Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

7月ブログを振り返って(No.1327)

2006-07-31 23:53:55 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 7月3日に開始した本ブログも、読者の皆様のおかげで 初の月末を迎えることができた。これもひとえに読者の皆様のおかげさまである。
--------
 客観的な気分になって、この7月の我がブログを読み返して見ると

  1. Piano Music Japan

  2. と言うよりも

  3. Schubert Piano Music Japan

  4. と呼称するブログか正しいか?

とも思える。 う~ん、シューベルト作曲の D784とD655 に熱が入っているのはいいとして、D946 の回に「狂ったか?」と思えるほど書いたのは、「シューベルト中毒患者」の私高本を如実に表していると思う。
 8月は「佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠る シューベルトピアノソロ曲全曲演奏会第2回」が8月13日に東京文化会館で演奏される。やはり「私高本のシューベルト中毒症状」は、直らないかも知れない。
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<楽曲解説>シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1326)

2006-07-30 22:55:02 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
本日は、循環ソナタ形式の各「主題の関連」について述べる。
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D784 の 全6主題の緊密な関連



 ピアノソナタ第14番イ短調D784 の 6つの主題の関連は以下の通りである。

第1楽章第2主題


  • 第61小節 → 第1主題第18小節 の 音型
  • 第62小節の 2番目~4番目 → 第1主題冒頭 2番目~4番目の音型
  • 再現部冒頭第219小節 → D784初の「3連符」 → 残り2楽章に大いに活用される


第2楽章第1主題


  • 第1小節 → 第1楽章第2主題第68小節音型 の変形
  • 第4小節1拍目裏~2拍目の最後まで → 第1楽章第1主題第6小節3拍目~第7小節 の変形


第2楽章第2主題


  • 第21小節2拍目からの「3連音」型 → 第1楽章第2主題再現部第219小節 の変形
  • 第21小節の上行音型 → 第1楽章第2主題第68小節 の変形
  • 第27小節の「4連打」音型(右手も左手オクターブも) → 第1楽章第2主題再現部第219小節 の変形


第3楽章第1主題


  • 第1小節3拍目右手アクセント + 第2小節3拍目右手アクセント & 第2小節2拍目左手アクセント + 第3小節2拍目左手アクセント → 第1楽章第1主題第18小節 = 第1楽章第2主題冒頭第61小節
  • 第11小節2拍目~第13小節1拍目の同音連打 → 第1楽章展開部第124小節からの8連打 の変形


第3楽章第2主題


  • 第51小節~第52小節冒頭1拍目 → 第2楽章第1主題第4小節 の音型の変形
  • 第52小節のソプラノ音型 → 第2楽章第2主題冒頭第21小節 の音型の変形


以上の通りである。
 「さすらい人幻想曲」ハ長調 D760 に比べても遜色ない、統一感があり、「循環ソナタ形式」の傑作だ!

 ・・・のハズが、なぜか評価が高まらなかった。この原因はいくつか考えられるが


  1. シューベルトが生前出版に売り込まなかった。ゆえに「自信作」とは考え難い。
  2. 全楽章を「ソナタ形式」としたモノの、少々「凝り過ぎ」の傾向があり、後世のスカな音楽学者には「ソナタ形式には読み取れない」まま150年以上が過ぎた
  3. 舞踏楽章(スケルツォ または メヌエット)が無く、楽章数が物足りない
  4. 「歌曲の主題による変奏曲」が 1822年~1824年の「循環ソナタ形式楽曲」の成果であるのに、D784 だけが「歌曲の主題による変奏曲」を有していない

などが有力。おそらく、「3」と「4」の複合要因のように私高本は感じる。
  • 他のこの時期の「循環ソナタ形式楽曲全て」が
  • 全4楽章であり
  • 「歌曲の主題による変奏曲」が緩徐楽章!

