非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本の風景

2008-06-03 23:07:34 | ニュース

インド料理店、辛すぎる職場 外国人コック蜂起(朝日新聞)

 インド料理店でコックとして働く南アジア出身者らが、劣悪な労働条件について労働組合に相談し、待遇改善を求める動きが相次いでいる。極端な低賃金だったり、逃走防止のためパスポートを取り上げられたりするケースが目立ち、未払い賃金の支払いを求める訴訟も起きている。

 神奈川県内の店で働いていたインド人男性(41)と同僚3人は、昨年7月、未払い賃金計約1298万円を求める訴訟を横浜地裁に起こした。

 ちょっと取り上げる時期が遅れましたが、毎週必ずインド料理店を利用している私としては気になるニュースでもあります。私が通っているインド料理店は北インドの味であったりパキスタン料理でもあったりするようなのですが、働いている人が北部の出身とは限りません。客席から隔たれた厨房の奥ではどんな陰惨な光景が繰り広げられているかと思うと、少なからず複雑な思いです。

 しかし何でしょうか、朝日新聞は時に変な見出しをつけてきますね。「つらすぎる」のか「からすぎる」のか分かりません。こちらのリンク先は特に傑作でした。こういうセンスは嫌いじゃありませんが、たぶんこれを書いた人は出世しないと思います。

 同ユニオンには4年ほど前から同様の相談が相次ぎ、20人近くになる。経営者も南アジア出身者が大半だ。

 日本に住む外国人を支援するNGO「APFS」とAPFS労組でも、5年間に約40件の相談があった。APFS労組が昨夏、団体交渉をしたネパール人経営者は「仕事を覚えられるのだから給料などなくてもよい」と発言したという。

 インド経済に詳しいBRICs経済研究所代表の門倉貴史さんは「インドではカースト差別が現存するし、南アジアの多くの国では労働法が十分整備されず、労働者の権利が保障されない。そうした慣行が日本に持ち込まれている面があると思う」と話す。

 ここでコメントしている門倉氏、見覚えのある名前だと思って本棚を見たら何冊か著書を読んだことのある人でした。まぁ概ねまともなことを書く人のはずですが、しかるにここでのコメントには異論もあります。門倉氏は今回の問題をカースト制度や南アジアの不十分な法整備、そこから来る慣行に原因を求めているようですが、それってインドの問題、南アジアの問題なのでしょうか?

 劣悪な労働条件―――過重労働や残業代の不払い、採用時の説明と明らかに異なる労働環境などは今の日本でも常態化している問題であり、決して南アジア出身者の間に限定される問題ではありません。そして逃走防止のためパスポートを取り上げるケースですが、言うまでもなく日本人経営者が外国人研修生を受け容れる場合の常套手段でもあります。カースト制度や南アジアの法制度とは無縁の人々が同様の行為を繰り返しているわけで、これをインド人や南アジア出身者の問題として考えるのは明らかに的を外している、そうではなく日本社会の問題としてこそ把握されるべきではないでしょうか?

 あるネパール人経営者は「仕事を覚えられるのだから給料などなくてもよい」と発言したそうですが、これがネパールにいた頃から備わっていた考え方なのか、それとも日本に来て身につけた考え方なのか、それを知りたいものです。ネパールではどう考えるのか知りませんが、日本ではそのような考え方は一般的、少なくとも経営側の視点としては広汎に見られます。法律上の義務として給与の支払いが求められるために、それが実行に移されることは少ないかも知れません。しかし考え方として「仕事を覚えられるのだから給料などなくてもよい」と確信している人は日本にこそ多いはずです。

 現に、「仕事を覚えられるのだから給料などなくてもよい」との理念を実行する機会があったとき、少なからぬ経営者がそうしているのではないでしょうか? とりわけ労働法が十分整備されず、労働者の権利が保障されない外国人労働者に対してはそうです。「研修生」の名目で輸入された人々が日本でどのような目に遭わされているかを考えてみましょう。「仕事を覚えられるのだから給料などなくてもよい」とする考え方は、日本の法律によって許容され、推進されてさえいるではありませんか。

 郷に入りては郷に従えと言いますが、なるほどこのニュースに登場するようなインド人経営者は、ものの見事に日本の慣行に馴染んでしまったようです。すなわち、外国人とりわけアジア出身者を安価な労働力として輸入し、食い物にする、技術を教えることを名目に不当な低賃金を正当化する、そうした日本の制度を、彼らは学んでしまったわけです。

 

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コメント (3)
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