晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『赤絵の桜』

2012-01-23 | 日本人作家 や
もともと時代小説はそんなに好んで読んでたわけではありませんが、
気が付いたら(もう歳なんですかね)書棚に増えてきました。
山本一力の作品は、主な舞台が江戸の深川、たまに深川の外にも出
ることはありますが、基本はその一帯。
戦国時代でもありませんし、武家屋敷でもないので、登場人物は、
市井の人々、「殿!」みたいなオエライさんは出ません。
街のそこここが人情の染み渡ったような、とてもほっこりする話が
多く、とても重宝しております。

この『赤絵の桜』は、「損料屋喜八郎始末控え」のシリーズ2作目
で、登場人物の喜八郎は、損料屋という、現代でいえば生活用品の
レンタル業で、前職は同心でしたが、上司のミスを肩代わりして、
そのときにお世話になった札差(金融業)の先代米屋政八から後継ぎ
の後見人をお願いされ、さらに同心時代からお世話になっていた与力
の秋山からも密偵のような仕事を頼まれます。

シリーズ1作目では、札差という、江戸時代に興った金融業を中心に
描かれます。武家は、給金は基本的に石高(米)でもらうことになって
いて、その米を担保に金を貸すというシステムで、この武家と札差との
間にはたびたびトラブルもあり、棒引きしてほしい側はヤクザを雇い、
返して欲しい側も用心棒を雇うという状態。

こんな中で、政府は武家の借金を心配し、ついに「棄損令(きえんれい)」
が発布されます。つまり武家の借金の棒引き。これによって、それまで
江戸市中の経済の一役を担っていた、札差や両替商といった金持ちの
道楽、ようは「無駄遣い」が一斉に縮小します。

そんな、きゅうきゅうとした状態ですが、大川(隅田川)を越えた押上村
(スカイツリーがあるところですね)に、大規模な湯屋ができるという話
があって、その話に乗った札差の米屋は3千両を出すことに。

何かこれはおかしいと喜八郎、この取り引きの間に入った伊勢屋と青山家
を調べていくうちに・・・

また、喜八郎の手下の一人の親子の話、喜八郎と伊勢屋が騙される話、
そして、前作から登場していた深川の料亭「江戸屋」の女将、秀弥との
淡い恋の話など、短編で5話、どれも素晴らしい作品。

コメント
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