Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

『統計学が最強の学問である』の強さ

2013-04-05 15:20:13 | Weblog
統計学書としては驚異の12万部以上売れているという『統計学が最強の学問である』を読んでみた。内容は多岐にわたり,最新の話題を含み,かつ読みやすく,面白い。これは売れるはずだと思いつつ,それにしても10万部を超す売上になるのはなぜだろう,と考えてみた。

統計学が最強の学問である
西内啓
ダイヤモンド社

その前に,ざっと本書の内容を紹介しておこう。疫学を本来の専門としながら,マーケティングデータ分析のコンサルテーション経験も豊富な著者は,疫学やエビデンスベース医療の成果,そして企業の「ビッグデータ狂想曲」について取り上げるところから始める。

そして,単なる集計ではわからない因果関係を探るために,最初にランダム化比較実験を紹介する。次いでランダム化が不可能な疫学研究での層別分析,そして回帰分析へと話を進めていく。通常の統計学の教科書とはかなり違うが,ストーリーとしてなかなか説得力がある。

回帰分析については「平均への回帰」の話から入り,いきなり一般化線型モデルを取り上げ,その一部として平均値の差の検定(t検定),分散分析,カイ二乗検定,重回帰分析,ロジスティック回帰分析を紹介する。そして,傾向スコアを取り上げるあたりも抜かりがない。

最後には,心理統計学(因子分析),データ/テキストマイニング,計量経済学,ベイズ統計学などが紹介される。疫学の立場からの「違和感」(といっても否定しているわけではない)に触れている点も興味深い。30歳を超したばかりの著者の博覧強記ぶりには驚くしかない。

さて,なぜこの統計学本は売れたのか。理由として第1に,統計学の入門書で定番的な話題の順序を無視した独自のストーリー,第2にフィッシャーやゴルトンといった登場人物のエピソードの面白さ,そして第3に著者自身の現場での経験が語られていること,などが考えられる。

ただ,そうした理由だけで12万部を超す売上が説明できるかというと,いささか心許ない。本書を読んで学んだことを生かし,何らかの実験や統計解析で原因を探りたいところだが,いい方法が思いつかない。ぼく自身にはまだ統計リテラシーが身についていないらしい。

1つ思いついた仮説は,タイトルの『統計学が最強の学問である』の〈が〉が効いたのではないかということだ。であれば『統計学〈は〉最強の学問である』とのランダム化比較実験をすればいいのではないか・・・聡明な著者のことだ,そうしたA/Bテストを実行済みであろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。