Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

美しい「ものづくり」へ

2007-08-07 13:34:41 | Weblog
奥山清行『フェラーリと鉄瓶』読了。著者はポルシェやフェラーリのカーデザインを手がけてきた,国際的に著名なデザイナー。この本の中心部分であり,最も興味深いのは,イタリアのカロッテェリア「ピニンファリーナ」での経験である。強力な自己主張を持ちながら最後はリーダーの指揮に従う,限られた時間ですさまじく効率的に働く,実力のある者に権限が集中する一方でリストラや成果主義とは無縁,といったカロッテェリアの組織風土の話はどれも新鮮だ。「日本型」「米国型」といったステレオタイプに収まらない経営スタイルがある。

フェラーリは特別,例外的という見方もあるだろう。グッチやフェラガモも特別だと。では,フィアットやオリベッティはどうなのか・・・。いうまでもなく「イタリア」自体が特別,ということもできるが,日本にもまた,世界で賞賛されるものづくり,デザイン,ブランディングを目指すに足る独自性があるではないか。たとえばトヨタや任天堂にそれを見出すこともできるかもしれない。奥山氏自身は,故郷の山形で優れた職人の技を組織して,日本型カロッテェリアの実験に取り組んでいる。夢に富んだ,エキサイティングな話だ。

自分についていえば,美しいもの,クリエイティブなものを作り出す組織のあり方,経営の仕組みを考えいきたいと思っている。だが,それ以前に,そもそも何が美しく,クリエイティブなのか,それは,どのように消費者に好まれるのか,といった問題に取り組みたいと思う。もっとも,美しいものは美しいから美しい,というしかない側面がある。それにしても,美しいという判断にどれぐらい個人差があるのか,単なる感覚なのか,訓練で向上する能力のようなものなのか。それが,結局は経営論にも反映してくると思う。

次いで『iPodは何を変えたのか?』を読み始める。クリエイティブ消費論を語るとき,iPod を無視して語れない。あるいは,一部の日本人まで巻き込みつつある iPhone への熱狂。それは,バンドワゴン効果だけで説明できない,という直観がある。つまり,消費者間相互作用の研究だけでは,ぼくの研究はやはり完結しないのだ。

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