非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本とは対照的

2010-06-15 22:55:11 | ニュース

中国、格安賃金時代の終わり 工場ストライキ続出 それでも最大市場に魅力(産経新聞)

 中国国内の工場でストライキが相次ぎ、中国に生産拠点を移してきた外資系企業に衝撃を与えている。日系企業でもホンダやブラザー工業が一時生産停止に追い込まれた。中国では急速な経済成長を背景に沿海部を中心に人手不足が広がっており、賃金の改善を求める従業員の圧力は強まるばかりだ。ただ、外資系企業にとって中国はすでに世界最大の市場に成長しており、ありあまる格安の労働力に頼ったビジネスモデルの転換を迫られながらも、中国と向き合っていかねばらないのが実情だ。

(中略)

 経済発展に伴う貧富の格差への不満を解消しようと中国政府が08年1月に施行した労働契約法も、ストにつながる労働者の権利意識を後押ししている。法律は解雇権の制限や退職金支払い義務を強化する内容で、世界同時不況で運用があいまいになっていたが、「経済の急回復で徹底されはじめた」

(中略)

 ただ、相次ぐ工場の操業停止に戸惑いながらも、ホンダは「中国で生産する仕組みを変えることは考えていない」(広報)と言い切る。米国を追い抜いて自動車市場で世界一となった中国に完成車を輸出すれば、価格は関税などで跳ね上がる。賃金の引き上げが続いても、生産拠点を他国に移すことを検討する自動車メーカーが1社もないのはこのためだ。

 今はまだ中国の労働力は日本に比べて安上がりですけれど、その差は着々と縮まっていくのでしょう。経済産業省のアンケートによれば生産拠点を移転する理由の85%は「労働コスト」によるものとの結果が出ていますが、見出しにもあるように中国の「格安賃金時代の終わり」は目前に迫っています。じわじわと賃金が下がり続け、追い詰められても決してストライキに走ったりしなくなった日本の労働力の方が安上がりになる時代もまた、遠い未来のことではなさそうです。

 報道によると中国の労働契約法では「解雇権の制限」「退職金支払い義務」があるそうです。どれだけ法律が守られているかにもよりますが、下手をすれば日本よりも厳しいのではないでしょうか。日本だったら「正社員は解雇はできない」なんてのは完全なフィクションで解雇は事実上の黙認状態にありますし(私的に裁判に訴えでもしない限り抵抗できませんから)、ハローワークに求人を出すような会社は基本的に退職金など存在しないわけです。まだまだ中国には発展途上の部分が少なくないにせよ、中国の方が先に進んだ部分(日本の方が後退している部分)も珍しくなくなってくるでしょう。労働コストを考えるなら、これからは中国への進出よりも日本に回帰した方が有利なのかも知れません。

 それでも敢えて中国での生産にこだわる理由は、引用の三段落目で触れられています。国外で生産して製品を中国に輸出すれば関税がかかる、関税負担を避けるためには中国国内で生産することが求められるのだとか。要は中国が巨大な魅力ある市場だから、労働コストが高く付くようになっても産業(雇用)は中国国内に止まるというわけですね。例によって経済産業省のアンケートでも、生産拠点を移転する理由の第2位は「海外市場の将来性」でした。要は「労働コストが安い」という条件を満たせなくなっても、「市場に魅力がある」限り、産業(雇用)は流出することなく国内に止まるわけです。

 人口比からすれば日本の国内市場はアメリカ市場の半分くらいの規模はある、GDPからすれば中国市場と同程度の規模はあるはずなのですが、給与所得の漸減と格差拡大で国民の購買力は低下するばかり、脆弱な社会保障も相まって貯蓄性向が極めて強いなど、何とも絶望的な市場です。それにもかかわらず旧態依然とした製造業原理主義が幅を利かし、国内で需要増加の見込めないモノばかりが製造され続けているのですから、不況の継続も当然でしょう。政策的には法人税減税(企業の移転にはあまり関係がない)や、雇用関係の規制緩和(労働コストの削減)ばかりが打ち出されていますけれど、日本が市場として魅力的にならないことには、どれだけ犠牲を払ったところで徒労に終わるだけです。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする