非国民通信

ノーモア・コイズミ

給料が高くてもえぇじゃないか

2007-06-28 23:40:39 | ニュース

市バス運転手の3割、年収1000万超 神戸(神戸新聞)

 神戸市の市バス運転手のほぼ三割が、年収一千万円を超えていることが二十七日、分かった。採用の抑制などで年齢の高い職員の割合が増えているほか、長時間の時間外勤務などが要因という。民間のバス運転手と比べれば、平均年収が一・八倍となり、給与面での官民格差を裏付けた。

 公務員の厚遇への批判が強まる中、国の指示を受け、市が交通局などの高額年収者についてまとめた。

 まとめによると、バス運転手三百八十三人(平均四八・八歳)のうち、二〇〇六年度の年収が一千万円を超えたのは百十人(29%)に上った。最高は千二百九十万円だった。

 交通局は高額年収者が多い理由として、バス路線の一部民間委託で年齢の若い運転手を中心に配置転換が進み、年齢の高い職員が増加したことに加え、時間外手当が多いことを挙げている。

 例えば、欠勤した運転手に代わって、ダイヤ上の公休日に運転した場合、終日時間外勤務として扱われる。時間外手当の平均は四百六十三時間あり、年間に一千四十八時間分の手当を受けた運転手もいた。

 同局は「特殊勤務手当の見直しを実施しており、今後も時間外勤務の縮減に取り組みたい」としている。

 公務員が高給取りと言われるようになったのはいつ頃からでしょうか? 高度経済成長期やバブル期に高給を追い求める人が選んだのは公務員ではなく民間企業でした。公務員が儲からない職業と位置づけられていた時代も存在するはずなのですが、今やすっかり忘れられてしまったようです。

 別に今でも上場企業の役職者は概ね公務員よりも高給取りであるわけですが、その辺りは意識されることもなく、公務員ばかりが槍玉に上げられる傾向にあります。確かに勤労者所得の中央値が下がり続ける中で、労働条件を維持してきた公務員が相対的に高給になってしまったところはあるかもしれません。しかるに、そこで非難されるべきは労働条件を悪化させた側であるべきなのですが、なぜか労働条件を保っていることに非難囂々です。

 私の雇用契約書を見てみましたら、OA機器の操作は最大で連続1時間まで、連続1時間の作業をしたら最低10分の休止期間を設けることが義務づけられていました。そんな契約は全く守られていません。一方で模範的な社会保険庁では45分の連続作業の後は15分の休憩を挟む方針でやっていたそうで、その辺は政府も実は提示していたガイドラインに沿っていただけ、労働法制を遵守していただけのことなのですが、これにも非難囂々です。

 店員をやっていた頃の話ですが、当時一番の高給取りは派遣社員の某氏でした。毎月残業は50時間くらいだったでしょうか、膨大な残業時間があったわけですが、正社員には残業代がちゃんと払われていなかった一方(違法ですね)、派遣社員の某氏にだけは契約通りに残業代が支払われていました。その結果、派遣社員の某氏が店で一番の高給取りになることもあったわけです。

 今回のバス運転手の場合もそんなもの、なんと年間に1048時間もの時間外勤務になった運転手もいたそうですが、これほど膨大な時間外勤務に対して労働基準法に沿った手当てを支給すれば、高給取りになるのは当たり前ですね。それなのになぜか非難囂々、法を遵守しただけにもかかわらず、怨嗟の声が渦巻いています。ここは無法者の国なんでしょうかね?

 労働条件を維持してきたことが非難され、健康維持のために無理をさせなかったことが非難され、労働基準法を遵守したことが非難される、ふ~む、世も末です。これでは労働条件を次々と切り下げ、労働者を過労死するまで絞り上げ、労働基準法は完全に無視、そんな雇用主が増えるのも当然ですね。それが国民の望んだことなのですから。アイツをもっと働かせろ! アイツを休ませるな! アイツに手当なんか払うな! そんなことを言っている人がたくさんいる限りは仕方がありません。もうちょっと自分の権利のことでも考えて欲しいものなのですが・・・

 ちなみに他所のブログを覗いてみて感じたのですが、やっぱり運転手って軽蔑されているなぁ、と。運転手の給与は低いのが当然、そんな社会的合意があるのでしょうか。これが会社役員の給与の話だったら何の話題にもならなかったのでしょうけれど、運転手の給与の話となると途端に「貰いすぎだ!」という話になりがちです。とはいえ、なんで運転手の給与が低くなければならないのでしょう?

 たとえば3K仕事など、実に不思議なものです。きつい仕事、汚い仕事であれば、その分を埋め合わせるべく高給取りであってしかるべき所ですが、なぜか給料まで安かったりします。社会的に栄誉ある仕事、みんながやりたがるような仕事であれば逆に給与は安くても釣り合いはとれそうなものですが、これが給与まで高かったりするから不思議なものです。結局、職業に対する貴賤意識が根強いのでしょう、どれほど必要とされていても賤しい仕事と見なされたものは給与も低くあるべき、必要とされていなくとも貴いと見なされた仕事は給与も高いのが当然、そんな暗黙の了解があり、その貴賤の分類も全く不当な基準で為されているのが現状のようです。

 儲かる仕事にだけ高い給与を払い、儲からない仕事にはまともな給料を払わない、市場原理ならそういうものなのかもしれませんが、誰もが儲かる仕事に飛びついたら社会は成り立ちません。中には採算性は低いけど必要とされている仕事、公共性の高い仕事もあります。そもそも稼いでいないから給料を払わないというのなら、軍隊や消防、警察には給料なんて払えないでしょう? 営利目的の民間企業ならいざ知らず公的機関が雇っているのなら、採算性以外の基準を持つのは当たり前であり、職種は違えど人並みに働いている人に人並みの給与を出すのも当たり前です。バスの運転手の給料が低くあるべき理由なんてどこにもありませんね。

 

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コメント (12)
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