Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

Complex'09 @中大駿河台 1~2日目

2009-11-05 21:21:02 | Weblog
昨日から Complex'09 (the 9th Asia-Pacific Complex Systems Conference) が開かれている。昨夜はウェルカムパーティに顔を出し,ビールを数杯飲んだ状態で研究室に戻り,明日の発表の準備をする(酔っ払いはしなかったが,準備はあまり進まず・・・)。歩いて数分のところに会場があるのは便利。

今日の午前中は,感染症のエージェントシミュレーションの研究を聴く。クチコミとは違い,感染は当事者間の物理的接触を伴うので,二次元空間で移動する物体の衝突現象としてモデル化できる。さらにリアリティを追求すると,ダブリンの街をまんまモデル化するというような発想にいくのが面白い。

ただ,クチコミはそれとは違い,所与の社会ネットワーク上での情報伝播だといい切ることは,あまり根拠がない思い込みだという気もする。むしろ,過去に何の関係もない人間が,リアル/サーバースペースで偶然起こす「衝突」こそ,より強い消費者間相互作用を起こすということもあり得る。

午後はスタンフォード大学の経済学者 Matthew O. Jackson の講演を聴く。一流ジャーナルに掲載された,ゲーム理論を中心にした膨大な数の論文リストは目が眩むほどだ。ここ10年ぐらいは「ネットワーク」ということばを含む論文が非常に多く,その守備範囲は狭義の経済学を超え,社会学の領域まで及ぶ。

今日の講演では,"How Homophily affects Diffusion and Learning in Networks" が取り上げられた。エージェント間の homophily (同類性)が普及現象にどう影響するかが数理的に解析される。冒頭に紹介された米国の高校生の社会ネットワークは,人種に基づく同類性があまりに顕著で少し驚かされる。

彼の著書は,実は長らくぼくの本棚に飾られてきた。改めてページをめくると,ネットワーク理論の基礎から始まり,普及や情報伝播のモデルに進み,ゲーム理論への応用にいたる。情報工学者や物理学者が書いたネットワークの本とは違う臭いがある。マーケティング研究者にとって,この本でネットワークを勉強するのも手である。

Social and Economic Networks


Princeton Univ Pr


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そのあとも,情報伝播に関係する発表を中心に聴講した。現在塩漬けになっている消費者間情報伝播の研究を,早く再開したい思いにとらわれた。ただ,その前になすべきことがあまりに多い。