だからである。
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<楽曲解説>シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1325)

2006-07-29 21:31:42 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
本日は、循環ソナタ形式の「各楽章」と「主題」について述べる。
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全楽章が「ソナタ形式」の上、全6主題が統一された D784



 ピアノソナタ第14番イ短調D784 は
  • 第1楽章 → 通常のソナタ形式
  • 第2楽章 → 再現部が極端に縮小され、第1主題の冒頭のみ再現されるソナタ形式
  • 第3楽章 → 呈示部の繰り返しで「第2主題」が異なる調性で2回呈示されるソナタ形式


で作曲されている。


  1. 第1楽章呈示部第1主題 = 第1~第60小節(イ短調)
  2. 第1楽章呈示部第2主題 = 第61~第103小節(ホ長調)
  3. 第2楽章呈示部第1主題 = 第1~第20小節(ヘ長調)
  4. 第2楽章呈示部第2主題 = 第21~第30小節(変ニ長調)
  5. 第3楽章呈示部第1主題繰り返し前 = 第1~第50小節(イ短調)
  6. 第3楽章呈示部第2主題繰り返し前 = 第51~第79小節(ヘ長調)


となる。全曲構成については

  • 第1楽章呈示部 = 第1~第103小節
  • 第1楽章展開部 = 第104~第165小節
  • 第1楽章再現部 = 第166~第259小節
  • 第1楽章コーダ = 第260~第291小節
  • 第2楽章呈示部 = 第1~第30小節
  • 第2楽章展開部 = 第31~第61小節
  • 第2楽章再現部 = 第62~第66小節(第1主題冒頭のみ)
  • 第3楽章呈示部1回目 = 第1~第79小節
  • 第3楽章呈示部2回目 = 第80~第159小節
  • 第3楽章展開部 = 第160~第198小節
  • 第3楽章再現部 = 第199~第259小節
  • 第3楽章コーダ = 第260~第269小節


以上である。
 各楽章主題の関連等は明日号にて。
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<楽曲解説>シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1324)

2006-07-28 22:35:02 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 今日は、ピアノソナタ第14番イ短調D784 の第1楽章第1主題について述べる。
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循環ソナタ形式を支配する 素晴らしい D784 第1楽章第1主題



 シューベルトの音楽は、誤解されているかも知れない。 素晴らしい歌曲のおかげで「旋律性」にあまりに偏り、解釈されているような気がする。 「誤解されている曲 = 器楽曲全般」について、である。

1.「主題」は、ハイドンやモーツァルトに比べるに及ばず、ベートーヴェンさえも超す「息の長さ」が【命】であるにも関わらず
2.「ハイドン」程度の「ブツ切り主題」と解釈され
3.音楽全体が「台無し」になることが多い

が原因。

 D784 第1楽章第1主題呈示は、(まともなピアニストが譜読みすれば誰でも同じだと思うが)

●第1小節 ~ 第25小節

である。大馬鹿な解説で「第1小節 ~ 第4小節 が主題呈示、第5小節 ~ 第8小節 が第1確保」と書いてあるのを読んだ時は、頭がブッ飛んだ。 「頭大丈夫?」と。

--------

 クレメンティやクーラウの「ソナチネ」程度の曲を作曲するのであれば、「主題の息の長さ」は必要ない。(クレメンティのソナタについては言及していないので、誤解ないように!)
 「大ソナタ」(← 初版出版時のタイトル!) を作曲するには、ベートーヴェン以降の作曲家であれば、「ベートーヴェンと同じか、それ以上の規模と内容」を盛り込むのは当たり前であり、シューベルト が最も尊敬していた作曲家は ベートーヴェン!!!

●第1楽章第1主題呈示 = 第1小節 ~ 第25小節
●第1主題第1主題確保 = 第26小節 ~ 第60小節

以上で「呈示部の第1主題」は全部終了する。

1.ベートーヴェン並みの男性的な主題呈示
2.+ 各種の「七変化」ができる主題素材

にしか、この楽譜は(ベーレンライター新シューベルト全集であろうと、ウィーン原典版であろうと、ヘンレ版であろうと、ロンドン王立音楽院版であろうと、ユニヴァーサル版であろうと)どの原典版でも、他の解釈はあり得ないほどである。

 ・・・なのに、各種「解釈版」やらの悪影響にて、D784 は誤解されまくっているのである。 この続きは 明日号にて。
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<楽曲解説>シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1323)

2006-07-27 23:43:26 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 本日はD784の「楽曲解説」の第1回である。
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シューベルト 初の「循環ソナタ形式」のピアノソナタ = D784


 この曲の「楽曲解説」を読む度に「不思議」に感じる。最も大切なことが書かれていないからだ。それは、

●「循環ソナタ形式」のピアノソナタである

ことに全く触れられていないこと!!

 シューベルトが 

・「さすらい人幻想曲」D760 にて
・「循環ソナタを発明」したことは
・「音楽史上の大発明」の1つであり
・リストやフランクなどの偉大な後継者により受け継がれた音楽史上の財産

と言うことは有名。シューベルトの「循環ソナタ形式」の楽曲としては「さすらい人幻想曲」以外には

・弦楽四重奏曲第14番ニ短調「死と乙女」D810

のみが超有名だが、本当にそうか?

