新型インフルエンザのため延期の可能性もあった日本商業学会@関西大学は,結局予定通り実施されるとのこと。しばらく準備を中断していたが,そうも行かなくなった。ただし,懇親会は中止されるという(「濃厚接触」が起きるということか?)。ふだん接点が少ない人々と話す機会だと思っていただけに少し残念だ。学会のプログラムを見ると,「商業」「流通」よりも一般的な「マーケティング」に関する発表のほうが多い。しかも,経営的な意味で興味を惹かれるテーマもある。
これまで,商業学会に対しては,概念論ばかりでデータに基づく実証がない,レトリックばかりでモデルがない,という印象を持っていた。しかし,いま思うのは,問題はそういうことではなくて,目を見張るような概念枠組みがあるかどうかだ。その意味では,別の学会でたまに見かける,概念的には特に新しさがないのに,テクニカルな面のみ凝りまくった研究も困ったものだ。データをごちゃごちゃに扱って概念を見失った研究しかり。だから,「文学的」でいいから,面白い話が聞きたい!
経営上いま最もホットな概念(コンセプト)は,Harvard Business Review にしばしば掲載される。その日本版,DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー6月号は,これまで紹介してきた競争戦略の「ツール」から27個を選び,編集部あるいは原著者が手短に解説している。最初は「ファイブ・フォース・モデル」,2番目が「リソース・ベースト・ビュー」,3番目が「ブルーオーシャン戦略」・・・ 27番目はマーケティングあるいは CRM の分野に属する「顧客『紹介』価値の測定」である。
最後のほうは,ほぼマーケティングよりの話題で終始する(ただし中程に,マーケティング戦略論と競争戦略論との線引きが難しい領域がある・・・)。具体的に列挙すると:
価格競争必勝法
カスタマー・エクイティ分析
マーケティング・マトリックス
サービスの体系的実験法
マルチ・ブランド評価法
「超」商品ライフサイクル戦略
営業とマーケティングの関係診断
サービス戦略マトリックス
「問題顧客」対処法
顧客「紹介」価値の測定
わずかに数式が出てきてマーケティング・サイエンスっぽいのが,ブラットバーグ,デイトン「カスタマー・エクイティ分析」とクマー,ピーターソン,レオーネ「顧客『紹介』価値の測定」だ。前者はリトルの決定算法(decision calculus)に基づき顧客獲得-維持のバランスを求める方法を,後者はクチコミという要素を加味した顧客生涯価値モデルを提案している。このへんが,実務家が実際に使える数量分析ツールとして,ぎりぎりのレベルなのだろう。学術論文は過剰にして過小な世界だ。
やはり理想は,適切な実証研究やモデル分析を隠し味にしつつ,目が覚めるような戦略コンセプトを打ち出すことにある。それはいうまでもなく,凡百の論文を書くよりはるかに難しいことだ。
これまで,商業学会に対しては,概念論ばかりでデータに基づく実証がない,レトリックばかりでモデルがない,という印象を持っていた。しかし,いま思うのは,問題はそういうことではなくて,目を見張るような概念枠組みがあるかどうかだ。その意味では,別の学会でたまに見かける,概念的には特に新しさがないのに,テクニカルな面のみ凝りまくった研究も困ったものだ。データをごちゃごちゃに扱って概念を見失った研究しかり。だから,「文学的」でいいから,面白い話が聞きたい!
経営上いま最もホットな概念(コンセプト)は,Harvard Business Review にしばしば掲載される。その日本版,DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー6月号は,これまで紹介してきた競争戦略の「ツール」から27個を選び,編集部あるいは原著者が手短に解説している。最初は「ファイブ・フォース・モデル」,2番目が「リソース・ベースト・ビュー」,3番目が「ブルーオーシャン戦略」・・・ 27番目はマーケティングあるいは CRM の分野に属する「顧客『紹介』価値の測定」である。
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最後のほうは,ほぼマーケティングよりの話題で終始する(ただし中程に,マーケティング戦略論と競争戦略論との線引きが難しい領域がある・・・)。具体的に列挙すると:
価格競争必勝法
カスタマー・エクイティ分析
マーケティング・マトリックス
サービスの体系的実験法
マルチ・ブランド評価法
「超」商品ライフサイクル戦略
営業とマーケティングの関係診断
サービス戦略マトリックス
「問題顧客」対処法
顧客「紹介」価値の測定
わずかに数式が出てきてマーケティング・サイエンスっぽいのが,ブラットバーグ,デイトン「カスタマー・エクイティ分析」とクマー,ピーターソン,レオーネ「顧客『紹介』価値の測定」だ。前者はリトルの決定算法(decision calculus)に基づき顧客獲得-維持のバランスを求める方法を,後者はクチコミという要素を加味した顧客生涯価値モデルを提案している。このへんが,実務家が実際に使える数量分析ツールとして,ぎりぎりのレベルなのだろう。学術論文は過剰にして過小な世界だ。
やはり理想は,適切な実証研究やモデル分析を隠し味にしつつ,目が覚めるような戦略コンセプトを打ち出すことにある。それはいうまでもなく,凡百の論文を書くよりはるかに難しいことだ。