Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1813)

2011-03-25 23:09:37 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)

「国民楽派」はチェコで生まれ、ヨーロッパ中に敷衍して行った


 ショパンが亡くなった1849年頃までのヨーロッパは、ドイツやイタリアは「弱国」だった。「フランス」や「ハプスブルク家オーストリア」になるように小さな領主たちが競い合っていた。まず、イタリアが1861年に不完全ながら「イタリア王国」として成立する。次いで1871年に(後世「第2帝政」と呼ばれる)「ドイツ帝国」が成立する。
 「イタリア王国」成立の数年前から、ヨーロッパの弱国の民族の「血」が徐々に騒ぎ始めた。強国は「フランス」「オーストリア」「イギリス」「ロシア」くらいなので、「弱国」は多い(爆

イタリア統一の際 → ヴェルディ「ナブッコ」


ドイツ統一の際 → ワーグナー



が音楽的象徴として掲げられ、実際に統一されていった。イタリアは「オペラの中心地」であり、古くから「オペラはイタリア語」が当たり前だった(モーツァルトもイタリア語で作曲したオペラの方が、ドイツ語作曲よりも多い)が、ドイツ語オペラで「大ヒット」を飛ばし続けたのはワーグナーが初めてであった。(ウェーバーは「魔弾の射手」で大当たりを取ったが、「一発屋」に近い)

 ・・・と言う時期に、スメタナは(生まれつきはドイツ語しか話せなかったのにも関わらず、努力してチェコ語を習得し)「チェコ語オペラ」に没頭した。その第2作が「売られた花嫁」である。主役男声=ヤン は生い立ちが悲惨なのだが、機転の利く明晰な頭の持ち主で、最後はハッピーエンドで幕を閉じる。「元気出るオペラ」であること間違いなし!
 1863年作曲で1866年プラハにて世界初演、スメタナは何度も改訂に改訂を重ね、現行版に至る。「売られた花嫁」は「チェコ民族の魂」に火を点け、何度も何度も再演を重ねたので、スメタナも「さらにより良いオペラ」にしようとした結晶である。1872年から、連作交響詩「わが祖国」を作曲し始める。第2番「ヴァルダヴァ(モルダウ)」が超ヒット作となり、チェコ民族の「民族意識」が高まるきっかけとなる。この辺りは、ワーグナーとの近似性を感じる。


 ドヴォルザークは、「スメタナの指揮」でオーケストラで演奏した経験がある。まだ修業時代のことだ。ドヴォルザークの若い日の力の入った作品は「交響曲と弦楽四重奏曲」。交響曲は第5番まで、弦楽四重奏曲は第8番までを「ブラームスから認められる」前に作曲完了している。交響曲は9曲、弦楽四重奏曲は14曲作曲したので、過半数を占める。
 「ブラームス賞賛以前のドヴォルザーク」は、(おそらく大半のクラシックファンのドヴォルザーク観とは違い)「ベートーヴェンとシューベルト指向の巨大ソナタ楽曲指向」である。「ポルカ」「ドゥムカ」「フリアント」などの「スラブ舞曲」がスケルツォ楽章の替わりになるのは、「ブラームスに認められた後」の作品だけである。
 「ブラームスから認められる」前の13曲の交響曲と弦楽四重奏曲を聴くと「チェコ民族の血」は全く聞こえて来ない。「ベートーヴェンを越すぞ! シューベルトを越すぞ!!」と言う若人の熱血だけを感じる。


 そんな時に、「モラヴィア2重唱曲」で、ブラームスから絶賛を受けた。コンクール提出作品なので、自信作だったのだろうが、「世界的大作曲家=ブラームス」から大絶賛を受け、大都市=ベルリンの出版者=ジムロックを紹介された。1877年のことである。(ドイツが統一された6年後だ)
 ジムロックからは「待望の委嘱作品」が来た!

 ・・・が、「交響曲と弦楽四重奏曲のどちらでもない」のだ。そう、「ブラームス作曲ハンガリー舞曲に匹敵するピアノ連弾舞曲集」だった。ピアノ曲は既に「ピアノ協奏曲ト短調作品33」を作曲いていたほど楽器は熟知していたが、依頼されたのはピアノ協奏曲でもピアノソナタでもなく「連弾舞曲集」だった。おそらく困惑したことだろう。「ハンガリー舞曲集続編」を作ることは、ドヴォルザークの作曲技巧からすれば可能だった、と推測するが、それでは「ブラームスの2番煎じ」になる。2番出しのお茶は渋いばかりでおいしくないからなあ(爆


