Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

上野優子「故郷へ馳せる思い」シリーズに期待する(No.1743)

2010-04-28 22:16:37 | 批評
 4/24(土)に聴いた 上野優子 は、次に「5回シリーズ」で「故郷へ馳せる思い」シリーズ を同じ カワイ表参道「パウゼ」で開く、と予告していた。

第1回 = 11/25(木)


である。
  会場もピアノも固定され、今まで以上に安定した環境で連続演奏会が開催できる環境が整えられたことは、上野優子 にとって大きなプラスになるだろう。ホールが変わり、ピアノが変わることにより、ピアニストがいかに大きなプレッシャーとストレスを受けるかについては、私高本が主催する演奏会だけで十二分に経験させてもらって来ているからである。上野優子 も「表参道」と言う日本を代表する土地にて、「My Space & my Piano」で演奏会を開けるようになったことは、本当に喜ばしい限りである。第1回曲目は発表された。

  1. ハイドン : ピアノソナタ ホ短調 Hob.XVI/34

  2. シューベルト : 即興曲集 作品90 D899

  3. ボルトキエヴィッチ : 4つのラメンテーションとコンソレーション 第1巻

  4. バーバー : ソナタ 作品26


 う~ん、唸った。

 ボルトキエヴィッチの曲は知らない。「ボルトキエヴィッチ布教者 = 上野優子」が弾くのだから楽しみだ! 他の3曲が(私高本にとって)圧巻。 全て名曲中の名曲だからだ。だが、人気曲と言えるのは「シューベルト : 即興曲集 D899」だけだろう。ハイドンとバーバーは、「知る人ぞ知る名曲」である。ハイドンにはもっと有名なピアノソロ曲が何曲もある。バーバーも「スーヴニール」の方が有名だろう。第1回が大成功になり、第5回までが万全の状態で完遂されることを祈る。 上野優子の冴えが聴ける5回シリーズになる予感がしてならない!!!
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上野優子ピアノリサイタル 批評(No.1742)

2010-04-27 19:07:57 | 批評

「技巧の冴え」が支える抒情性


  これまで「ロシア音楽」をメインのレパートリーに演奏&録音を聴かせてくれた 上野優子 が「日本ショパン協会例会」にて、「パリ」をテーマにした演奏会を開いた。(2010年4月24日、カワイ表参道「パウゼ」)

  1. モーツァルト : ロンド イ短調K511

  2. ラヴェル : ソナチネ

  3. ファリャ : 「ベティカ幻想曲」

  4. ショパン : 練習曲集作品10 全曲


と言うプログラムで、アンコールは

  1. ボルトキエヴィッチ : プレリュード第7番

  2. ショパン:幻想即興曲


であった。


 上野優子 の最大の魅力は「技巧の冴え」。ファリャの同音連打の燦めきの連続や、ショパン「練習曲集」が全く難しさを感じさせずに「音楽」だけに集中される。ファリャは(日本では)取り上げられる頻度が高く無い作曲家の1人だが、上野の演奏を聴くと1人でも多くの人に聴いてほしい作品。スペイン情緒が「これでもか!」と言うほど内から溢れ出て止まらない音楽作り。「ギターを模したピアノ」は、運動性が信じられないほど必要であり、上野でなければこの曲の魅力は伝えられないのかも知れない。
 ショパン「練習曲集 作品10」では、第8番から演奏にひときわ「ノリ」が良くなり、プログラムラストまでとアンコール2曲は、推進力の強さはひときわであった。中でもアンコール1曲目の ボルトキエヴィッチ:プレリュード第7番 は、白眉の演奏!

 配布される「プログラムノート」も全て 上野優子 が書いた上に、アンコール1曲目前には挨拶もあり、才色兼備の若手ピアニストとして今後の活躍が大いに期待される。本年11月25日(木)から「5回シリーズ」で開始されることもアンコール時に発表された。毎回、ボルトキエヴィッチ の曲が全5回に配されるプログラムとのこと。これは本当に楽しみでならない。(会場は今回と同じ カワイ表参道「パウゼ」)
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東京ニューシティ管弦楽団第67回定期演奏会 批評 2(No.1741)

2010-04-17 23:49:01 | 批評
 「続き」を書くのに、ベートーヴェンの新版スコア(私が読み込んだのは「ベーレンライター新版」)を読んだ上で、「同じ東京芸術劇場で響きを確かめたい」と考えた。ベートーヴェン「第9」は、『時期外れ』なので当分(12月まで?)見込めないので、「ウィーン古典派」の演奏会を探したところ、「本日 = 4/17 ホーネック指揮読響 芸劇マチネ」があり、運良く聴けた。これで万全に批評が出来る!


言行完全一致の原典派指揮者 = 内藤彰


である。内藤彰の「学究派指揮者」の面目躍如。「テンポ」「弦楽器奏法」「音程の正確さ」の3点は見事なまで再現された。
 「学究派演奏家」の1つの特徴として、「興味薄い点にはあまり気を遣わない」人が多い。

内藤彰「ベートーヴェン 第9」を語る


を読んで、私高本が感じたことの1つは

「ホールの響き」によって、テンポは変わるのではないか?


と言う疑問である。演奏家は「響き」を確認しながら音楽を作る。「テンポ」について断言してしまって良いのだろうか? と言う素朴な疑問である。なぜなら

楽譜に神経質なほど「メトロノーム指示」と「演奏時間」を書き込んだバルトークでさえ、実演奏時間は違っている!


