非国民通信

ノーモア・コイズミ

朝三暮四

2007-06-16 23:37:57 | ニュース

住民税増で問い合わせが殺到 対応に追われる市町村(共同通信)

 国・地方財政の三位一体改革による税源移譲で、6月から大半の世帯で住民税が引き上げられ、納税通知を受けた自営業者や高齢者らの問い合わせが市町村に殺到。担当窓口の電話回線を増やすなど対応に追われている。年金受給者で年収が約330万円の夫婦世帯の場合、住民税は6月から1回に納める額が5200円増え、定率減税廃止分の500円を含め1万1600円とほぼ倍増となる。

 私の場合はどうしても毎年収入が変動しますので、税金が増減してもそれがどれだけ税率の変更によるものなのか判断しにくいところもあるわけですが、今年の地方税は大幅増でしたね。去年はそこそこ稼いでいた(とは言え、例によって年収300万円には届かず)ようで、そこに増税が加わったために感覚としては倍増なんてレベルじゃねーぞ、と。

 あくまで国から地方への税源の移譲であって「所得税+住民税」の負担は基本的には変わらないと総務省は主張しますが、感覚的にはどうでしょうか? 定率減税の廃止もあって計算上でも国民の納税額は増えたわけですが、それはさておくにしても日頃から意識しないうちに天引きされている所得税減税に比べて後からまとめて請求される地方税の増税は目に付きやすいところもありそうです。その結果が問い合わせや抗議の殺到に繋がっているのかもしれません。

 ここで思い出されるのは、朝三暮四という故事です。

宋の国に狙公という人がいた。猿を可愛がって群れをなすほど養っていた。
サルの気持ちを理解することができ、猿も同様に主人の心をつかんでいた。
自分の家族の食べ物を減らしてまで、猿の食欲を充たしていた。
ところが急に貧しくなったので、猿に与える餌の茅(どんぐり)を減らすことにした。
猿たちが自分になつかなくなってしまうのではないかと心配したので、
まず猿たちを誑かして言った。
「お前たちにどんぐりをやるのに、朝は三つで暮は四つにする。足りるか」
すると猿たちは皆起ち上がって怒りだした。そこで狙公は急に言い変えて、、
「それじゃ、朝は四つで暮は三つにしよう。足りるか」と言うと、
猿たちは皆平伏して喜んだ。

 政府の施策はこの逆ですね、合計が同じでも目先のものを改善することによって相手を誑かそうとするのが朝三暮四ですが、今回の税源移譲はむしろ目に付きやすい方に負担増を行ってしまっているような気がします。いずれにせよ、どっちも合計が同じならば誤魔化しに過ぎませんし、定率減税が無くなった分だけ合計では増えているわけで、仮に目に付きやすい方の税金を引き下げたところで喜べるような状況ではありませんけれど。

 一応、時期的に地方税の方が後から請求されることもあって、その辺では朝三暮四の例に沿っていると言えなくもありません。とは言え変えたのは目先であって合計は変わらないのであれば、それがもたらしたのは単なる混乱とも考えられます。合計が同じというのなら、なぜ変える必要があったのかと、そんな疑問も成り立ちます。

 もしかしたら、税源移譲に伴う混乱によって定率減税の廃止から目をそらせようとしたのかもしれません。あるいは国から地方に税源を移譲することで、納税に対する負担感、不満も地方に移譲しようとしたのでしょうか。国は減税した、地方は増税した、そんな印象を与えたい、不満の矛先は地方の役所へと振り向かせたい、そんな思惑があるような気がします。

 

 ←何か感じていただけましたら是非

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