Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

東京オペラプロデュース ドニゼッティ「ビバ!ラ・マンマ」初日2017.11.11批評(No.2540)

2017-11-11 20:36:52 | 批評

ドニゼッティ オペラ・ブッファの代表作「ビバ!ラ・マンマ」捧腹絶倒ぶりを見事に描き出した東京オペラプロデュース


  2008年2月ワーグナー「妖精」公演以来、10年弱『日本初演のみ』(オッフェンバック「青ひげ」のみ「原語日本初演」だった)を続けて来た東京オペラプロデュースが前回の100回記念公演オッフェンバック「ラインの妖精」を1つの機に、101回から103回はこれまで繰り返し上演して来た「手駒」を再演してくれることとなった。本日の「ビバ!ラ・マンマ」は20年ぶりの公演。私高本は初めて聴く演目である。

 ドニゼッティは、オペラ・ブッファ と オペラ・セリア を両方作曲した作曲家。「愛の妙薬」もブッファだが、それ以上に笑いを畳み掛けて来るのが「ビバ!ラ・マンマ」である。R.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」がおそらく手本にしたであろう作品であり、モーツァルト「劇場支配人」を手本にしただろう、「オペラ内面暴露ブッファ」である。
 ブッファの難しさは、「歌える喜劇役者」を必要数揃えられるか否か、が大きい。この日の 

翠千賀、羽山晃生、上原正敏 は、アリアに重唱に大活躍


 さらに笑い取りに重点が置かれるが歌唱も重要な役に

羽山弘子、米谷毅彦、白井和之、岡戸淳、佐藤泰弘 はアンサンブルで外向的な歌唱を披露


と「歌える喜劇役者」を揃えることが出来たのである。


  次に、馬場紀雄演出について。「オペラ舞台の舞台上」と言う設定通り。シャンデリアを序曲&間奏曲中に釣り上げる以外は、大道具は全く動かさない。動くのは「役者」である。チョコマカとユーモラスに動く動く。合唱団もユーモラス。女声合唱が4名、と信じられない最少構成(各パート2名以上いないと「合唱」と呼ばない)だったが、きちんと混声合唱で最上声をリードしていながら、ソリストを引き立たせるために大袈裟な所作の連続。
 衣裳は、1幕と2幕 で交換するだけで、2枚。但し、ユーモラス優先だが、優美に見える衣裳を揃えていた。見応え充分。


  最後に、飯坂純指揮について。8型オケ(8-6-5-4-3)と言う小型編成だったが、きびきびした演奏で歌手陣を盛り上げていた。ピッコロパートを1番奏者に吹かせていたが、ドニゼッティの指示なのか? 飯坂純の指示なのか? は不明。確かに、上声を吹くのだから1番奏者の方が安定している!

  東京オペラプロデュースは「プロンプター無し」でここ20年(もしかするとそれ以上!)公演を続けているので、ドニゼッティが「プロンプターを皮肉った」箇所の応対は、何と「指揮者=飯坂純」が全て対応した。ドニゼッティも想定していないほど、恵まれた環境 = 東京オペラプロデュース

 ベルリオーズが「ドニゼッティのオーケストレーションは、大型のギター」と揶揄したことは有名。ベルリオーズほど多彩では無い(イングリッシュホルンを使わない など)が、「ビバ!ラ・マンマ」を聴くと、木管楽器の音色の多彩さを浮かび上がらせている。充分に楽しめる!


 プログラムノートを読むと、「ビバ!ラ・マンマ」の呼称が使えるのは今回公演まで、とのこと。権利関係、しかも外国、のことは全くわからないが、原題の「劇場的都合・不都合」の名称では、集客出来ない、と思われる。
 東京オペラプロデュース「ビバ!ラ・マンマ」を鑑賞したい人は、明日11/12公演を絶対に聴いて欲しい。


 私高本が「ダブルキャスト(以上)」の公演で、「差」があることを教えてくれたのは、東京オペラプロデュースである。猫頭評論家の私高本を両日とも招待して頂いて観せて頂いたおかげ様である。新国立劇場イーグリング新振付チャイコフスキーバレエ「くるみ割り人形」の『立体批評』の元も、東京オペラプロデュースのお蔭様である。感謝感謝。