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 シューベルトの「明らかに循環ソナタ形式」の曲を列挙する!

1.「さすらい人幻想曲」ハ長調 D760(1822.11 ← 主題の関連が最も強い)
2.ピアノソナタ第14番イ短調 D784(1823.02 ← 主題の関連が極めて強い)
3.ピアノ五重奏曲イ長調 D667「ます」(おそらく間違いなく 1823夏 ← 主題の関連が極めて強い)
4.弦楽四重奏曲第13番イ短調 D804「ロザムンデ」(1824.02~03 ← 主題の関連がこの7曲中では最も弱い曲)
5.弦楽四重奏曲第14番ニ短調 D810「死と乙女」(1824.03 ← 主題の関連が最も強い)
6.ピアノソナタ第20番イ長調 D959(1828.09 ← 主題の関連が極めて強い)
7.ピアノソナタ第21番変ロ長調 D960(1828.09 ← 主題の関連が極めて強い)

となる。この手の試みは、シューベルトは若い頃から実行していたが

1.弦楽四重奏曲 変ホ長調 D87(1813.11)
2.ピアノソナタ ホ長調 D459A(1816?)

では、必ずしも成功したとは言えなかった。この2曲については、出版を試みた形跡も無いので「自分の代表作」とは少なくとも、31才で没するまでのシューベルトは考えられなかったようである。(最後の「3大ソナタ」の売り込みの逸話は有名であり、かつ、作品120(D664) と 作品122(D568) の2曲のピアノソナタはシューベルト本人が生前に売り込み済みだった様子である。)

 しかし、D784 は誰が楽譜を読んでも「循環ソナタ形式」としか思えない曲なので、これまでの「楽曲解説」にて、全く触れられていないことは奇妙でさえある。この名作ソナタ(← 評価は極めて高い!)に「名演中の名演」が存在しないのは、もしかしたら「解釈の問題」を内在しているのかも知れない。

 佐伯周子の演奏は「循環ソナタ形式の名曲」として演奏されていることを、ここに報告しておきたい。続きは明日号にて。
 
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「国際フランツ・シューベルト協会」紹介 (No.1322)

2006-07-26 23:27:03 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 昨日は「国際フランツ・シューベルト協会」の「夏の例会」を聴いて来た。弦楽三重奏曲 → ピアノ四重奏曲 → ピアノ五重奏曲 と「1人づつ奏者が増えて行く」粋な演奏会だった。とても息のあった素晴らしいアンサンブルが続く夢のようなひとときを過ごせたことがうれしい。
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「国際フランツ・シューベルト協会」


は、日本を代表する「シューベルト愛好家」の団体の1つである。
 シューベルト(1797-1828) の音楽はレパートリーが広い上に、曲数が膨大でとても31才で死んだ人間の所業とは思えない量を有しており、心を捉えられる人間は後を絶たない。
 「国際フランツ・シューベルト協会」は、故実吉晴夫氏を中心に「日本語によるシューベルト」を中心に、シューベルト普及に努め、成果を挙げて来た。現在は 杉山広司代表 を中心に、活発に活動している。ナマで聴く機会の少ない「ピアノ4重奏のための アダージオとロンド・コンチェルタンテ D487」も含めたレクチャー・コンサートが今回の「夏の例会」であり、演奏の集中力は素晴らしかった! 今後もさらなる活動の発展を期待する。
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シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1321)

2006-07-24 23:34:57 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 ベーレンライター新シューベルト全集「イ短調ピアノソナタ D784」は、大半が素晴らしい楽譜である。
 ・・・であるが、たった1ヶ所であるが、「原典版楽譜として超ヤバい」箇所がある。もしかして超マズいことをしてしまったかも知れない。

●第2楽章第52小節第1拍左手 の 下から2番目の音は「Eナチュナル音」

である。

●何故に新シューベルト全集は、「Cナチュラル音」になっていたのか?

