晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

トマス・ハリス 『ハンニバル』

2009-06-25 | 海外作家 ハ
どうしても、アメリカのサスペンス系には、本作に出てくる
ハンニバル・レクター博士のような、頭脳や肉体が人並み
はずれて神がかっている人物が出てくるのですが、別に
等身大を求めるわけではありませんが、事件解決や物語
の終結にその神がかり的特長を利用してしまうと、肝心な
物語の筋立てが安易に見えてしまうというか、そりゃスー
パーマンなんだからなんでも解決だよね、という印象を抱く
のです。

前作「羊たちの沈黙」から数年経ったという設定で、物語は
レクター博士の助言で殺人鬼を見事捕まえたFBIのクラリス
・スターリングが、ある市場で麻薬取引を押さえようとする場
面からはじまります。

この作戦は失敗、クラリスは主犯格の女を銃殺してしまい、
しかもそれがテレビに撮られていて、世間からバッシングの
嵐。そんな中、数年前に刑務所から脱走し、現在も逃亡中の
レクター博士からスターリング宛てに手紙が届きます。

そして舞台は、イタリアのフィレンツェと移り、ある警官が
宮殿の司書としてブラジルからやってきたフェルという男を
レクターなのではと疑い、レクター捕獲に報奨金を出すアメ
リカの大富豪メイスンに連絡します。
このメイスンは過去にレクターによって顔の機能を失わされ、
現在も寝たきりで人工呼吸器が手放せない状態で、レクター
を生きたまま捕まえて同じ目に合わせようとあらゆる手を使
い探しているのです。

警官はあと一歩というところでレクターと思われるフェル捕獲に
失敗、逆に殺されてしまいます。そして、レクターはついにアメ
リカに戻ってきて・・・

作品中に、このハンニバル・レクターという人物の幼少時代が
描かれていて、彼がのちに「人食い」などと恐れられる狂気の
精神科医になってしまったのか、その素因のような物語があり
ます。そして、なぜレクターはスターリングになみなみならぬ興
味を持っているのか、ということも分かるのですが、これが文字
の羅列だけで説明してる(小説なのであたりまえ)とは思えない
ほどで、目をそむけたくなります。

怪物誕生の背景をつまびらかにすることで、純然たる悪魔では
ないと解釈させることが、レクター博士にどこかヒーロー的要素
を持たせるような気がしますね。
コメント
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