 依頼を受けて、約半年後にジムロックに提出したのが「スラブ舞曲集第1集」作品46の8曲。

ドヴォルザーク「スラブ舞曲集」は、ブラームスと違って隣り合う「踊りの種類」が全部異なる


のが新機軸。さらに(ジムロックの基盤=ドイツの音楽ファンから見ると)異国情緒にあふれた名作揃いであった。その上、(ジムロックが気付いたかどうかは全く不明だが)地元プラハで大評判で再演を重ねていた スメタナ「売られた花嫁」 から、「スコチナー」を引用した第5曲も混ぜておいた。
 楽譜は売れまくるわ、地元プラハでは「管弦楽版が楽譜出版前に世界初演される」わ、の大賑わいとなった。ドヴォルザークの狙いは当たったのである!
 ドヴォルザークの名誉のために、補足しておく。「器楽曲はベートーヴェン&シューベルト指向」であったが、「声楽曲はチェコ語の響きを重視」して作曲していた。ブラームスが高く評価したのも声楽曲。「後半の交響曲と弦楽四重奏曲」は、チェコ風味がたっぷりと振りかけられ非常に人気の高い曲が多い。スメタナと並んで「チェコ国民楽派の創始者の1人」である。
 スメタナとドヴォルザークは互いに影響を与えながら「チェコ国民楽派の創始者」となった。「売られた花嫁」から始まった「チェコ国民楽派」音楽は、

「チェコ舞曲集第2集」で最もチェコの人々を細やかに描いた。


 ドヴォルザークの「スラブ舞曲集第1集」は「ドゥムカ(おそらくウクライナ地方の踊り)」を含んでおり、もっと広範囲の「スラブ」を描いたのと対照的に「チェコ」だけを描いたことが スメタナの真骨頂 である。


 実は、

本日の原稿は、「下野竜也+読響のドヴォルザーク交響曲全曲演奏」(現在進行中)で、演奏から教わったことばかり


である。
 プログラムノートとかではない。「読響の音」から教わったことばかりである。第6番の「チェコのにおいぷんぷん」は未だに忘れられないほどの名演であった。(ティンパニ首席の定年退官の日と重複していたことも印象深い)
 そう、「国民楽派」って、「スメタナ + ドヴォルザーク」から、ヨーロッパ中に拡散したのだった。「ノルウェーのグリーグ」に。「ロシアの5人組とチャイコフスキー」に。スペインにも行ったね!
 3/28の「佐伯周子のスメタナ」は面白いよ。

  1. 声部進行
  2. ダイナミクスの巾広さ

が尋常でない。
 ここだけの話だが、練習用ピアノのペダルを壊したほど、(機械的なペダル水準を越えた)細かなペダリングを延々と続けている。「浅過ぎる」のが根本原因だろう。「ハーフペダル」を要求する「スメタナの楽譜」と、「そこまで細かく踏むな!」の楽器の間で悶絶していたようだ。ここまで突き詰めないと「スメタナ音楽」は十全な演奏にならないのだな!(泣
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スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1812)

2011-03-24 21:34:58 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)

なぜスメタナ「チェコ舞曲集第2集」は演奏頻度が極端に低いのか?


  『スメタナ4大名曲』の1つであるにも関わらず、「売られた花嫁」「わが祖国」「弦楽四重奏曲第1番」に比べても、ほとんどと言うよりも「全く」演奏されない理由を直言する。ご覧になって「よーし、チェコ舞曲集第2集を私も弾くぞ!」と言うピアニストが1名でも出てきてくれることを祈るばかりである。

  1. 楽譜が入手し辛い


      佐伯周子に「チェコ舞曲集第2集の原典版楽譜買って来て!」と言われて、多摩川を越えて東京に楽譜買いだしに行った時のことだ。銀座の有名楽譜店2店とも品切れ。本郷の有名輸入楽譜店では「新版品切れ、旧版在庫」の状態だった。事前にインターネットで版の新旧を確認してあったので、一瞬買おうか? と迷ったが、表参道の楽譜店に行った。1冊新版(2007)があったので即買った。東京でこの状態なので、川崎で買えるわけないだろう。横浜(日本第2の人口の都市)でも無理だろうな(泣

  2. 原典版楽譜なのに「校訂者」の意見が押し付けがましく押し出されている


      基本的には2011年現在2種類の楽譜しか流通していない。「ベーレンライタープラハ新版」(2007)と「スプラフォン旧版」とそのリプリント版(米マスターミュージック版)である。「ベーレンライタープラハ = 旧スプラフォン」なので、同系統の楽譜であり、印刷の鮮明さなどを除くと、(詳細を調べていないので断言はできないが)差の小さい楽譜である。新版も旧版も原典版楽譜なのだが、シューベルトやモーツァルトの原典版楽譜を見慣れている私高本の眼からすると、信じられないほど多量の「校訂者書き込み」が『楽譜上に直接書き込まれている』のが特徴。スメタナが「ff持続」と指示している箇所で(ピアニストの負担を軽くするためか)「f に落とせ」の指示が何回出てきたことか! 無用なペダル指示もあまりに多い。これが原典版楽譜と言えるかどうかは私高本は判断する立場に無いが、シューベルトやモーツァルトの原典版楽譜とは「全く異なる風景」が書かれていることだけは間違いない。