は、今のところ不明。この指摘は、佐伯周子からである。弾いていて「間違いに違いない!」と思えた、とのことである。左手と右手の音が「無意味に不協和音」になるからである。
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シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1320)

2006-07-23 22:15:52 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 今日は D784 楽譜の話の続きで、No.1317 の続編である。
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イ短調ソナタD784 は

1.自筆譜が唯1種だけ残っている(← 2種類以上あると「伝承問題」発生!)
2.初版楽譜が自筆譜から作成されたことが確定している

ので、細かなスラーの位置とか、スタッカートの有無などを別にすると、ほとんど問題が生じない「ハズ」の曲である。
 ・・・が

清書稿自筆譜 ≠ 出版準備のための清書稿



のために1ヶ所だけ、大いに問題がある。

  • 第1楽章137小節 が 「第3拍から直前繰り返し」の記号になっているので
  • 「繰り返し」が同じ小節の「第1拍~第2拍」を1回繰り返すのか?
  • 「繰り返し」が同じ小節の「第2拍」を2回繰り返すのか?


が意見が分かれる。
  • 初版楽譜 ディアベリ社 1839.04.26 は、「第1拍~第2拍」を1回 と解釈
  • ブライトコプフ旧シューベルト全集(1888) と ペータース旧版 は、「第1拍~第2拍」を1回 を踏襲
  • 1953 の ユニヴァーサル版以降は、全ての「原典版楽譜」が 「第2拍」を2回

となった。 ベーレンライター新シューベルト全集も 「第2拍」を2回 である。 この箇所は、展開部の中でも、雰囲気が変わるポイントなので、結構耳に付くところである。
 このポイントを除くと、「イ短調ソナタD784」は 楽譜に拠る差異が極めて小さい曲であるし、ユニヴァーサル版以降の原典版楽譜を使用する限り、どれも全て基本は全て同じなので、「楽譜に拠る差異」は全くと言って良いほどほとんど出ない。ピアニストは「演奏で勝負するしかない」曲なのである。

 ・・・で、シューベルトのピアノソナタ中、この曲ほど、「ピアニストの解釈の差」があからさまに出る曲も少ないのである! 明日号でこの続きを。(他のことに浮気致しません!)
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<演奏会批評>江崎昌子ピアノリサイタル 2006年7月22日 (No.1319)

2006-07-22 23:20:45 | 批評

諸君、脱帽したまえ江崎昌子 は 本物だ!!



 本日昼、東京文化会館で開催された 江崎昌子ピアノリサイタル は、


  1. 「ppp」まで【指だけで描く】超絶技巧
  2. テンポ & ダイナミクス の「全体設計」の確かさ


がはっきり聴き取れた演奏会。 前半の シューマン「ダヴィッド同名舞曲集 作品6」 と 後半の ショパン「マズルカ11曲連続演奏」が最も聴き応えがあった。
 ・・・というよりも、これだけの シューマン & ショパン を弾ける人は(日本人に限らず)極めて少ない。 ショパン「マズルカ」をこれほど素晴らしく弾けるピアニストは、世界中探しても キーシン くらいしか思い浮かばない。本日、(時間的に無理なために)演奏できなかった他の40曲余りのショパン「マズルカ」も是非是非ナマで聴かせてほしい。



 単に「ポーランド帰り」ではないピアニスト = 江崎昌子 である。 CDで聴いて「世界クラスか?」と思い、本日スケジュールを都合つけて初めて演奏会を聴いて見たが、
  • CDを遙かに凌駕するダイナミクスの巾
  • 【指だけで紡ぐppp】の集中力!
  • 隣り合う楽曲が「映える」テンポ設定

が素晴らしい。
  • 生誕250年 = モーツァルト
  • 没後150年 = シューマン

が前半に組まれたが、シューマンの素晴らしさは、今まで聴いたナマ演奏中最高!
 江崎昌子 は、「fff」は(音の汚さを避けていると推測されるが)無いが、充分に「ff」までを奏で、【指だけで】ppp まで表出する。

 その上に「左ペダル」の【ぼやかし】が来る。 聴いていない人は信じられないだろうが、
  • シューマン「ダヴィッド同盟舞曲集」では
  • 全18曲中
  • 前半は「1度も」左ペダルを使わずに
  • 第11曲で 初めて「ぼかし」目的で使用

である。 う~ん、指だけでも「ダイナミクスの巾 = 絶大」のピアニストがさらに表現の巾を広げている!

 また、マズルカのリズムコントロールの絶妙なこと! 数種類ある マズルカの「固有リズム」をこれほど愉悦感を持って弾くピアニストは他にいるのだろうか? 昔々の ルービンシュタイン くらいしか思い浮かばないほどだ!

