goo blog サービス終了のお知らせ 

Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ポスドク1人に5百万円

2009-05-11 16:30:11 | Weblog
毎日新聞5/6の記事:

ポスドク:1人採用で5百万円…文科省が企業に「持参金」

記事本文に「09年度補正予算案に5億円を計上」とあるので,「最大でも」100人分まで支給できるってことか・・・。もちろん,単なるバラマキにならないよう,企業に採用計画やキャリア構想を出させて審査するという。しかし,もしぼくが当のポスドクなら,500万円という補助金が刺激になって自分を採用する気になった企業をどう思うだろう・・・。

その企業にもともと博士を採用したいという考えはあっったが,過去に実績もないし,ぎりぎりのところで逡巡していた。しかし,この500万円が最後の一押しとなって採用を決意した,というならまだいい。そうではなく,博士の採用など考えたことはなかったが,500万円は喉から手が出るほどほしい・・・ というのであればちょっと困惑する。

文科省としては,このカネを「持ち逃げ」されないよう,いろいろ工夫するだろう(どこまでできるか別にして)。企業側としては,しかるべき人件費を一定期間支払うわけだから,500万円がどこまでインセンティブになるのか,ぜひ人事の専門家に聞いてみたい。もちろん何もしないよりはよいので,この制度に反対しているわけではない。

コンサルタントの城繁幸氏はこのニュースを受けて

勉強しすぎるとマイナス評価される国

とブログで評している。これはいい得て妙だと思う。こうした事態の背景には,大学の硬直的な人事制度もあるが,根本には企業の年功序列制があると城氏は指摘する(なぜなら,企業が博士などの高い学位を持つ者を積極的に採用するようになれば,大学から企業への流出が増えて,大学の人事もまた流動化するはずだから)。そしてこのエントリを
それにしても、専攻にもよるが、博士と言うのは育成にそれなりの税金がかかっている。金かけておいて採用していただくのにまた金一封上乗せするなんて年功序列は まったくもってくだらないシステムだ
と結んでいる。確かに企業が新卒採用にこだわらなくなり,中高年の労働市場が確立されてくれば,大学でも人事の流動化が進む可能性がある。ただし,企業でも大学でも抵抗は大きいはずだ。そのことは,既得権益を享受しているぼく自身,よく理解できる。と同時に,そこに安住すると研究者としての進歩は終わる,ということも深く自覚している。