Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ガチンコ歓迎!党首討論から比較広告まで

2009-05-28 23:24:20 | Weblog
政治とクルマ,たまたまの取り合わせだが,ちょっとばかし欧米風のガチンコの喧嘩が起きている。大いに喧嘩してほしい。ただし,フェアに。

27日の麻生,鳩山両氏の党首討論。メディアは政策論争がないと批判しているが,両氏が感情的になっている姿を楽しく見ることができた。政治とは突き詰めれば喧嘩なのだから,人は「本能」に従い感情的になる。そこに,その人間の本質が垣間見える。いまのところ,両党とも党首討論の継続に前向きだ。毎回あっちが勝った,こっちが勝ったという議論が続けば,日本の政治は進化するのではないか。そしていずれ,感情をコントールしてディベートに勝とうとする,欧米型の政治家が主流になるだろう。

日本では政治だけでなく,企業もまたガチンコで喧嘩する時代になってきた。もちろん,政治も経済もいままで互いに抗争,競争してきたわけだが,公開の場でフェアに角を突き合わす光景は乏しかった。党首討論が珍しいのと同様,企業の比較広告もまたなきに等しかった。日本の消費者はそれを好まない,という説明をよく聞いたが,本当にそうだとわかっていたわけではない。しかし,状況は変わってきた。「あの」トヨタが比較キャンペーンを公然と始めたのだ。これは,大きなインパクトを秘めている。

業界騒然!ホンダ「インサイト」をコケにする トヨタ「プリウス」の容赦ない“比較戦略”

この記事では,新型プリウスの新車発表会で行なわれた,インサイトを揶揄する「寸劇」について紹介している。ただし,アップルがラーメンズを使ってウィンドウズをバカにした CM のように,一般の消費者の目に触れるところまではいっていない。トヨタのディーラーのなかはホンダのインサイトを買い上げ,プリウスと比較試乗させている企業もある。何て露骨な,と眉をひそめる消費者はそう多くないと思う。よくやった,トヨタ! ホンダも負けずに頑張れ! と思う消費者がほとんどではないだろうか。

これまでだって,ディーラーのレベルでは,お互いライバル車の批判を顧客に語っていたはずで,比較キャンペーンはそれをよりオープンにしたものとなる。その結果,お互いに根拠のないことはいいにくくなるはず。そうなれば,お互いにイノベーションの刺激になるだろうし,価格や機能とは別の次元で差別化する方向も出てくるだろう。党首討論を真似て,競争する各社の開発責任者がガチンコ討論会をするなんてだめだろうか? 市場では別に過半数を占める必要はないわけだから,政治ほどシビアにはならない。

ガチンコ討論会という意味で「学会」はどうか,という方向に話題を振りたくなったが,今日はやめておこう。