非国民通信

ノーモア・コイズミ

ウナギ殲滅作戦

2014-01-06 23:01:52 | 社会

 さて年が明けても新聞各社からは酷い記事が連発されており、福島の市民運動に陰謀論的な難癖を付ける東京新聞の特集記事などはまさに最低最悪といった感じなのですが、こっちの毎日の記事も大概です。こんなのが校閲を通っちゃう新聞社というのもどうなんだろうと首を傾げるほかありません。

 

ウナギバトル熱帯へ:稚魚激減 でも皆が待っているから(毎日新聞)

 昨年10月に東京都内のスーパーを訪れると、1匹1780円の鹿児島産ウナギのかば焼きの隣に、980円のかば焼きが並んでいた。鹿児島産より肉厚で、ラベルに<インドネシアの稚魚を育てました>とあった。インドネシアでウナギ? 興味がわいた。

(中略)

 事業は5年目で、地元で150人の雇用を生み出している。昨年は計70トンのかば焼きを日本に輸出し、大手スーパーで1匹1000円前後で販売。今年は150トン超を目指す。繊維原料や水産物の貿易に長年携わってきた千速さんは言う。「ウナギを誰も買えないような値段にしてしまったら、サプライヤー(供給者)として失格だ。(価格高騰で需要が減った)本マグロのようにしたくない」

(中略)

 だがその後、アンギラ種の稚魚は激減し、希少生物保護をうたうワシントン条約に基づく輸出規制が09年に始まる。日本や中国、台湾などで捕れるジャポニカ種も不漁が続き、環境省は昨年、絶滅危惧種に指定。いずれも乱獲が原因の一つとされる。稚魚の不漁によるかば焼きの値上がりで、12年の国内消費量は3・7万トンに落ちた。

(中略)

 丸紅の加工場でも技術指導をする中村さんは、フィリピンでの養殖を計画している。インドネシア政府は資源管理と地場産業育成のため、150グラム以下のウナギの輸出を禁じているが、フィリピンは稚魚が安いうえ、輸出禁止が15センチ以下と規制が緩い。15センチを超えるまで育てれば日本に移して養殖でき、消費者に安くて安心な商品を提供できるという。「スーパーで2000円のウナギを売ってても、普通の主婦が買えますか? 1000円以下にすれば、給料日とか誕生日とか、そういう時に買ってくれるじゃない」

(中略)

 ウナギの稚魚漁にわくプラブハンラトゥ一帯の村は半農半漁で、農業収入は1世帯月6000円程度だった。稚魚は昔から中国や台湾から来た人が買い取ってきたが、現在の価格は1キロ3万円弱と20年前の約150倍で、ウナギが村民の暮らしを支えていた。

 最近は村外からやって来る漁師が増え、大潮の漁期は1000人以上に膨らむ。禁じられている稚魚の密輸も絶えないという。「昔と比べ、捕れる量は変わった?」

 そう聞くと、漁師グループを束ねるサエプディンさんは、さらっと答えた。

 「20年前の半分くらいかな」

 

 ウナギ価格の高騰は広く知られるところですが、その高騰の原因は乱獲による稚魚の激減で十分な量のウナギが確保できなくなったことにあります。そこで丸紅(だけでもないのでしょうけれど)は「ウナギを誰も買えないような値段にしてしまったら、サプライヤー(供給者)として失格だ」などと言って今度はインドネシアで稚魚を捕ってくる、これを毎日新聞も「皆が待っているから」と背中を押すわけです。良いのでしょうか、それで。

 上記は色々と省略して引用しましたけれど、オチと言いますか最後の段落ではインドネシアでも既に価格の上昇だけではなく漁獲量の減少も語られています。従来のアンギラ種、ジャポニカ種のウナギを日本人は食べ尽くして絶滅の危機に追い込んできただけに止まらず、今度はインドネシアのウナギまで食べ尽くそうとしているかのようです。これでは日本が漁業資源の敵として世界中から睨まれても仕方ありませんね。

 恐ろしいことに、丸紅はインドネシアだけではなくフィリピンにも拠点を設けようとしている、その理由は「インドネシア政府は資源管理と地場産業育成のため、150グラム以下のウナギの輸出を禁じているが、フィリピンは稚魚が安いうえ、輸出禁止が15センチ以下と規制が緩い」ことにあるというのですから戦慄するほかありません。インドネシアでは最低でも150グラム以上に育つまでウナギが保護されるのに対し、フィリピンではより緩い基準で獲ることが許されてしまうわけで、フィリピンに拠点ができれば今以上に早い段階で稚魚が獲り尽くされてしまうこと必至です。

 丸紅や何一つ批判的なことの書けない毎日新聞的には、インドネシアのウナギが絶滅しても、また新しい乱獲先を見つけるだけの話ということになるのかも知れません。まぁ、それが日本的経営の発想なのかなとも思います。例えば従業員をどんどんリストラして非正規で置き換えて、この非正規社員もトウが立ったら若い人に入れ替えてと、そうやって人件費を抑え込んで会社の利益を確保するのが日本的経営と言えますが、結果として技術の蓄積が失われる、日本国内で働く人の購買力が下がって需要が落ち込むなどの弊害が顕著に出ているわけです。そこでやり方を改める代わりに新たな市場を国外に求め、外国人労働力を安く買い叩こうなどと企てるのもまた日本的経営、その発想が染みついているならばウナギに関しても似たようなものなのではないでしょうかね。従業員を育てず使い潰すのが当たり前の社会では資源に対する考え方も同様、刈り尽くしたら新たな狩猟場を探すだけの話です。そうして消費者に安価なサービスを提供できれば、まるで美談であるかのように好意的な取り上げ方をされる、と。

 

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コメント (7)
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