無くてもよい三大記念日は、クリスマスとバレンタインと父の日である。そもそも、父の日などは母の日のおまけというか、お情けで作られたようなもので、およそ盛り上がらない日である。クアトロでも母の日の予約は数日前から殺到していたのに、明日の父の日の予約は今のところゼロなのである。
クアトロ・シェフが仕入れから帰ってきた。
「とうちゃん、良いマグロ買ってきたぜ」
『おお、身を固めるとなると親の大切さが解るようになるのか。父の日のプレゼントなのだろうか。父の日も悪いものではない。早めにお礼を言っておいた方が良さそうだ』と0.2秒程で判断し、
「ありがとう」と返事をした。
お店が始まると、早速お馴染みのお客様が来店。
「今日は良いマグロ仕入れておきましたよ」とクアトロ・シェフ。
『何だよ、やっぱりな』
今日のマグロは、日本海境港天然生本鮪ですよ。メジマグロ、チュウボウマグロ・シブマグロと出世していく本マグロだが、初夏の近海もののチュウボウマグロは活気盛んな青年といったもので、とびきりに旨い。早速、赤身・中トロ・大トロ・ザブトン(皮のところの脂身)と仕分けされ、それぞれの部位を盛り合わせて¥1500でお出しする。クアトロでの父の日のプレゼントに最適ですよ。