 江崎昌子 の「ナマ演奏」を聴いてない人に伝えることは、極めて難しい。CDに収録されている魅力よりも 100倍 くらい魅力あるからだ。(地方公演を除くと)次回東京公演は発表になっていないが、今から待ち遠しくてならないピアニスト = 江崎昌子 である。
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江崎昌子ピアノリサイタル 2006年7月22日 (No.1318)

2006-07-21 19:22:38 | 演奏会案内
 ショパン 「練習曲全曲」CD と 「マズルカ全曲」CD が素晴らしく、1回「ナマ演奏」を聴いて見たかった 江崎昌子 のピアノリサイタルが明日東京文化会館で昼14:00からある。
 CDを聴く限り、相当な実力の持ち主。「日本人としてうまい」レベルではなく「世界的レベルでうまい日本人ピアニスト」と聴こえる。 明日が待ち遠しくてならない。

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 演奏会詳細は ここ。 
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シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1317)

2006-07-20 23:00:56 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 佐伯周子ピアノリサイタル のトリを務める曲である。 「名曲の誉れ」高く、人気曲の1つである。まず、これまでの評価をまとめてみたい。

1.シューベルトの「器楽曲作曲家人生」を前期・後期に分けた時(← 1つの考え方。賛同者多い)に、1820年からの「後期」にて「完成した最初のソナタ楽曲」(1823.02)
2.両端楽章の「集中力」が入魂の感触
3.第2楽章が、シューベルトピアノソナタ緩徐楽章中「屈指の名曲」

 「シューベルト弾き」ではあるが、「ピアノソナタ全曲は弾かないピアニスト」の半数以上がこのソナタを弾いているような気がする。例えば、リヒテルやアシュケナージやピレシュ。名演がぞろぞろ揃っている名曲である。
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 楽譜と演奏に「全く問題が無い数少ないシューベルトピアノソナタ」の1つでもある。シューベルトは31才と極めて若い年で没した作曲家。生前に「ベートーヴェン並みの大作曲家」と思われるには至っていなかったらしく

1.生前に出版された曲の自筆譜は捨てられた曲が多い(!)
2.いくつか伝承経路が違う曲も多く、その際は異論が多い。(D894, D959 etc.)
3.ソナタ各曲が長いので「反復省略」されることは多い。その際「1番カッコ」がある曲は大問題が発生することがある(D960 etc.)

と根が深い問題あり。尚、上記3点を『全てクリアしているソナタ』は以下の3曲のみである。

1.イ短調ソナタ D537
2.イ短調ソナタ D784
3.ハ短調ソナタ D958

 最少に数えても「シューベルトの完成したピアノソナタ = 11」なので、相当少ない。う~ん。
 ・・・で、その「わずか3曲」のソナタの1曲が D784 である。この曲は、(あまり大きな声では言えないが)楽譜に拠る「差」が最も小さい曲の1つである。

●ベーレンライター新シューベルト全集
●ウィーン原典版
●ヘンレ版
●ロンドン王立音楽院版
●ユニヴァーサル版
●新旧のペータース版
●ブライトコプフ旧シューベルト全集

であれば、どの版を使っても、それほど大きな差は無い。
 ・・・とは言っても、「少しは違う」ところもある。この続きは明日号で。
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<演奏会批評>5月31日 佐伯周子ピアノリサイタル 月刊ショパン掲載される(No.1316)

2006-07-19 23:04:29 | ピアニスト・佐伯周子
 本日発売の 月刊ショパン2006年8月号 に表題の演奏会の批評が掲載された。佐伯周子も「演奏会批評」がこれで2回取り上げられたピアニストとなった。佐伯周子は、評者の方の耳に、耳を傾けて、来る8月13日の「佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠る完全全曲演奏会 Vol.2」に生かしてほしい。
 尚、月刊ショパン誌上の最後の ( ) 内の月日と演奏会場が違って表記されていたので、編集部に問い合わせたところ、真上の演奏会(安井耕一ピアノリサイタル5月30日津田ホール)をそのまま「コピー&ペースト」してしまったらしい。『インターネット時代ならではのミス』かも知れない。
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伊福部の魂感じ取る 佐伯周子 伊福部昭追悼演奏会


