Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ビジネスにおける複雑性会議@DC

2014-11-01 21:40:05 | Weblog
ワシントンDCで開かれた「ビジネスにおける複雑性会議」(Complexity in Business Coference)に参加した。今年で6回目とのこと。会場はDCの官庁街にあるビルで、入館するのにパスポートがいる。そこにメリーランド大学のパートタイムMBA課程の教室がある。



参加者は2,30人の小規模な会合だ。主宰するラスト教授に聞くと、6割程度がリピーター、4割が新規参加だという。ラ
スト教授も、事務局を担当するランド教授もマーケティング・サイエンスの人だが、発表は経営、経済の多様な話題に及び、発表者の専門も多様である。

少人数の会議だが2トラックに分かれており、半分しか聴講できない。自分が聴いたのは、イノベーション・マネジメント、経済学、マーケティング関連のセッションで、ソーシャルメディア系のセッションは自分の発表と同時刻だったので残念ながら聴くことができなかった。

このなかで個人的に面白かったのはイノベーション・マネジメントのセッションで、彼らの発表もさることながら、さまざまな興味深い先行研究があることを知って勉強になった。いずれも、エージェントベース・モデリング (Agent-Based Modeling, ABM) を用いている。

議論が盛り上がったのが、経済のセッションで数理系の発表者が、既存の経済学の均衡理論をきびしく攻撃したときだ。ラスト氏を含め、経済学がバックグラウンドだと思われる人々が猛然と反論していた。ABM に親和的といっても、他のエージェント系学会とは違った趣がある。

基調講演は、初日が semi-parametric Bayesian Gaussian Copula を使ってサーベイ調査のバイアスをなくす話、2日目が Zero-Inflated Poisson 等を使ったウェブ上のレビュー行動の分析で、マーケティング・サイエンスの研究として立派だが、複雑系の研究といえるのかどうか。

おそらく、この会議の主催者は複雑性(複雑系)なり ABM を、経営科学で正統的な方法を代替するというよりは、補完・併存するものとして捉えているのだろう。そうしたほうが、特に経営科学や経済学の領域で受け入れられやすいことは確かである。面白いかどうは別にして。

自分の発表もまたそういう空気を読んだものだ。Empirical Agent-Based Modeling for Customer Portfolio Management と題して、既存の数量モデルに ABM を接ぎ木したモデルを紹介した。ただ、マーケティング・サイエンスとしても複雑系としても中途半端になった感がある。

それはともかく、ABM の周辺に様々な研究があり、いままで参加したどのコミュニティとも違う世界があることを知ったのは大変よかった。WEHIA は WCSS や ESSA とは違うし、今回の会議はそのいずれとも違う。それらを渡り歩きながら、いつか満足のいく発表ができればと願う・・・

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