Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

大学ランキングの多元化

2009-08-17 12:35:44 | Weblog
大学のランキングといえば「偏差値」だが,それだけで受験生たちが大学を選択しているわけではない。早稲田,明治,法政を選ぶ学生と,慶応,立教,青学を選ぶ学生はかなりの程度異なっているはずだ。大学としても,生き残りのためには偏差値を上げるという垂直的差別化以上に,独自の個性をつくるという水平的差別化が重要になる。

この本はさまざまな指標を取り上げる。最初に紹介されるランキングは「事務職員力」。全国の大学の事務局長に相互評価してもらったものだが,トップは立命館大学で,ダントツに評価が高い。研究者の論文(被引用)数でも学生の就職状況でもなく,この指標を最初に持ってきた点が興味深い。確かにスタッフの力が最重要かもしれない。

大学ランキング2010 (週刊朝日進学MOOK)

朝日新聞出版

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学生の満足度については多くの項目が用意されているが,全体に国際基督教大学が図抜けている。他方,高校(進学校)の進学指導教員が学生に勧めるのは,東京大学(100%!)と東北大学(74.5%)が群を抜く。使用満足度以上に「所有」満足度があるということか。東北大が他の帝大を大きく引き離している点が注目される。

教員の研究成果を論文で評価するならば,全体に東大・京大の一人勝ちのように見える。しかし,被引用数を論文数で割った指数(論文の質を表す)で見ると,分野によってさまざまな大学が顔を出す(ただし,すべて理工系)。つまり,優秀な研究者は分散しており,そこを研究拠点に大学の多峰化を図る可能性が伺える。

文系にとっては,メディア発信度が重要な指標かもしれない。これは全国紙の書評に取り上げられる,全国紙の文化欄や総合雑誌に寄稿する,といった活動を数量化したもの。ランキングでは東大がダントツで,京大,慶応,早稲田と続く。明治大学は7位に入っているが,斉藤孝先生の個人的貢献が非常に大きそうである。

研究によって大学に貢献するには,国際的に一定レベル以上の論文誌に投稿・受理されるか,新聞の書評に取り上げられるような著書を書くしかない。現在のぼくは,前者の基準ではわずかな数字しかなく,後者の基準では完全にゼロである。死後評価されればいいのだ,と開き直るにしても,何か書いてなきゃそれもない。

ちなみに女性ファッション誌に学生が何人登場したかというランキングもある。明治大学は24位。上位は神戸女学院,青学,慶応,成城,立教,成蹊で,そこに負けるのは仕方ない。しかし法政,駒沢,早稲田の後塵を拝しているのはどうか。逆に「質実剛健」ぶりを訴求するという路線も考えられるが,どうかなあ・・・。