モーツァルトの意図を曲解した ケントリッジ演出。舞台だけでなく、音色もモノトーンの暗い暗い「魔笛」
ヨーロッパで人気がある(と宣伝していた)「ケントリッジ演出 魔笛」。ケントリッジの「魔笛観 = 暗いモノトーン」は演出のみならず、音楽をも配下に従え、十全に表現された。それは、「魔笛」を弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421 や弦楽五重奏曲第4番ト短調K.516 のような「統一感」を意味する。指揮者 = ローラント・ベーア は、ケントリッジ意図通りに水墨画のような音の世界を紡ぐ。ヨーロッパから連れて来た3名の男声ソリストは揃いも揃って響きの乏しい声であり、ザラストロ役 = ヴェミッチ だけは声量があったが、後の2人は パミーナとのデュオ、パパゲーナとのデュオ で完全に声量が負けていた。新国立劇場創設以来の全ての「魔笛」公演を聴いたが、はっきりこの日が最低であった。