Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ネットワーク科学最先端

2007-05-21 21:22:41 | Weblog
増田直紀『私たちはどうつながっているのか』中公新書。すでに,今野紀雄氏と専門書と啓蒙書(ブルーバックス)を世に送り出してきた著者が,また新たな啓蒙書を著した。新しいと思えるのは,スモールワールドネットワークからスケールフリーネットワークへと,ただ順番に話を進めていくのでなく,両者を統合的に考えていること。古典的な(といってもここ10年以内の)モデルと違い,スモールワールドとスケールフリーの両方の性質を持つネットワークのモデル化が進んでいることがわかった。

「ランダムウォーク中心性」という,比較的最近出てきた概念も,初めて知ることができた。複雑ネットワークの研究は猛スピードで発展しているので,知っている人たちは知っているのだろうけど,周辺から自分の研究に使えそうなものはないかと覗き見している程度の人間には十分フォローできない。だから,このような最先端の研究を紹介してくれる啓蒙書は大変役に立つ。

この本の最終章では,ネットワークを理解させるための教育が取り上げられている。特にNY科学博物館のユニークな展示が興味深い。しばらくニューヨークに行く機会はないが,せめてお台場や初台あたりはたまには出かけないと・・・と少しだけ思う。