ベーレンライター新シューベルト全集「記載通り」の組合せで演奏する 佐伯周子
これまで出版された「シューベルトピアノソナタ全集」で信頼に足るものは以下の通り。(新しい順)
ベーレンライター新シューベルト全集(1996-2003)
ウィーン原典版(1997-1999)
ロンドン王立音楽院版(1979-1980)
ヘンレ版( -1976)
ウニヴェルザール版(1953)
ペータース版
ブライトコプフ旧シューベルト全集(1888-1897)
上記7つの全集中、「最後まで作曲されていない楽章」を掲載したのは、「ベーレンライター新シューベルト全集」「ウィーン原典版」「ロンドン王立音楽院版」「ヘンレ版(第3巻)」「ブライトコプフ旧シューベルト全集」。「ウニヴェルザール版」はD840 と D625のみ収録、ペータース版は一切収録していない。
収録楽章組合せに関しては、ヘンレ版 = ロンドン王立音楽院版 = ウィーン原典版
つまり、ヘンレ版第3巻編集者 = バドゥラ=スコダ の判断をそのまま受け継いだだけなのである。果たして、『1976年にバドゥラ=スコダが下した判断』は現在でも正しいのか?
2月4日に 佐伯周子 が弾く曲を「ベーレンライター新シューベルト全集」の序文を読んで見よう。
ピアノソナタ ハ長調D279 のベーレンライター新シューベルト全集の序文
メヌエット イ短調D277A は、初期ヴァージョン(断定している)。1815.10.16 の日付を持つ6小節だけの D309A、D346 の2つの異なったフィナーレが残された。
ピアノソナタ ホ長調D459 のベーレンライター新シューベルト全集の序文
2つ目の楽章は第142小節で途中で作曲が中断されている。(展開部の終わり)
無関係な D459A の3つの曲(= 楽章)と組み合わされて出版された。
メヌエット イ短調D277A のベーレンライター新シューベルト全集の序文
メヌエット イ短調D277A は、初期ヴァージョン(断定している)。
ロンド ハ長調D346 のベーレンライター新シューベルト全集の序文
シューベルトは、2つの異なった「メヌエットトリオ」 と 「終楽章ロンド」 を残したソナタを遺した。
ピアノ小品 イ長調D604 のベーレンライター新シューベルト全集の序文
1816年9月作曲の 序曲変ロ長調D470 の「弦楽四重奏曲用スケッチ(日付無し)」の余白に記載されている。
ピアノソナタ 嬰ハ短調D571+D570 の中間楽章と唱える輩がいる
用紙は 1815-1816 のみに用いられた紙。
以上である。
新シューベルト全集 は、ヘンレ版第3巻 の組合せを D459 に関しては完全に否定している!
ちなみに、1816年作曲のピアノソナタは ホ長調D459 だけである!!!
メヌエット イ短調 D279/3 と D277A 主部の比較、どちらが「初期稿」か???
バドゥラ=スコダ(ヘンレ版第3巻校訂)
ファーガスン(ロンドン王立音楽院版校訂)
ティリモ(ウィーン原典版校訂)
ゴルトベルガー(ベーレンライター新シューベルト全集校訂)
の誰もが書き残していない「メヌエット主部」徹底比較を実行した。
D277A の方が D279/3 よりも、2小節長く、デュナーミク指示も細やか、「繋ぎ目」もしなやか
疑問を感じられた方は、「ヘンレ版第3巻」または「ウィーン原典版」を購入してご自分で弾いて確認して頂きたい。尚、ロンドン王立音楽院版 は、「D277A メヌエット主部」を掲載していないので、購入しても無駄である(泣
(ベーレンライター新シューベルト全集は、確認するだけにはあまりにも高い>< ) 2小節長さが違うのだが、ロンドン王立音楽院版は、何で掲載しなかったの(爆涙
普通に考えて、「D277A の方が決定稿」だと私高本は感じる。特に「繋ぎ目」ははっきり上。尚、この曲(=D279)は、第1楽章と第2楽章には「別稿」が無い。すると、第3楽章と第4楽章は「別用紙に書かれた方が最終稿」になる、が論理的。いかがでしょうか?