晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

坂東眞砂子 『蟲(むし)』

2009-06-14 | 日本人作家 は
以前、坂東眞砂子の「山姥(やまはは)」を読んで、これを
「やまんば」と読まないところが物語のキーなのだというこ
とがよく分かり、そして作品自体とても面白く、いつかまた
この作家のほかの作品を読んでみようと思っていて、この
『蟲(むし)』という、なぜ「虫」じゃいけないのか読む前から
たいへん興味をそそられるところです。

静岡県のある場所で宅地開発をする東京の業者の社員で
ある男が、現場である木の模様をした石の器を拾い、それ
を妻の土産にしようと持ち帰ります。
その石を居間に置いてからというもの、テレビやステレオの
調子が悪くなり、妊娠中の妻も変な夢を見たりします。その
夢とは、虫送りという地方の祭りで、亡くなった祖母が出て
きて「虫がでた」「虫を送れ」という奇妙な夢。
それから妻は虫が気になってしまい、夫が虫に憑かれてい
るのではと訝り、ついに夫の体から虫が這い出てくるところ
を見てしまい、ショックで倒れて流産してしまいます。

夫が虫にとり憑かれているなど信じてもらえそうもなく、自分
で調べてみると、夫が静岡で拾ってきた石に「常世蟲」という
字があり、それは大昔に今の静岡地方にあった「常世神」と
いう、虫を崇める信仰で・・・

人間の体から虫が這い出てきて、なんて聞くとさぞかしグロ
テスクなものを想像するでしょうけど、作品中ではそれほど
でもなく、どことなく神秘的に描いているのかなという印象を
持ちました。
日本の伝承や信仰にある畏怖を織り込んだ、日本の気候風
土に合ったウェットなホラー、といった感じでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする