Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

Mktg. Science Conference@Vancouver 初日

2008-06-13 21:45:17 | Weblog
今回の Marketing Science Conference は Sheraton Vancouver Wall Center Hotel で開かれた(ホテルでの開催は珍しい)。数えてみると3日間で 166 セッションある。基本的に1セッションで3つないし4つの発表があるから,全部で 600 ほどの発表があることになる。いつも感じることだが,よくもまあ,マーケティングについてこれだけ研究するネタがあるもんだと思う。

初日聞いたなかで印象に残ったのは,まず Libai and Muller: The Value of Opinion Leaders in the Diffusion of Innovations だ。Watts and Dodds (2007) への批判という意味では,自分の研究に近い。しかし彼らの研究は,電子コミュニティで観測された実際の社会ネットワークを基礎に,エージェントベース・シミュレーションを実行している。

これは,In Honor of Professor Frank M. Bass というセッションでの発表の一つ。これ以外は,ハザードモデルがメインの発表が1件と,スプライン補間ないし関数回帰分析という全く理論モデルを仮定しない方法を使った国際比較の発表が2件あって,いわゆる Bass モデルを素直に継承しているものは一つもない。あとでこの分野の権威,山田先生に話すと,それは Bass の逝去がもたらした変化ではないかと指摘された。

Daria Silinskaia et al.: Modeling Cognitive Complexity to Predict Consideration Sets (発表のとき Complexity が Simplicity に変わっていた)もまた,個人的に興味を惹かれた。彼らは,disjunctive of conjunctive という考え方に立って,AND 型ルールが OR で結ばれている考慮集合形成のモデルを提案していた。ただし,話が細部に進むにつれ,わからなくなる。

Boehm, Romero and Downarowicz: Managing Customer Portofolios は,文字どおりポートフォリオ理論を応用すべく,顧客セグメントを収益の平均と標準偏差でプロットしていた。どうやって顧客のポートフォリオを変えるのかという問題はさておき,実際のデータに基づくその図が面白いのは,リターンとリスクが全般に比例関係にあるわけではない,という点だ。大多数のセグメントは,ローリスク,ハイリターンのゾーンに集中している。

発表者はこれを取り除いて(うまくいっているのだから,それでいいでしょ,ということか),残りのリスクとリターンが比例している部分でポートフォリオを考えている。それはそれでいいが,最初の切り捨てられた部分が気になる。当然,顧客セグメントを売買する市場などなきに等しいから,そうなるのかもしれない。また,セグメントは定義次第でいくらでも変わるから,この図がそもそもどこまで頑健かもわからない。逆にいうと,今後の発展の余地が大きい領域だといえる。

立食パーティの後,近所の日本料理屋で二次会。山田先生に加え,濱岡さん,山本さんは既に発表を終えている。ぼくは2日目の午後の発表だが,早朝に目が覚めてしまったので,時差への適応に失敗したことは明白。毎度のことながら,先が思いやられる。

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