晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ニック・ホーンビィ 『ぼくのプレミア・ライフ』

2012-01-31 | 海外作家 ハ
この作品の原題は「Fever Pitch」つまり直訳すれば「熱狂」とか
そういう意味なのですが、イギリス在住の作者が、ロンドンにある
フットボール(イギリスではサッカーと呼ばない)チーム、かつて
元日本代表の稲本も所属したことのあるアーセナルを中心に、世相
も交えて描いた、スポーツライターでもない「いちファン」のエッセ
イ的な作品です。
そういえば、メジャーのボストン・レッドソックスの熱狂的ファンの
男、その恋人の女性(ドリュ-・バリモア)のラブコメ映画も原題は
同じでしたね。

アーセナルといえば、現在ではイングランドのプレミアリーグ(1部)
では、つねに優勝争いにからみ、"Big 4"だか"Top 4"の中の1チーム
(他は、マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、チェルシー)
に入るくらいの強豪ですが、この作者が少年時代に父親に連れられて
観に行って、ニック少年を虜にした1960年代後半当時のアーセナル
は、絶不調のど真ん中で、退屈なつまらないフットボールしかしない
ようなチームでした。

クラスメイトにアーセナルのファンはほとんどいなく、逆にファンを
標榜した日にはからかわれる始末。しかしニック少年は、チームの
スタイルであったり、シンプルに強いから好き、といった具合で夢中に
なったわけではなく、ホームのハイベリー(現在はエミレーツ・スタジ
アムに移転)の雰囲気込みで好きになったのです。

それから少年も成長し、一時期はスタジアムに足を運ぶことが無くなった
りもして、大学生活でロンドンを離れなくてはならなくなったり、しかし
カップ戦の決勝ともなれば、ロンドンにあるフットボールの聖地ウェンブ
リーまで出かける、どこか、好きとか嫌いとかいうレベルを超えた、家族
のような間柄といいますか、そういうスタンスで彼とクラブは結ばれて
いるように思えます。


作品では1968年から1991年まで描かれて、その間に起きた「ヘイ
ゼルの悲劇」と呼ばれる、1985年にベルギーで行われた欧州チャンピオン
ズカップ決勝リバプール対ユベントスで、死者39人、負傷者500人以上
を出した事故や、1989年のFAカップで死者95人という事故「ヒルズ
ボロの悲劇」も登場し、前から問題視されていたフーリガンや、サッチャー
政権当時の国内情勢などに言及しています。

この続編にあたるエッセイが出ているのか分かりませんが、ベンゲル監督が
就任してから、「1-0の退屈なアーセナル(せいぜい勝ててもこのスコア)」
とバカにされていたチームが、それまでの守備重視から、中盤から前にかけて
豪華な布陣となり攻撃的なチームへと変わり、2回のダブル(リーグとFAカップ
の両方に優勝)を達成、2003~04シーズンのリーグ戦無敗、2005年に
チャンピオンズリーグ決勝に進出したことなど、どういう気持ちで観ていた
のか、気になるところです。「今のガナーズ(アーセナルの愛称)は俺の好きな
ガナーズじゃない」とふてくされていたりして。


コメント
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