晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

レイ・ブラッドベリ 『火星年代記』

2010-03-10 | 海外作家 ハ
今までそんなにSF小説は読んでいないのですが、アーサー・C・
クラークの「2001年宇宙の旅」を読んで、おそらくこれがSF小説界
のなかで最高峰なのではないか、と思うくらいに、読み終わったあと
感動に打ち震えたものですが、ここにきて、あのときの感動に匹敵する
くらいの作品に出会ったのです。

レイ・ブラッドベリという作家の名前くらいは聞いたことがあり、また
他の小説などにもよく登場したりしているので、一応は有名なSF作家
という知識はあったのですが、『火星年代記』は1950年に出版された、
いわば古典SF。

短編なのですが、それぞれの話がどこかで間接的につながっていて、
ひとつの長編という構成になっていて、まず、1999年1月、ロケット
が飛び立つところから始まります。
そして1999年2月、火星に住む一組の夫婦がいて、その妻が奇妙な
夢に悩まされます。それは、目の青い、背の高い、髪の毛の黒い男が、
輝く金属製の物体に乗って空から下りて来る、というもの。
そして男は、太陽系第3惑星から来たと言うのです。それを聞いた夫は
妻がその夢に登場した男に惹かれていると思います。やがて、実際に
地球からロケットが火星に到着し、探検隊が火星に下り立つのです。
妻の夢の続きを聞いて、「緑の谷」に下りた金属の物体を探しに、夫は
銃を持ち、その探検隊を撃って・・・

その後、第2次、第3次探検隊とも、火星人に殺され、2001年、第4次
探検隊が火星に下りたときには、生きた火星人の姿は見えず、調査をし
たところ、人間の持ち込んだ水疱瘡で火星人はほぼ全滅したのです。

やがて地球では戦争が終わらず、火星に移住する者たちがどんどん増え、
火星は新しい入植地のようになります。
里心というか、郷愁というか、やがて地球で大きな出来事があり、
火星に住む地球人たちは地球に戻ります。
しかしそれでもしぶとく火星に残る何人かの地球人たちもいました。

とうとうゴーストタウン化してしまった都市が点在するだけの火星。そこに
2026年、夫婦と3人の子供の家族がロケットで火星に下り立ちます。
子供たちは無邪気に火星人を見たいといって探します。
しかし、親たちは、乗ってきたロケットを爆破させ、2度と地球には戻らない
決心を固めるのです。

そしてラスト、子供たちは、パパに火星人を見たいとせがみ、パパは
火星人を見せるのです。
この終わりの4行が、今まで読んだジャンルを問わず小説のなかで、最も
素晴らしい締めくくり方のひとつですね。とても美しい。

コメント
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