評者 : 家永勝


 本年の2月8日に91歳で逝去された日本の著名なる作曲家、故伊福部昭氏の追悼演奏会。実はこの演奏会は『伊福部昭92歳誕生日コンサート、川上敦子ピアノリサイタル』というタイトルで予定されていたそうである。川上敦子も悲しみのあまりか体調不良となり、急遽今回の佐伯周子がピンチヒッターとして登場したとのことである。佐伯は洗足学園音楽大学大学院2年在学中の若手。当然全曲伊福部作品だ。
 冒頭は日本組曲よりの3曲。『盆踊』、大きな和太鼓を思わせる低音の表現が見事。『七夕』、素朴で可憐さが充分に伝わる。『演伶(ながし)』は独特のリズムと間の取り方も見事で、この組曲の特徴を表出する。『日本狂詩曲』ピアノ独奏版ではこの曲の大きな構想を実にうまく捉えていたし、低音の長く続く和音にも魅力があり、しゃれた音を表出。2楽章後半のエネルギーにも感心したが、立派な熱演でこの曲の特徴を見事に表現する。後半の『ロマンス ピアノに拠る』は今回が初演だそうだ。このバラード風の明るくて希望のある大陸的な曲を、彼女は、大らかに表出する。『リトミカ・オスティナータ』、2台のピアノ版では岡原慎也との共演。壮大なテーマを持ったダイナミックな曲である。この宇宙的性格を見事に表現していたし、2台のピアノの大きな受けこたえの中に、伊福部の魂を感じ取れた。佐伯は短い期間に伊福部作品をよく研究し勉強していた。代役として登場し、この難しい曲を見事に再現させたことには大いに敬意を表したい。伊福部先生も、この日の演奏をきっと満足され大いに喜ばれたことと思える。
(5月31日 東京文化会館小ホール)

月刊「ショパン」2006年8月号P108
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7月17日 新国立劇場2005/2006シーズンエンディングパーティー報告 (No.1315)

2006-07-18 22:50:32 | その他
 昨日号は「書き過ぎ」明らか。3度に亘る分割投稿だが、原稿用紙10枚分。ついつい「旧デイリー」時代の長文を書きたくなるクセが抜けきらないのかも。今日から深く反省して通常モードに戻す予定。 今日は初めて「ピアノ外」の記事です。

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 実は昨日7月17日(月・祝)は、表題のパーティーに行って来た。1997年10月10日(当時の「体育の日」)に開館し、翌年4月から「通常シーズン」を標榜して来た新国立劇場である。この手のパーティーは既に何度もして来たと思っていたのだが(協賛企業の皆様に対しては不明だが)「今回が初めて」が公式見解である。えっ? 私は聞いたこともない、ですか? これは「定期会員」だけに対しての「クローズパーティー」ですから

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 新国立劇場2005/2006シーズンエンディングパーティーが、史上初めて開催された。対象者は「オペラ または バレエ の定期会員」である。 う~ん、私は「オペラファン」であり、定期会員に「募集の初回」から継続しているので案内が来た。 座席の近い「定期会員」の人も多く来場していて、大いに盛り上がった。その際に

●こんなに着飾って来るか?

と互いに(ワインの心地良い気分が加算されたとしても)言い合っていたことは

1.新国立劇場オペラ公演は開演時間が早過ぎて、着替える時間が無い
2.パーティーは休日16:00開始だったので、「着替える時間」はあった

と言うことである。う~ん、「東京の現実社会」は結構きびしいかも(← 私高本を含めて)

 内容は相当に濃い。

1.ソプラノ=中村恵理,テノール=水口聡 による<ウェルカム・コンサート>
2.<パーティー>

の2部構成が「新国立劇場・オペラ劇場」の「ホワイエ」で繰り広げられた。まず入場時に「会員番号」を確認され、<ウェルカム・コンサート>に入場。 ここは、新国立劇場ホワイエの「入場してスグ」のところである。
 なぜか信じられないことに「木目調のアップライトピアノ」が見える。練習場には小型グランドがあることは知っている。「移動費」をけちったのかもしれないが、名手 = 大藤玲子 を持ってしても「ハーフペダルができるワケない」状況は奇跡も起こらず、「楽器機能の通り」に進んで行った。
 「オペラ歌手を間近に聴く」のは、相当に迫力を(オペラ公演以上に)感じられるが、私高本は「ピアノ音楽ファン」なので、「グランドピアノで聴かせろ!」を強く感じたことをここに記す。
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 パーティーはなかなかゴージャス。肩を相当に露出された女性の皆様(← あっ、定期会員の皆様です!)や、和服を召されている方なども居て、日本の美 と 西洋の美 が交錯する感触。私自身は 上質のイタリアワイン と 上質の料理 と さきほど歌っていた2人の素晴らしい歌手 + 9名のバレエダンサー(内8名は 女性ダンサー!) に酔っていた。 これまでの1年シーズンの話から来シーズンの紹介までの話などなど。 裏方の皆様も紹介され、多くの人がオペラやバレエに従事していることが紹介される。
 このパーティーを「シーズン後に開催する」ことを、募集時から言えばもっと「定期会員」を集められるのではないだろうか? この辺りについては、営業担当者の一層の努力を期待したい。
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 親睦は確実に深められたと思う。また、「出された料理 + 酒」は私高本が喰った & 呑んだ モノに関して言えば、極めて上質。「世界で人口第3位 & ヨーロッパ文化を消化した都市 の シュターツオーパー」 として、このような催しは、来年も再来年も続くことを期待する。

