非国民通信

ノーモア・コイズミ

下がってるけどね

2008-06-12 22:44:26 | ニュース

橋下知事「なぜ国家公務員の給料下がらぬ」(朝日新聞)

 「なぜ国家公務員の給料は下がらないのか」――。大阪府の橋下徹知事は8日、府選出の自民党国会議員への国家予算要望で府の財政難を訴えるとともに国批判を展開した。府は人件費カットなどで665億円を削減する改革案をまとめたが、地方への税財源移譲を進めない国へのいら立ちが背景にあるようだ。

 鳩山もそうですが、橋下も同じですね、ツッコミどころが多すぎてこっちが迷います。木の葉を隠すなら森の中、デマを隠すならデマの中、でしょうか。それともツッコミどころを大量に用意することで、的を絞らせない作戦でしょうか? まぁ引用は最小限に留めます。

 凶悪犯罪と同様、公務員給与もジグザグを描きながら変動するものです。その一部をを選り抜いて抽出すれば「減っていない」「増えている」と主張することも出来ますが、どちらも長期的に見る右肩下がりです。この点で橋下は「凶悪な少年犯罪が増加している」と語る手合いと同レベルの主張を展開しているわけです。とは言え数値的な裏付けのないデマであっても、その誤った理解が国民の間に行き渡っている限りは支持が得られるもの、若者叩きが大いに盛り上がったのと同様、橋下の公務員叩きも大いに好評を博しています。

 そもそも公務員の供与は歩合給ではないわけです。Japan as No.1と讃えられ、日本中が好況感に沸き返っていた時期にも公務員の給与が目立って増加したわけでもないように、その時々の財政事情に振り回されるものではありません。あくまで民間企業の平均に合わせて決められるのが公務員給与であって、民間企業が下がればそれを追いかけて下降する、民間企業が上がればそれを追いかけて上昇するのが公務員給与です。公務員にとってのインセンティブは(トヨタやキヤノンのように)国あるいは自治体が利殖に励み内部保留を増やすことや、労働者を絞り上げて組織の取り分を増やすことではないのですけれどねぇ……

 公務員と民間の給与比較は人事院のそれを例外として、通常は異なった条件下で行われます。公務員の給与は正規職員の一部を抽出して算出されるのに対し、民間企業の給与は派遣やアルバイト、パートタイマーなど全てを含めた上での平均が用いられるわけです。こうすると当然、公務員の取り分が多いかのように見せかけることが出来ますし、そう信じたい人は条件の違いに目を背けて盲信してきました。

 民間企業の給与平均は非正規雇用の増加によって引き下げられてきたわけですが、「官」の世界だって負けず劣らず民間委託が進み、適正な給与で働く代わりに不当な低賃金で働かされる「官製ワーキングプア」が着々と増加しています。この官製ワープア層を除外せずに平均を求めれば公務員の給与も十分に下がっているわけです。しかるに、その辺の実態から目を背け、頑なに自らの信念=偏見=誤解にしがみつくのが昨今の公務員叩きであり、その実態に目を向けず偏見に基づこうとする姿勢は人種差別すら思わせるものです。

 ともあれ国家公務員の給与が下がっていないという誤った前提に則り、そのことを悪いことであるかのように語っているわけです。じゃぁどうすればいいのでしょうか? もっと給与が下がるように努めればいいのでしょうか? 国も地方自治体も二重派遣や不当労働行為、残業代の不払いなどの不法行為を駆使して貧困層の育成に努めれば橋下のお気に召すのでしょうか? 聞くところによると、こうした労働環境を悪化させようとする橋下の努力を支持する人は85%に達したとか。

橋下知事を経団連会長がベタ褒め 再建案「感銘受ける」(朝日新聞)

 日本経団連の御手洗冨士夫会長は11日、大阪市内で記者会見し、今月初めに財政再建案を発表した大阪府の橋下徹知事について「大阪経済の活性化のために不退転の改革の姿勢だ。ポリシーが非常に明快で感銘を受ける」と高く評価した。「目先の収支改善にとらわれず、大阪府を発展的に解消して道州制を導入するという考えは経団連の政策にも合う。ぜひ成功させて、行政改革の典型例にしてほしい」と持ち上げた。

 もちろん、橋下を支持するのは府民、国民だけではありません。財界も諸手を挙げて絶賛しています。気にくわないアイツの労働環境をもっと劣悪なものにしてやろう、そうした方針において橋下と府民、国民と経団連の思惑は完全に一致してきたわけです。政界と有権者、財界と有権者、この三者がガッチリと手を組み、その意図が重なった結果として今があるのであり、それは今後も続いていくのでしょう。

 

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コメント (9)
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