Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

木月京子を偲んで(No.1646)

2009-04-30 16:34:56 | その他
ジャンルもクラシックとは違う歌手(基本的にはシャンソン歌手が主だったと記憶している)の 木月京子 が今年亡くなった。享年60才。声楽家として盛りの後半に差し掛かっていたが、活躍の輪はますます広がっていた時期の急逝だったとのこと。遅ればせながら、謹んでご冥福をお祈りします。


木月京子 と出会ったのは、1990年の冬。日本オペレッタ協会「白馬亭にて」公演の稽古だった。今から19年前だから、木月京子 = 41才、私高本 = 30才 だったハズ。主役 = ヨゼファー役 が木月さんだった。私高本 = 合唱団員の末席 だったので、立場的には言葉を交わすのも無理なのだが、木月さんの人なつこい性格で、合唱団員とも親しく接してくれて公演当日まで稽古を進めてくれたのだった。

 セリフ廻しに「味」がある人だった。「間の取り方」とかに独特の味があり、受けも極めて良かった。当時の私高本は「30台に突入したばかり」だったので、セリフ廻しの重要性(オペレッタやモーツァルトのドイツ語オペラ)がまだわかっていなかった。
 当時の日本オペレッタ協会は「ダブルキャスト」だったので、ヨゼファー役は2人居た。もう1人の主役は 藤原歌劇団所属の人だったが、セリフ廻し が木月さんに比べて余りにも差があり(木月さんが上)、驚愕した思いが残っている。歌自体は(好みの差はあっても)それほどの差は無かった。


 人間も動物も植物も「いずれは死ぬ」のだが、まさか「還暦迎えて直後に死ぬ」とは誰も思っていない。もっともっと長生きして活躍してほしかった > 木月京子
 「白馬亭にて の ヨゼファー」の名演は3回共演させて頂いたハズ。脂の乗り切った時代の 木月京子 の歌とセリフと演技を目の当たりにさせてもらったのだった。「私高本のオペラ観」の礎である。
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ヘンシェル+岡原慎也が久しぶりの来日公演(No.1645)

2009-04-03 19:19:37 | ピアニスト兼指揮者・岡原慎也
 もし、私高本に「シューベルトリートは誰が最高?」の質問があれば

『2009年現在のシューベルト歌曲の演奏組合せの最高 = ディートリヒ・ヘンシェル + 岡原慎也』と明言



する。ヘンシェルはどちらかと言えば「オペラ歌手」であり、岡原慎也はどちらかと言えば「ソロピアニスト」である。PMJ で私高本がこんなことを書くと、怒られる可能性も高い(爆


 今から丁度「干支が1廻り前の12年前」に、私高本は「ヘンシェル+岡原慎也」を知った。さらに1年前にも、京都以西で演奏会をしていたのだが、ビンボーな私高本は、全く知るよしも無かった。知ったのは「ヘンシェル来日2度目の1997年」の「音楽の友ホール」公演である。


 その公演が素晴らしく「ヘンシェルデビューCD」も作られた。1998年のことであり、もちろんピアニストは岡原慎也。あまり売れなかったらしく、今は廃盤になってしまっている。「シューベルトリート」は売れ行きが悪いそうだ > オペラに比べて > フィッシャー=ディスカウに発言に拠ると。


 『ヘンシェルのマーラー歌曲(オーケストラ伴奏版)』は極めて評価が高く、

  1. ヘンシェル独唱『マーラー歌曲集』ケント=ナガノ指揮

  2. ヘンシェル独唱『マーラー歌曲集』ヘレヴェッヘ指揮


が同じ曲目を含めて立て続けに発売された。ちなみに

●岡原慎也のマーラー → 「大地の歌」のピアノ版の日本初演 だったか 関西初演 のピアノ



だった記憶がある。マーラーは研究が浅くてゴメン!


 今回の曲目も、ヘンシェルも岡原慎也も「手の内」の曲目。これは是非是非聴いて欲しい。私高本も、大阪 + 東京 を聴く予定。これほどの演奏会は滅多に無い!!!
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読売新聞三宅幸夫に拠る「東響定期演奏会」批評の批評(No.1644)

2009-04-02 18:33:36 | 批評の批評
近所は「花見盛り」。昼から桜の花を見て宴会する人多数。昨日から「新年度」になり、気分一新した人も多いことだろう。
 本日号は久しぶりに「批評の批評」を書きたくなった。『批評の本質』を考えさせられた批評を読んだからだ。標題の記事が掲載されたのは 3/31(火)夕刊14面だった。


 まず、三宅の文章を引用しよう。

●好評を博してきた東京交響楽団の「シューベルト・ツィクルス」が劇付随音楽「キプロスの女王ロザムンデ」で幕を閉じた。
 音楽監督ユベール・スダーン=写真=は曲順を入れ替え。楽想の繰り返しにメリハリをつけるなど工夫を凝らすが、いかんせん作品そのものが弱い。<羊飼いの合唱>や有名な<間奏曲>で一瞬アルカディアの原風景が透けて見えたものの、ありきたりの<バレエ第2番>では幻滅を味わうこととなる。この作品が常演演目に定着しなかったのも、それなりの理由があるわけだ。(中略)
 底無しの深淵をのぞくような「未完成」と、あくまでも単純素朴な「ロザムンデ」・この作曲家の内なる落差に当惑を禁じえない一夜であった。(音楽評論家 三宅幸夫) -21日、赤坂・サントリーホール。(引用完)

