Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

「遺作3大ソナタ」ハ短調D958 その5(No.1754)

2010-06-28 22:30:23 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
ハ短調ソナタ D958 第1楽章の難しさは、

  1. ソナタ全4楽章が「循環ソナタ」であるのに、気付かないピアニストが多く、「有機的統一」が為され難い

  2. 「音域」が抜群に広く、『動機の統一』が技巧的に難しい(違う音域だと「音の処理」がピアニスティック的に異なるため)

  3. 他のシューベルトピアノソナタに比べて、第1楽章の「時間的空間」が短く、次から次へと重要なことが頻出する


の3点である。
 他の後期シューベルトピアノソナタ(D840,D845,D850,D894,D959,D960)だと、もっと時間を掛けて説得してくれる事象が、凝縮されて出てくる。たった1曲の中期ピアノソナタ = D784 よりも、さらに第1楽章は短い。この点が「シューベルト弾き」に、「時間不足」を感じさせるのだろう。


 D958第1楽章は、「ベートーヴェン : 32の変奏曲 ハ短調 WoO.80」に冒頭が似ていることで有名。
 但し、

D958第1楽章第1主題の方が ベートーヴェンWoO.80 よりも「全ての面で拡大されている」


ことは、私高本が読んだ範囲の全ての文献で書かれていなかった。つまり「ベートーヴェン WoO.80 主題を元に作曲したことは間違いないが、可能性を最大限まで引き延ばした」点が語られていないのである。
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新国立劇場「池辺晋一郎:鹿鳴館」世界初演初日批評(No.1753)

2010-06-24 23:23:06 | 批評

「夕鶴」に続く(越えた?)『日本語レパートリーオペラ』が誕生した瞬間!



 新国立劇場が4年4ヶ月ぶりに開催した「委嘱新作オペラ」が 池辺晋一郎作曲「鹿鳴館」である。新国立劇場委嘱新作オペラは
これまでに

  1. 團伊玖磨「建(タケル)」(1997)
  2. 原嘉壽子「罪と罰」(1999)
  3. 一柳慧「光」(2003)
  4. 三木稔「愛怨」(2006)
  5. 池辺晋一郎「鹿鳴館」(2010)

と足掛け14年間でわずか4名に4作品だけである。
 カネも喰うし、名作は1作品も出ない(← 再演された演目皆無!)という散々の出来なのでこれまで新国立劇場制作部が躊躇して来たことは深く理解できる。武満徹も伊福部昭も委嘱を受ける前に死んでしまった。(「建」委嘱時はまだ、武満徹は存命だったし、「光」公演時はまだ伊福部昭は存命だった)



池辺が「鹿鳴館」の作曲を委嘱された時は、若杉弘が新国立劇場オペラ芸術監督で、全面協力してくれた


ことは広く知られている。初演は若杉が振る予定だった。
 台本&演出は 鵜山仁(新国立劇場演劇芸術監督) で、キャスティングも超豪華(後述する)。これまでの21作のオペラ以上の環境を 故・若杉弘 は「鹿鳴館」のために整えてくれたのである。池辺がいかに意気に感じたことだろうか!


 これまでの「日本オペラ界」に決定的に欠けていた要素がある。

日本オペラには「速いテンポ」と「弾むリズム」が欠けている!


のだ。器楽曲では存在しているだけに、常々不思議に感じていた。「夕鶴」もこの2点は欠けていると私高本は感じる。池辺は、「名作オペラにはテンポ感とリズム感が必須」と腹の底から感じているようで、休憩込みで3時間を超す日本オペラにもかかわらず、全くだれる感じが無い。
コメント (1)
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「遺作3大ソナタ」ハ短調D958 その4(No.1752)

2010-06-15 23:41:45 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 「D958 の難しさ」は、第1楽章の呈示部に起因している、と考えられる。

  1. D958この楽章は「2主題」なのか? 「3主題」なのか?

  2. 「第1主題(← これははっきりしている)」で、どの要素が最も大切なのか?