 ピアノ音楽への好影響ですか?
ショパンを聴く時に、モーツァルト「ドンジョバンニ」を知っているとことは有益。リストを聴く時に ベッリーニ「ノルマ」やヴェルディ「リゴレット」を知っていることは有益。 絶対必要とは言わないが、「もし聴ける機会があるならば、聴いて損は無い」と私高本は思う。
 来シーズン(今年9月から)も私高本は楽しみにしている。
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ベーレンライター新シューベルト全集 への誤解を解く (No.1314)

2006-07-17 13:16:43 | 作曲家・シューベルト(1797-1828

ベーレンライター新シューベルト全集ピアノの部


は、はっきり言って「極めて評判が悪い」と断言できる。 交響曲全集が極めて評判が良いのとは裏腹である。 なぜか? 本日は、この「シューベルト演奏の根源」にも関わる問題を真っ正面から取り組む。

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日本初のメジャーレーベルCD会社専属契約ソリスト = 内田光子



は日本の誇りである。1970年ショパン国際コンクール第2位から、世界クラスのピアニストとなったが、幼少の頃からウィーンに在住していたからなのか、メインレパートリーは、「モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト」であり、まずモーツァルト没後200年 = 1991年 までに「ソナタ全曲 + 協奏曲全曲」と言う偉業を成し遂げた。
 モーツァルトの次に意欲的に取り組んだのが、シューベルトである。シューベルト生誕200年 = 1997年 から 「シューベルトピアノソナタ全曲(← 内田が考える全曲) + 主要曲」の8枚組CD を6年かかりで録音発売した。 使用楽譜は 私高本が聴く限りヘンレ版。(ソナタも小品も)
 このCD録音を開始する頃だったと思う。 音楽之友社から発売されている雑誌 「レコード芸術」 のロングインタビューと NHKのインタビューで

●「ベーレンライター新シューベルト全集はヒドい。何も注釈無しにシューベルトの音楽をねじ曲げている」
●実例として「3つのピアノ曲 D946」を挙げて立証

の主旨の発言をしていた。内田ほどの大物の発言である。ピアニスト、ピアノ教師、ピアノを勉強している学生、ピアノ音楽愛好家 など、ほどんど全ての人が信じてしまったことと思う。かく言う私高本も、聴いた瞬間に信じた1人である。
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佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠る完全全曲演奏会


を2004年に開始した。ベーレンライター版で無いと「楽譜が存在しない曲」が多数あるからだ。おそらく世界初の試み。第2回は 8月13日(日)19:00 東京文化会館。上記HPで確認下さい。

 さて、新シューベルト全集を購入して見て驚いたことがある。内田が

●「ベーレンライター新シューベルト全集はヒドい。何も注釈無しにシューベルトの音楽をねじ曲げている実例 = D946」

と言っていた箇所が信じられないほど丁寧な「注釈」が付いているのだ!

●ベーレンライター新シューベルト全集VII/2 Klavierstuck II BA5521(1984)
●楽譜自体は P110 - P130
●出典根拠については P167 - P169。 削除した箇所は "Bei spiel 12, S.173" 参照明記
●削除した全小節を P173 - P174 "Bei spiel 12" に全部掲載

である。P174 の脚注に至っては、他社版よりも詳細!

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 つまり、

  • 「ベーレンライター新シューベルト全集ピアノ版」は
  • 旧全集からほぼ1世紀の間の研究蓄積を最大限に生かした全集で
  • 注釈やコメントは、他社版以上に根拠を明示している

のが、D946 で言えば【新刊発売 = 1984】からの実態なのである。

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 では、なぜ 内田光子 ほどの大ピアニストが勘違いしたのだろうか?
これはスグにピーンと来た!

