Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (No.1320)

2006-07-23 22:15:52 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 今日は D784 楽譜の話の続きで、No.1317 の続編である。
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イ短調ソナタD784 は

1.自筆譜が唯1種だけ残っている(← 2種類以上あると「伝承問題」発生!)
2.初版楽譜が自筆譜から作成されたことが確定している

ので、細かなスラーの位置とか、スタッカートの有無などを別にすると、ほとんど問題が生じない「ハズ」の曲である。
 ・・・が

清書稿自筆譜 ≠ 出版準備のための清書稿



のために1ヶ所だけ、大いに問題がある。

  • 第1楽章137小節 が 「第3拍から直前繰り返し」の記号になっているので
  • 「繰り返し」が同じ小節の「第1拍~第2拍」を1回繰り返すのか?
  • 「繰り返し」が同じ小節の「第2拍」を2回繰り返すのか?


が意見が分かれる。
  • 初版楽譜 ディアベリ社 1839.04.26 は、「第1拍~第2拍」を1回 と解釈
  • ブライトコプフ旧シューベルト全集(1888) と ペータース旧版 は、「第1拍~第2拍」を1回 を踏襲
  • 1953 の ユニヴァーサル版以降は、全ての「原典版楽譜」が 「第2拍」を2回

となった。 ベーレンライター新シューベルト全集も 「第2拍」を2回 である。 この箇所は、展開部の中でも、雰囲気が変わるポイントなので、結構耳に付くところである。
 このポイントを除くと、「イ短調ソナタD784」は 楽譜に拠る差異が極めて小さい曲であるし、ユニヴァーサル版以降の原典版楽譜を使用する限り、どれも全て基本は全て同じなので、「楽譜に拠る差異」は全くと言って良いほどほとんど出ない。ピアニストは「演奏で勝負するしかない」曲なのである。

 ・・・で、シューベルトのピアノソナタ中、この曲ほど、「ピアニストの解釈の差」があからさまに出る曲も少ないのである! 明日号でこの続きを。(他のことに浮気致しません!)
コメント
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