ことを録音から知っているからである。

ベートーヴェンが「脳内で想定したメトロノーム速度指示」は、ベートーヴェンが知っているウィーンのどこかの演奏会場を前提としている


と考えるのが自然。東京芸術劇場をベートーヴェンは知るはずもない。残響時間は1階前方席や2階サイド席では充分に余韻が残るホールである。同ホールで ほぼ同じ12型編成で ホーネック指揮読響「モーツァルト」を聴いて確認した次第である。
 結果として「内藤彰は、テンポはベートーヴェンオリジナルを実現した」演奏となった。これは、「言うは易し、おこなうは難し」である。脱帽するばかりだ。


 但し、学究派指揮者 = 内藤彰 があまり興味を示さなかった点は以下の通りだったと感じる。

  1. デュナーミクの広さ

  2. リズムの正確さ

  3. アーティキュレーションの再現


 これら3点に優先して、「テンポ」「弦楽器奏法」「音程」を重視した演奏を徹頭徹尾聴かせてくれた。
 内藤彰 の演奏は「速い!」が最大の特徴であり美点。快速なテンポで、かつ弦楽器に全くビブラートを掛けないので、「デュナーミク」が聴感上大きくなり難い。また「アーティキュレーションを細やかに表出するタイプの演奏家 → テンポはやや遅め」の傾向も顕著。すると、上記3点は「私高本の無いモノねだり」なのかも知れない。
 しかし、第1楽章冒頭の「ピアニッシモのホルン5度」の上を、「第1ヴァイオリンがピアニッシモで降りたって来る」情景が「メゾフォルテ」に聞こえたり、第2楽章序奏8小節がフォルティッシモで轟いた直後に、第2ヴァイオリンがピアニッシモで主題を鳴らす箇所が f → mf に聞こえたりするのは残念でならない。「テンポ」「ノンビブラート奏法」「音程」の3点以外にももう少しだけ「デュナーミク」などにも気を配ったら、さらに多くの感動を惹き起こせたことだろう!


 テンポについては、「ベートーヴェンの意図通り」が99%実現したように聞こえた名演である。全曲を通して、2ヶ所だけのキズ。

  1. 第4楽章第175小節の「テノールソロ」の出だしで、福井敬 がいきなりトロいテンポで歌い出した!

  2. 第4楽章第730小節から、合唱が6拍目が前に出て来てテンポが遅くなった


 1点目は 福井敬 は、この公演の「テンポの重要性」を理解していないように聞こえた。他の3名のソリスト、特に バリトン=河野克典 は「ベートーヴェンの通りのテンポ」でソロ冒頭を歌っていたのと対照的! キャスティングミスのように私高本は感じた。福井は「朗々と歌う第9」向きである。
 2点目は 内藤彰の解釈なのか? フーガで疲れた合唱がテンポを遅くしたのか? わからない。他の箇所がどんなに難しい箇所でも全てインテンポで演奏されていたので、不思議に感じた次第である。


 先駆者は全てを1度に刷新することは難しい。「テンポ」「ノンビブラート奏法」「音程」に十全に表現した 内藤彰 + ニューシティ管「第9」は、先駆者として偉大な足跡を遺した。次に「第9」を演奏する時は、さらに上の演奏を聴かせてくれることが期待できる。私高本は楽しみでならない。
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東京ニューシティ管弦楽団第67回定期演奏会 批評 1(No.1740)

2010-04-10 20:27:59 | 批評

言行完全一致の原典派指揮者 = 内藤彰



「作曲家の意図」の忠実な再現を目指すを公言している指揮者 = 内藤彰


が「最も力が入っている作曲家の1人」がベートーヴェンであり、ベートーヴェン交響曲中「原典版演奏」が最も映えるのが「第9」である。私高本は「第9狂」であり、多い年は 20回/年 くらい「第9」を聴いた。今もどんなに少なくとも「第9」演奏会を聴かずに年を越すことは決して無い! 大いに期待して池袋の東京芸術劇場に足を運んだ。


 内藤彰 の主張は明快。

  1. テンポを「ベートーヴェンオリジナル」に戻そう!

  2. 弦楽器の奏法を「ベートーヴェン当時のノンビブラート奏法」に戻そう!


である。使用楽譜は

ブライトコプフ新版(2005)


である。何と

ベートーヴェン「第9」ブライトコプフ新版世界初演 = 内藤彰 2005.12.29


だったとのこと。「第9狂 = 私高本」が聴き落としたのは痛恨の極みだった。内藤彰  + ニューシティ管 の再演なので、全てのスケジュールに優先して聴きに行った。


 まず「第9」の演奏について。

  1. テンポ設定については「ベートーヴェンオリジナル」が再現出来た

  2. 弦楽器ノンビブラート奏法は全4楽章を通して徹底され、透明な音色が聴けた


 第1~第3楽章も「速いテンポ」ではあるが、特に耳新しいのは第4楽章であり、「曲が生まれ変わったか?!」に聞こえるほどである。古楽器系(オリジナル楽器系とも言う)の指揮者でもここまで徹底する人は少なく、私高本が聴いた限りでは、第4楽章第2主題のテンポが徹頭徹尾ここまで速く「通して」演奏されたことは初めてであった。「ベートーヴェンの意図」がしみじみと伝わって来た瞬間でもあった。

 上記2点以外にも、大きな美点があった。

弦楽器と合唱の音程が極めて正確!


なことである。「ノンビブラート奏法」は「音程の粗」が目立ちやすいのが欠点であり、古楽器オケが苦労している点である。もちろん、モダン楽器オケも苦労している。ニューシティ管の弦楽器の音程の安定さは、賞賛に値する!
(続く)
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晩年の名作 D916B+D916C の本来の姿 3(No.1739)

2010-04-01 23:39:48 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
そう言えば「交響曲 ニ長調 D936A」も、1951年当時は「D615」に分類されていたことを思い出す。

原稿はあるが、どのように分類すればいいのかわからない資料、が多数存在


と言う状況。 D916B+D916C も、「後世の分類を待つ身」だったのである。
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