頭取に就任したいと焦ります。

そこに、FMAのお膝元の支店で6000ドルが消えるといった事件が
起こり、女性支店長と本社の保安部長が犯人を探しますが・・・

本社でのゴタゴタと同時進行で、この支店の現金紛失騒ぎがあとあとに
なって絡んできて、偽造カードの組織と対決したり、話があっちこっち
に飛びますが、それらがうまい具合に重なっていて、最終的にまとめあ
げられているあたりは、さすが。

日本の某カメラ会社が巨額の粉飾決算をして、それを告発しようとした
外国人社長が解任させられ、その元社長が先日、再就任を断念したという
ニュースがありました。その理由は、取引先銀行との関係がうまくゆかな
いからだ、と述べていて、つまりその取引先銀行は、そんな内部告発を
するような「危なっかしい」人をトップにするのは考えもの、ということ
らしいです。まあその銀行の名前は敢えて書きませんが(○井○友銀行)、
その銀行の役員、いや行員すべてにこの本を読んでほしいです。

コメント
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