Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

JIMS部会「インフルエンサー」祭り

2017-10-10 17:38:53 | Weblog
先週末の JIMS「マーケティングの計算社会科学」部会では、インフルエンサーに関する2つの研究が発表された。それを紹介する前に、インフルエンサーということばがいつ頃から流行り始めたかを確認しておこう。"influencer" および "opinion leader" ということばが検索された頻度の推移をGoogle Trends で調べると、以下の図のようになる。


*最高の水準が100となるよう基準化されている

これを見ると、influencer ということばは2015〜16年あたりに急に関心を集め始めたことがわかる。一方、opinion leader ということばへの関心は徐々に低下している。次の図は、以前流行っていた buzz marketing や viral marketing への関心が低下し、それに代わって influencer marketing への関心が急速に高まっていることを示している。



こうした変化はマーケティングの実態面での変化を反映しているのか、単なるバズワードの変化なのか、いろいろ議論がありそうである。オピニオンリーダーという概念は1940年代に誕生し、その後もイノベーターやマーケットメイブンといった関連する概念が次々生まれてきた。それらの関係を調べることも、疑問への1つの解答になるだろう。

最初に報告された名古屋商科大学の山田昌孝先生の研究は、インフルエンサーからイノベータあるいは高感度人間まで、これまで提案されてきた(またご自身の開発された)さまざまな項目を用いて、オーガニック・インフルエンサー尺度を構成することを提案する。そして、それと楽天が付与しているレビュアー格付けとの関係を分析する。

楽天の格付けがインフルエンサーとしての「実態」を表し、それを上述の尺度が再現(予測)できるなら、当該尺度の有効性・実用性が示される。実際に分析してみると、レビュアーの格付け上位層の間については予測精度が高い。他方、新製品の採用を予測するなら、インフルエンサー尺度よりもイノベーター尺度だけを用いたほうがよい。

ソーシャルメディア上で観測される行動データの分析が主流になりつつあるなか、自己申告された尺度に基づきインフルエンサーを分析するのは一見オールドファッションに思える。しかし、行動データでは見えないインフルエンサーの顔がさまざまな質問項目への回答から読み取れる。その意味で、こうしたアプローチは大変価値があると思う。

2番めは私と阿部誠先生(東京大学)、新保直樹さん(リブセンス)との共同研究で、インフルエンサーマーケティングのターゲット選択(いわゆるシーディング)を扱っている。だいぶ前から進めてきた研究だが、現在はシーディングに費用がかかるときの収益性を分析している。先日ネットワーク生態学シンポジウムで発表した内容とほぼ同じだ。

われわれが分析した iPhone に関するツイートの連鎖に関する分析からは、インフルエンサーの影響度以上にフォロワーの被影響度に異質性(個人差)があることがわかったので、それをシーディングに反映させることが望まれる。ところが、フォロワー数の多いインフルエンサー(いわゆるハブ)を優先的にシードにしてもそう悪い結果にならない。

シーディング費用がフォロワー数に比例して大きくなる場合でも(フォロワーの多いユーチューバーやインスタグラマーほど関係構築に費用がかかるという設定)、それが一定の範囲にとどまるならハブをシーディングするのは悪くない戦略になる(もちろん、労を厭わなければ、われわれが提案する準-最適化アルゴリズムがそれを上回る結果を出す)。

…という結果なのだが、もちろんケースによって結果が違ってくるだろうから、一般化は課題として残る。しかし、とりあえずは早く論文にしなくてはならない(…とこれまで何度語ってきたことか)。懇親会では久しぶりに味噌鐵カギロイを訪れた。かつてはランチの楽しみの1つであったホイル焼ハンバーグにも再会でき、総じてよき夜であった。
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