Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ビジネス「書」の法則

2007-08-05 00:23:25 | Weblog
東谷暁『ビジネス法則の落とし穴』・・・パレート,ランチェスター,パーキンソン等々,ビジネス界で愛好されてきた数々の「法則」が生まれた背景など,この本に書かれた豆知識はそれなりに楽しめる。だが,その延長線上に「セグメンテーション」や「下流社会」が出てくると,おいおいといいたくなる。それって誰かが「法則」だと呼んでいるのだろうか?

著者は,ビジネスの「法則」は怪しいものが多く,よくても,適用範囲が限られることに注意すべきだと主張する。最も攻撃されるのが「ロングテールの法則」で,言い出しっぺのアンダーソンの主張が途中で変わったこと,ベキ分布自体は昔から知られていること,などが指摘されている。だが,そのこと自体「よく知られたこと」で,それだけ言い立てても実りはない。

ぼく自身はヘッドとテールのポートフォリオのあり方をCRM的視点で「解明」したいと思っている。そのことを直観的に理解している実務家はいるし,すでに実践があるからこそ実証的な分析が可能になる。しかし,そのことと,科学的知識として「すでに知られている」ということは同じではない。

一部のビジネス書が誤解・誇張している部分を攻撃するだけでは生産的でない。また,著者が「心配」するほど,人々がビジネス「法則」を盲信しているとは思えない。「敵」を巨大に見せ,攻撃するという戦術は,著者の攻撃対象がとっている戦術と本質的に同じで,ビジネス書の「法則」といってもよい。そして,この本がその「落とし穴」にはまっているのは,何とも皮肉である。

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1 コメント

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賛成 (ランチェスター疑問君)
2007-08-07 06:11:24
弱者の戦略?聞こえは良いが、経営者は生きていくため工夫するのは当たり前。

なにが弱者なのか?理念も何もない、只漠然と経営している経営者の強くなりたいという気持ちを、もてあそんでいるような気がしてなりません。

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