晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

有吉佐和子 『悪女について』

2010-03-29 | 日本人作家 あ
爆笑問題がやっている日曜午後のラジオ番組(関東ローカル?)
の中のコーナーで、有名人や有名な場所にまつわる人にインタビュ
ーをするのですが、その冒頭で、有吉佐和子の小説『悪女について』
では、27人の証言で謎の死を遂げた女性の人生を浮き彫りに云々・・・
というナレーションが入り、この小説になぞらえて証言してもらう
のですが、毎回時間が押して27人分の証言は聞けずに終わります。

まだ男女雇用均等法も無い昭和の中頃、女性実業家、富小路公子が
ビルから転落して死亡しているのが見つかります。
自殺か他殺か、その謎の死は彼女の人生とともに謎だらけで、週刊誌
やワイドショーなどではスキャンダラスな生涯を紹介します。

彼女の少女時代から、亡くなる寸前に言葉を交わした男、さらにふたり
の息子まで、生前に関わりのあった総勢27人のインタビューを通して
見えてきた富小路公子像とは一体・・・

まず、この名前は改名したもので、その改名にまつわる話も証言に
あります。そして、前述にもありますが、長男、次男とふたりの息子
がいます。が、この息子は一度目の結婚相手の男との間にできた
子供ではなく、ここら辺はよく読まないと混同してしまいます。
まあつまりそのくらい男性遍歴がお盛んだったということなのですが、
しかしこれは彼女の策略とも取れる証言もあり、じっさい、彼女に
ひどい目に合わされたという人が何人かいたりします。

そもそも出自からして、ただの八百屋の娘か、さる高貴な家柄の私生児
と、言うことがバラバラなのですが、学校を出て、ラーメン屋でレジ係
(これもある人の証言によれば彼女の経営する「レストラン」となる)
のアルバイトのかたわら、簿記学校に通い簿記1級を取得、宝石店で
働きながら、なんだかんだで大金をせしめます。

この「なんだかんだで大金を」という部分は、ここが富小路公子こと
鈴木君子という一介の女性が富豪にのし上がっていく重要な部分なので
詳しいことは書きませんが、ただ持ち前の美貌を武器に、ということ
です。ここもまた証言によると、いや彼女はさして美しくはない、と
あるのですから、他人の証言というものは分かりません。
しかし、単に女性を武器にしてリッチになったわけでもなく、時代の
先を読む嗅覚(不動産投資など)や、機を見て敏なところは、成功者
の資質とでもいいましょうか。

かなり頭の切れる、でも時には甘えて「放っておけない」男心を巧みに
くすぐり、金を散財するかと思えば、金の大切さを説くこともあり、彼女
の一生は、読む人によってはまったく違った印象をもたれることと思われ
ます。

そういえば、7、8年前に芸術座で『悪女について』の舞台がやってました
が、あとがきに、有吉佐和子は演劇評論家を志していたほどの芝居好きで、
舞台用の脚本も書いたことがあるそうです。
この作品は、映画やドラマといった映像よりも、舞台演劇でやったほうが
面白そうですね。
コメント
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