 明日の楽日公演が本日公演と同じ水準で演奏されることを祈ります。

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新国立劇場「くるみ割り人形」イーグリング新振付2017.10.28, 11.03, 11.04批評(No.2539)

2017-11-06 20:43:57 | 批評

チャイコフスキー音楽の「優美さ」「華麗さ」を最大限に生かしたイーグリング新振付新国立劇場版「くるみ割り人形」


 新国立劇場バレエのシーズンオープニングの季節到来。昨年は新規の振付作品が1つも無いシーズンだったが、今年は「くるみ割り人形」をイーグリングが新振付する、とのことなので、足を運んだ。
 大原永子芸術監督になって最初の演目が、イーグリング改訂振付の「眠れる森の美女」で、音楽重視の振付で好感が持て、初演時も再演時も観た。今回は「改訂振付」でなく、「新振付」なので制約無しにイーグリングの思うように制作される、と思われるので期待大。


 「くるみ割り人形」は主役女性が3名、男性4名(公開公演日)と言う多彩なメンバーが踊る。営業は、会員発売日の前に「高校生団体」を埋め、その残りを売る、が「新国立劇場オペラ」との違い。オペラは、会員発売 → 一般発売 で売れ残っていた券を学生団体に売り込むが、バレエは「学生団体の残り」が会員と一般の発売である><


  1. 3日の 米沢唯クララが3日の公演、共演者は 井澤駿 が1日、ムンタギロフ が2日、3日共団体無し


  2. 28日の 小野絢子+福岡雄大 組が2日の公演、当日3階に男子高校生団体が中央ブロックにのみ


  3. 4日の 木村優里+渡辺峻都 組が1日の公演、2階から4階にチラシには「1部」と記載されていたが、女子高校生団体(複数校)が『大半』を占領



 これが営業の見た「人気度」であり、おそらく正確。序曲開始前に会場を見渡した時の私高本の期待度もこの通りで 3日昼 > 28日 > 4日 であったことをここに記す。
 私高本は、バレエも「音響優先」で席を選び、オペラほどカネを掛けない。28日 3-R1-3, 3日昼 4-4-30, 4日 4-L1-3 であった。28日は右奥が見えない、4日は左奥が見えない、拠って右手前端の「クララの寝室」が見えない日で始まり、左手奥の「ドロッセルマイヤー邸」が見えない日で終えた。4日は3日に既に真正面から舞台を見た後だったので、情景が思い浮かんだが、28日は何が起こっているのか、過去の振付から想像するしか無かった。初日に正面席で観ておく方が良かった気もする。(初めから2日以上観る気でチケット購入しているのだから)


 まず、振付から。冒頭に記載通り、「優美さ」「華麗さ」を最大限に生かしている。別の見方をすれば、「速さ」「ダイナミックスさ」はそれほどは求めていない。 チャイコフスキー音楽は、「優美さ」「華麗さ」を求めている曲に感じるので、イーグリングの振付はとても説得力が高い。
 バレリーナ登場前の序曲で、チェロとコントラバスが「完全にお休み」の曲である。「軽やかに」「浮き浮きとするように」「雲に乗ったように」が全曲のテーマ、とイーグリングは捉えている。私高本は感服した! 同じチャイコフスキーバレエでも、ドロドロした「白鳥の湖」とは違う曲想なのである。
 速さをそれほど求めていない、と言っても、「ドロッセルマイヤーの手品シーン」などは素早く魅せるし、後述するが「アラビアの踊り」ではスピードの要求が高い水準で求められている。比率の問題である。
(後日に連載致します。しばらくお待ちください。)
 コールドバレエ(群衆役)の衣装も重厚で、ドロッセルマイヤー家のクリスマスパーティーが「貴族の集い」の雰囲気を醸し出す。舞台の切り替えも素早く、好印象。第1幕幕切れから第2幕冒頭で、気球を使って移動する、と言うのも、高低差を巧みに生かした舞台作りである。勿論、コールドバレエよりも主役陣、脇役陣の方が豪華な衣装である。
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