1.ハードカバーの新シューベルト全集 BA5521(1984) は詳述しているが
2.直後に発売された ペーパーバック版 BA 5615 は、序文+楽譜までしか収録しておらず、「校訂報告が完全に省略されているから」

である。BA5615 は「即興曲集」と合本されて、ヤマハから シューベルト ピアノ作品集 第1巻 として日本語ライセンス版が出版されているので、近くの楽譜店で簡単に確認することができる。

 なぜ 内田光子 はハードカバー版を購入しなかったのか?

1.ハードカバー版 → 137ユーロ
2.ペーパーバック版 → 8.95ユーロ

 約15倍!!!

 これだけ値段に差があれば、「新シューベルト全集で演奏する決意を持ったピアニスト」以外は、100名いたら 100名 が ペーパーバックに手が伸びる。私高本だって、「豪華ケース入りCDが値段が15倍」したら、決して購入しないことをここに断言する。

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 内田光子 は誤解していた。

  1. 新シューベルト全集ペーパーバック版は不親切で校訂報告が欠落している

  2. と言えば良かったのを

  3. 新シューベルト全集は校訂報告無しに楽譜をカットする」と誤解

  4. してしまった

 内田光子 は D946/1 を「削除箇所を弾く」ピアニストであるので冷静に見ることが出来なかったのかも知れない。 内田光子 は「シューベルトピアノソナタ全曲 + α」をBoxCDで発売する時には、この楽譜についてのコメントは全く掲載されなかった。ショパンピアノソナタ第2番変ロ短調作品35 のCD発売の時は、ポーランドのナショナル・エディションに先駆けて、「第1楽章の繰り返しは冒頭に戻る」を強く主張し、実行し、CDライナーノートに明記していた 内田光子 であるから、録音終了時までには気付いたモノと察する。
 今からでも遅くないので、「ベーレンライター新シューベルト全集ピアノ版」の誤解を解くように、内田光子 にはコメントしてもらえれば幸いである。

 尚、ベーレンライター新シューベルト全集「交響曲」が大好評なのは、

●ハードカバーの他に「縮刷版」も発売されているが
●縮刷版は「校訂報告」まで全て印刷されており、安価である

ことが最大の違い。これが原因で

●交響曲 → 素晴らしい楽譜 → 大好評
●ピアノソロ曲 → とんでもない悪い楽譜 → 大不評

と長く誤解されてしまったのである!
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<演奏会批評>力感に卓越した石田種生演出&振付「白鳥の湖」(No.1313)

2006-07-16 23:39:26 | 批評
 チャイコフスキー「くるみ割り人形」が【オハコ】の 東京シティバレエ団が6年ぶりに「ティアラこうとう」で上演したチャイコフスキー「白鳥の湖」だったが

●力感溢れる石田種生 演出&振付
●呼応する福田一雄指揮東京シティフィルの名演

が印象深い。
 福田一雄指揮東京シティフィルは、

●弦楽器を中心に強く打ち出しながら
●打楽器を前面に押し出しながら
●金管楽器を抑え目にしたバランス

である。男性主要3役(Kim Bo Youn, 佐藤雄基, 穴吹淳)は高い水準を維持してくれていたことが上演を引っ張っていた。これで、オデット/オディール役 の 若生加世子 が「力感溢れる役作り」に突き進んでくれたら、さらなる名演になったと推測されるが、「可哀想なオデット」風に「弱い面を強調し過ぎ」て踊ってしまったように感じる。これさえ、一致すれば、さらなる質の上昇があることを期待できる。次回公演は必ず今回を上回るモノと思う。

【附論】「白鳥の湖」とピアノ協奏曲第1番

 バレエ「白鳥の湖」(1875-1876)はチャイコフスキー自身のピアノ協奏曲第1番(1874-1875)と近い時期に作曲された作品である。バレエとピアノ協奏曲は良く似た面があり

●ソリストが存在し、ソリストが花形
●量的には「オーケストラ」「コールドバレリーナ」の方が圧倒的に多い
●曲全体の「流れ」を掴まないと、ソリストは、努力の割合に「映えない」

などなど。チャイコフスキーのこの時期の作品は、「甘美なロマンティズム」と「ロシアの大地に根差した力感」の両面が魅力。
 ピアニストやピアニストを目指す人が、「白鳥の湖」を鑑賞すると、得るモノが多いと思う。「自分の好きな作曲家の他の分野の名曲」を「名演奏で聴く」ことはその人の財産となると感じた次第である。
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