Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

無印と伊印

2009-04-06 17:33:31 | Weblog
日本発のブランドで,優れたデザインで成功してきたといえる数少ない例が,無印良品だろう。Real Design 5月号は無印良品を特集,その愛用者であるクリエイター30人が,それぞれどのように無印を使っているかを紹介している。そして,このブランドを支えてきた,3人の有名なデザイナーがインタビューに答えている。

いろいろ小ネタもある。たとえば,MUJI UK でしか売っていないアイテムがあるという。無印は世界の主要都市に進出しているが,しっかり現地適応もしているわけだ。海外で売れたアイテムが輸入されることはないのだろうか。もう一つ,無印のレトルトカレーがおいしい,という噂が検証されている。種類もけっこう豊富である。

Real Design (リアル・デザイン) 2009年 05月号 [雑誌]

エイ出版社

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独自のシンプルなデザインをベースに,リーズナブルな価格でブランドを確立した無印に比べ,同じくデザインを重視しながら,そのテイストや価格において対極にあるのが「伊印」,つまりイタリアのラグジュアリーブランド群だろう。Esquire 5月号の表紙には,無印良品と一瞬見間違いそうなヘッドラインが書かれている。

Esquire (エスクァイア) 日本版 2009年 05月号 [雑誌]

エスクァイア マガジン ジャパン

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この特集で紹介される伊印ブランド,たとえば,エトロやボッテガ・ヴェネタにしろ,あるいはジョルジオアルマーニにしろ,濃厚かつ繊細な美しさで溢れている。ブルガリの時計にしても,1千万円を超すものは論外としても,数十万の時計なら買えるんじゃないか・・・と,このぼくですら誘惑されるそうになる美しいデザインだ。

無印については自分も愛顧しているぐらい身近な存在だが,伊印の多くは簡単に手が出せる代物ではない。しかし,伊印ブランドに比べれば断然歴史が浅い無印が成功したことは,日本企業だってやり方次第で,デザイン中心の戦略で成功できることを示したといえる。だから,一見対極にある伊印から,何か学ぶこともできるのだ。

ただし,伊印ブランドの強みの1つが,長い時間を通じて伝承されてきた職人的な技芸だとしたら,工場やお店をちょこっと見学したぐらいでは,たいしたことはわからないだろう。したがって,長くイタリアに住み,実際にイタリア人と仕事をしてきた人たちの証言を聴くことがとても重要だ。そこで,まさにこの本が参考になる。

イタリア式ブランドビジネスの育て方
小林 元
日経BP社

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著者の小林元氏は,東レが開発した合成皮革を,イタリアを拠点に「アルカンターラ」という国際的なブランドに育てた方で,MBF で講演を拝聴したこともある。さらには,フェラーリのカーデザイナーを経て,最近は山形で日本型カロッテェリアを目指すなど,幅広く活躍されている奥山清行氏の経験も参考になる。

フェラーリと鉄瓶―一本の線から生まれる「価値あるものづくり」
奥山 清行
PHP研究所

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もちろん,単なるイタリア特殊論や欧州ブランド礼賛を意図しているわけではない。無印と伊印がともに同じ地平に立つとみなしたうえで,美しいものづくりを目標にビジネスを推進するための方法論を考えたいのだ。さらにマーケターらしく,「顧客」をどう意識し,それをどうデザインに展開しているのかを探りたいと思う。

秘かに夢見るイタリア出張もまた,それになにがしか貢献するんじゃないかと・・・。
 

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