晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐藤多佳子 『一瞬の風になれ』

2010-03-01 | 日本人作家 さ
この小説は、2007年の本屋大賞を受賞し、おそらくその年に
買って読んだと記憶しているのですが、じつは「イチニツイテ」
「ヨウイ」「ドン」の3巻構成になっていて、最初の巻から数える
こと1年後に中巻を読み、そしてようやく今年に入って、3年越し
の下巻を購入。物語はおぼろげに覚えてはいたのですが、ちゃん
と楽しみたいと思い、はじめから読むことに。

サッカークラブに所属する中学生の新二。彼にはユース日本代表
候補にも選ばれるサッカーの才能の持ち主である兄がいます。
このまま続けていても兄に追いつけるはずもなく、両親の寵愛は
兄に向けられるまま。
新二は、サッカーの強豪私立校ではなく、地元の公立校に進学。
これには兄も両親も反対。
これは遅めの反抗期だと自分に言い聞かせる新二。

同じ高校に進学した幼なじみの連。彼は天性の運動神経の持ち主
ながら、面倒なことは嫌いで、無理やり中学2年の時出場させられ
た陸上大会で、2年生ながら全国大会の決勝に進出。

新二は、高校の陸上部のクラスメイトに声をかけられ、連と知り合い
ということで、ぜひ彼を陸上部に入れてほしいと頼まれます。
しかし連は、部活には入らないと言います。
そんなある体育の授業で、50メートル走をやることになります。
そこで、新二は連と走ることになり、連は「思い切り走れ」と新二に
言うのです。思い切り走るのですが、連の背中には追いつきません。
走り終えたところに、陸上部のクラスメイトが声をかけてきます。
じつは新二のタイムはその陸上部の男よりも早かったのです。
新二は連のところへ行き、いっしょに陸上部に入れと言います。

そこから、陸上部に入部した新二と連、そして同じ1年との交流
や、先輩と顧問の先生の指導、ライバル校の選手との争い、そして
高校生といえば恋愛事情など、とても爽快感ある描き方。

やがて2年、3年と進学し、新二は着実にタイムを伸ばします。
それでも連には及ばず、さらに同じ神奈川県には鷲谷高校という
全国レベルの強豪校があり、新二や連と同じ短距離の仙波や高梨
とも競い合わなければならず、しかし新二はさまざまな困難や
挫折を乗り越えて、より強く、より速くなってゆくのです。

10代の時期に、何かひとつのものに夢中になって打ち込まな
かった人でも、この年代のなんともいえない甘酸っぱさや青臭さ
みたいなものを振り返ることができます。

「若者の行動や主張はたいてい間違っている。でも行動や主張しないこと
はもっと間違っている」という言葉を思い出しました。

コメント
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