 三宅幸夫をこれまでに素晴らしい批評を数々書いて来た先輩であり、私高本がとても参考にしている人の1人であるだけで、読んだ当日(一昨日)は目眩がしたホドだ。2晩じっくり寝て、客観的に書ける自信が湧いたので「批評の批評」を(久しぶりに)書く。


 問題点は以下に集約されるだろう。

  1. シューベルト楽曲中、「未完成」は極めて演奏頻度が多く、楽譜も高価で精密なベーレンライター新シューベルト全集から、音楽之友社版や全音楽譜版などごく安価なモノまで手に入り親しまれていて、三宅幸夫も熟知している

  2. 「ロザムンデ」D797 は、ブライトコプフ旧シューベルト全集以外は「楽譜出版自体が無い」(新全集未出版)ので、評論家も指揮者も研究するのに「貸し楽譜」を借りる以外に手が無く、実質上評論家で貸し楽譜を借りるのは無理(私高本もできません)

  3. 誰もが「自分が深く研究している楽曲は高く評価」する傾向にあり、「ロザムンデ」は無茶苦茶不利な楽曲だ!!!




 他人を「批評の批評」する前に、私高本自身の経験を述べよう。私高本がこれまで演奏会プロデュースした作曲家は4名。

  1. シューベルト

  2. 伊福部昭

  3. リスト

  4. モーツァルト


 モーツァルトを再度プロデュースする「私高本」を想定することは今は出来ない。リストは昨年もプロデュースした。伊福部昭もいずれはプロデュースするだろう。シューベルトは 8/12 に『佐伯周子 シューベルト完全全曲演奏会』が待っている!

 上記4名の間の作曲家「ベートーヴェン」について述べる。私高本が最も熟知している作品は(ピアノ作品では無く)交響曲第9番ニ短調「合唱付 = 第九」作品125 である。旧「デイリークラシカルミュージック」時代の最も読者の皆様から人気の高かった曲目でもある。実際の舞台上にも、今回三宅幸夫が批評した演奏会にも登場した「東響コーラス」メンバーとしてとても多くの舞台を経験させて頂いた。 指揮者は 秋山和慶、合唱指揮は 堀俊輔 が大半で、アインハウス指揮が1回、小林研一郎指揮が1回で、他は全部 秋山 + 堀 だった。 そんなワケで、ベートーヴェンの他の曲よりも「第九」は熟知している(爆
 だが、「運命」「田園」「第7」が「第9」よりも劣っているとは私高本には思えない。細部の指摘はできないのだが、この4曲は「同じ水準で高みに達している」と感じる。「英雄」もこの中に入る可能性が高いのだが、私高本の研究不足なだけかも知れない。


 3/21 のスダーン指揮東響に話を戻そう。演奏自体について私高本は

  1. 交響曲「未完成」は第1楽章は素晴らしかった。第2楽章は第1楽章の緊張感を継続できなかった。

  2. 「ロザムンデ」の演奏の方が「未完成」よりも遙かに上だった。オケも素晴らしかったし、合唱(東響コーラス)も素晴らしかった


と感じた。私高本の「未完成」研究が浅い、だけかも知れない。違うかもしれない。私高本は「ロザムンデ」の楽譜こそみていないが、CDは「可能な限り」のモノは聞いて来た。

スダーン演奏順 = アバド盤(DG)の通り!


であり、三宅幸夫はこのことを知らない。研究不足は明らかだろう。こんなことを書く私高本も ヒンデミット 辺りの批評では、モノ笑いのタネになっている可能性が高い。

評論家は8割程度は「印象批評」で書くのが宿命


だからである。私高本も「デイリー」時代には、毎晩うなされたものだ。


 今回の三宅幸夫批評は、研究不足が原因だろう。『遅い終楽章の曲』は人気が出難い。シューベルトで言えば

  1. 弦楽四重奏曲第13番イ短調「ロザムンデ」作品29 D804

  2. ピアノソナタ第17番ニ長調「第2グランドソナタ」作品53 D850

  3. 連弾ピアノソナタホ短調 作品63+作品84 D823

  4. ピアノソナタ第18番ト長調「幻想ソナタ」作品78 D894

  5. 弦楽五重奏曲ハ長調 D956

  6. ピアノソナタ第20番イ長調 D959


辺りの評価はシューマンを初めとして低いからなあ(爆
 ちなみに、ベートーヴェンのピアノソナタでも第2番、第4番、第11番辺りは評価が低い。グルダ はやたら速く弾いているし(爆


 三宅幸夫 ほどの評論家でも「楽譜を見たこと無い曲の批評」は、『不必要にキツくなる』ことがわかったのが収穫。
 佐伯周子 の『シューベルト 完全全曲演奏会』って、ほとんどの評論家が楽譜見ないで評論している > 過去

 う~ん、不必要に「悪い評価」を喰らっているんだろうな > 佐伯周子

 私高本では、どうしようも手の打ちようがないよね > スダーン + 東響でも無理なんだから(爆
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