Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「沈黙の螺旋」と経済

2013-04-03 11:26:48 | Weblog
ノエル=ノイマンの『沈黙の螺旋理論』が改訂復刻された。民主的な言論と選挙が保証されている社会でも,しばしば世論は同質化する。その社会心理的メカニズムに迫った研究として,あまりにも有名だ(だから「いつか必ず読むべき本」認定のままという罠が・・・)。

今回改訂復刻版が出版されることの意義について,訳者の池田謙一・安野智子両先生が冒頭で議論されている。いうまでもなく,インターネットとソーシャルメディアの時代に沈黙の螺旋理論がどんな意味を持つのか,それは今後どう進化していくかが論点となる。

世論形成は,政治や選挙では当然のことだが,マーケティングや経営でもきわめて重要なテーマだ。もはや消費者を孤立した意思決定主体として扱うパラダイムは通用しない。マーケターにとって,社会心理学の名著に通じていることはますます必須になっている。

沈黙の螺旋理論[改訂復刻版]:
世論形成過程の社会心理学
E. ノエル=ノイマン
北大路書房

さて,以下はぼくの妄想だが・・・世論形成の問題は,経済学にとっても重要になっている。いわゆるアベノミクスを歓迎する世論の形成は,沈黙の螺旋理論で一部説明できるのではないか。もちろん,実際に株高や円安が進んでいることも無視できない要素である。

これは一種の自己実現的な予想といえる。一方,実体経済の裏づけのない「期待」はバブルであり,いつかは弾けるという見方もある。マクロ経済と世論の相互作用はつねに相互強化的であるとは限らない。マーケティングにおいても期待と実体の乖離は重要である。

ところで,社会心理学の古典の復刻という点では,ぜひカッツ,ラザースフェルドの『パーソナル・インフルエンス』あたりも期待したいところ。

ご恵投いただいた訳者の先生に感謝いたします。

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