Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ネットワーク生態学@JAIST

2017-08-22 16:35:40 | Weblog
ネットワーク生態学シンポジウムに数年ぶりに参加した。今回で14回目を迎えるこのシンポジウム、これまで何回か参加し、発表したこともある。自分にとって記憶に残るのは3.11のときの蔵王でのシンポジウムだ。地震で雪山に取り残され、帰り着いたホテルも停電していたため、事態の全貌がわかったのは翌日になってからであった。

今回、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で開かれたシンポジウムでは阿部さん、新保さんとの共著「インフルエンサー・マーケティングの収益性分析」を発表した。諸先生からコメントをいただき、もっと多くのケースに適用して一般化していきたいと思うが、その時間も人手も(先立つ資金も)ない。とりあえず論文執筆を急ぎたい。

それはともかくチュートリアルが勉強になった。最初の講義は鬼頭朋美「産業ネットワークの複雑さを紐解く:企業の多様性と繋がりの非均質性」。社会の現実のディテールに真摯に向き合いつつ、ネットワーク分析の高度な技術も使いこなしていく鬼頭さんの研究にはいつもながら感服する。自分とは研究対象が違うがインスパイアされる。



2日目のチュートリアルは林幸雄「ネットワーク科学最前線2017 -インフルエンサーと機械学習からの接近-」。従来の中心性とは違うインフルエンサー識別の基準(Collective Influencer)やネットワークの頑健性をめぐる玉葱状構造の研究が紹介される。物理学や工学でのインフルエンサー研究の最先端を垣間見ることができた。

そうした研究におけるインフルエンサーとは、そのノードを攻撃(除去)するとネットワーク全体にどれだけ影響するか、という観点で評価されているようだ。それがマーケティングや世論研究などでいうインフルエンサーとどこまで同じなのかを考えさせられる。その背景にある、ネットワークの可視性や安定性に関する違いが気になる。



最後のチュートリアル、松林達史「非負値テンソル因子分解とデータ分析技術」は、タイトルだけ見ると敬遠したくなるが、実はマーケターにとって興味深い話だった。個人×製品×店舗×時間…のような多次元のビッグデータから効率的にセグメンテーションするのに使えると期待される。なお「因子分解」と「因子分析」は似て非なるもの。

一般発表では、取引ネットワークや選挙関係のツイート分析の研究もあったが、大半は通信工学や疫学など、いかにも理工系的な研究であった。個人的に面白かったのは、音楽の「引用」(カバーやサンプリング)の分析であった。なお、このシンポジウムを後援する数理社会学会のプレゼンスはなく、いまさらだが文理の溝は大きいと感じる。

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