  3. シューベルトソナタとしては異例なほど凝縮している(=短い)




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「遺作3大ソナタ」ハ短調D958 その3(No.1751)

2010-06-14 21:04:35 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
No.1750 に重大な誤りがありました。既に訂正してありますが

(誤)4回スタジオ録音しているのは、D958 と D840 のみ
(正)5回スタジオ録音しているのは、D958 のみ


です。あぁ、恥ずかしい!!!


 ブレンデル は、「ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲を4回録音した!」が超有名。内1回は「あらかじめ予定されたライブ録音」であるが、

  1. ワルベルク + ベッチャー + メータ
  2. ハイティンク
  3. レヴァイン(ライブ)
  4. ラトル

である。凄い!
 その「ベートーヴェン : ピアノ協奏曲」を上回るスタジオ録音をしたのが、ほかならぬ 『シューベルト : ピアノソナタ第19番 ハ短調 D958』なのである。
 ブレンデル のレコーディング記録については、相当に深く調べていると思うのだが、

ブレンデル全レパートリー中「スタジオ録音が5回」に達した曲は、シューベルトピアノソナタ第19番ハ短調D958 のみ


と思われる。ライブ音源は今後も出てくるだろうから、「シェーンベルク ピアノ協奏曲」のように既に『スタジオ録音3回 + ライブ録音1回』と言う曲が6回以上のテイクが出現する可能性は高い。(ちなみに私高本は「ブレンデルのシェーンベルクピアノ協奏曲」スタジオ録音3回は全て所持して愛聴している)
 「ベートーヴェン ピアノ協奏曲全5曲」は、シューベルトD958 を「ライブ録音」を含めれば越す曲の方が多いだろう、と思う。私高本も東京で聴いた(第3番ハ短調を東フィル、第5番をN響)が、やはり説得力の高い演奏であったから!


ブレンデル「シューベルト : ピアノソナタ第19番ハ短調 D958」の録音履歴


は次の通り。

  1. ヴァンガード録音(1964-1968の間、ベーゼンドルファー)

  2. フィリップスLP録音(1972、以下スタインウェイ)

  3. ブレーメン放送(1976.06-1977.12)

  4. フィリップスCD録音(1987.09.06-13)

  5. BBC放送 + フィリップス 放送&DVD録音(1988.01.01-03)


 私高本の勘違いは「4 と 5」が同じテイクと勘違いしたこと。演奏の細部表現の方向性は全く同じなのだが、違うテイクである。オレは正真正銘のバカだ。「第1楽章呈示部反復」が違うじゃん(泣
 私高本がバカなことは、私高本が保証する(爆


 不思議なことに、「ブレンデルの上記5回のスタジオ録音」で最も素晴らしいのは、ほとんど売れていないだろう第1回のヴァンガード録音である。他のソナタと違い、いろいろと細部を変えているのが不思議な曲である。

  1. 第1楽章呈示部の反復(第4回のみ、なぜか反復を実行している!)
  2. 第2楽章の「3連符と右手の複付点音符を合致させる」か?(第4回以降が合致、第3回以前は音符通り)
  3. 第3楽章の「小節全休符の長さ」(第2回が最も忠実か?)

などなど、「お手本」が相当に『ブレている』のだ。これが原因なのか、「ブレンデル亜流のピアニストの皆様」はこの曲の演奏がスカである。う~ん、残念!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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「遺作3大ソナタ」ハ短調D958 その2(No.1750)

2010-06-09 22:05:15 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 シューベルトの「遺作3大ピアノソナタ」は、D959 と D960 が「循環ソナタの名作中の名作」との評判を得ている。なぜか、D958(今回、佐伯周子が弾く)だけが「循環ソナタ」との定評を得ていない。ブレンデルも D958 については「第4楽章だけは、第1楽章から派生していない」と明言しており、「ブレンデル亜流の皆様」からは、積極的な演奏を受けていない。


 しかし、意外な事実として、

ブレンデルが「5回スタジオ録音したシューベルトのピアノソナタ = D958(全4楽章)」のみ


と言う事実がある。
 評価していない曲をそんなに録音するのだろうか?
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