晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ウォルター・モズリイ 『赤い罠』

2009-06-19 | 海外作家 マ
本作はイージー・ローリンズという黒人探偵が主人公のいわゆる
ハードボイルド小説シリーズで、舞台は1950年代のアメリカ、公民
権運動、ベトナム戦争の前のロサンゼルス。
『赤い罠』はシリーズ第2作で、第1作で主人公イージーは第2次
対戦で従軍し、故郷テキサスに戻るもそこは軍隊よりも人種差別
の激しい土地で、ロサンゼルスに移住、なんやかやで探偵稼業に
なってしまい、申告のできない大金を手にして、ちょっとした資産家
になる、といったところまでを描いています。

そして、資産家となったイージーは不動産を購入しますが、税務署
に目をつけられます。契約書などをごまかして脱税容疑を免れよう
と画策しているそんな折、イージーにFBIの男から連絡があり、ある
捜査に協力してくれれば脱税を見逃してくれるというのです。
その捜査とは、あるユダヤ人のコミュニスト活動の詳細。
イージーは引き受けざるをえず、なんとかして近づくことに成功します
が、イージーの近辺で殺人事件が連続して起こるのです。
警察はイージーを拘束しますがFBIが助けてくれて捜査を続行。しか
し、ユダヤ人の素性を知り仲良くなったイージーは、この捜査自体に
疑問を持つのですが・・・

とにかく、登場人物のキャラが濃い。イージーはもちろんのこと、アパ
ートの管理人、警察、FBIの男、イージーのテキサス時代の友人、
ロスのイージーの友人みんな。
そして、文中にこれでもかと出てくる人種差別表現。
FBIはコミュニスト活動をしているユダヤ人を逮捕しようとしますが、
この時代はいわゆる「赤狩り」旋風真っ只中で、自由の敵であるコミュ
ニストを徹底排除しようと政府は躍起になっていたのですが、しかし、
自由の恩恵は白人のみで、そもそもアメリカに住む有色人種、特に黒人
には自由も人権も無いも同然でした。

自由を与えてくれない白人主体の政府の手先となる黒人探偵。
主人公の視点から当時のアメリカ社会の歪みが描かれていて、それで
いて肉厚なストーリー設定。クリントン元大統領もこのシリーズの大ファン
だそうです。
コメント
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