  3. 「決定的名演」録音が存在しない


      「シューベルト後期のブレンデル」とか「ショパンエチュードのポリーニ」のような「模範演奏」がどこにも存在しない。私高本は3種類の2011年現在カタログ上で生きている「チェコ舞曲集第2集全曲録音盤」3種類全部持っており聴いているが、どれもがスメタナの意図通りには演奏していない。「ピアニズムの難所ではピアニストの技巧水準まで下げての演奏」になっている。このCD聴いては演奏意欲は湧かない。私高本は少なくとも全く湧かない。佐伯周子 の楽譜の読みの深さには感心するばかりだ!

  4. リスト並みの超絶技巧を要求される


      リストのピアノ曲、と言っても「愛の夢」第3番とかではない。「超絶技巧練習曲」とか「ロ短調ソナタ」とか「巡礼の年」とかの超絶技巧を要求される。特に「声部進行の明確さ」。「縦の線」よりも「横の線」の方が大事な作品なのだが、多くの演奏(モラヴェッツ以外は全てかも知れない)では、声部進行はほとんど聞こえない。リスト作品のCDカタログでは見たことないピアニストだからだろうか? リストでこんな「ベタッ」とした演奏したら、評判にならないぞ! あぁ、だから「チェコ舞曲集第2集」CDは評判になっていないのか、、、

  5. 全曲が長く、プログラムの半分以上を占めてしまう


      これは「演奏会プロデューサー」としては最も困るところ。「チェコ舞曲集第2集」全10曲を演奏してしまうと、残りの半分弱の印象が弱くなってしまうのだ。バッハでもベートーヴェンでもショパンでも。こうなると「マーラー交響曲第3番」のように、1曲でプログラム全部を占有してくれた方がむしろありがたい。ブルックナー交響曲の第1番とか第6番がこのパターンで演奏頻度が低い。

 名曲であるにも関わらず、これだけ困難がある曲を弾いてくれる佐伯周子には感謝するばかりである。尚、今日も3本「3/28の佐伯周子リサイタルは実施しますか?」の電話を頂戴したが、上演します。18:30開場、18:45プレトーク、19:00開演です。当日券あります。(尚、暖房を節電のため弱くしますので、寒がりな方はマフラーやコートを着たまま聴いて下さい。お願いします。)
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スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1811)

2011-03-23 10:49:01 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
 「チェコ舞曲集第2集」の各曲について。

  1. フリアント


      「ポルカ」と並ぶチェコを代表する踊りで、ドヴォルザーク も愛用した舞曲。交響曲第6番作品60第3楽章にまで用いられたほど! 男性的力強さが魅力。「チェコ舞曲集第2集」全体が「3拍子と2拍子のリズム交錯の魅力」にあふれているのだが、「フリアント」では、長い序奏が終わった直後から「リズムの交錯」がきらきらと輝いているかのよう。名作の出だしにこだわり、全10曲中、唯一短調の曲だが、終結では長調に転調して輝かしく終わる。

  2. ちっちゃなめんどり(スレピチカ)


      ボヘミアの田舎村で放し飼いの ちいさな鶏(雌)が群れで「コケッコッコ」とさえずりながら、のどかにエサをついばんだり取り合ったりしている情景を描いたかのような「メンデルスゾーンに匹敵するか超越した情景画」の1曲。

  3. からす麦(オヴェス)


      これは民謡「からす麦の種を播いた」を元歌にした曲。日本では「田植え歌」が各地に残っているが、チェコでも「麦植え歌」があるようだ。麦収穫の情景なども描かれる。穏やかな曲想が続く中で、農民が一斉にステップを揃えて踊り出すシーンもある。

  4. 熊(メトヴェット)


      昔のチェコにはお祭りの時に「熊を連れた興行師」が田舎まで廻っていました。その熊は後ろ足で器用に立って踊りを踊れるように訓練を受けていました。日本の「猿回し」のようですが、スケールが大きいですね! 熊のユーモラスなそれでいて重量感たっぷりの動き、田舎のお祭りで子供たちが騒いでいる様子などが、それは生き生きと描かれている! 尚、熊についての民謡「君とは結婚しないよ。だって君は熊にそっくりだから」「熊の足は毛むくじゃら。お前の心はきれいじゃない」なども引用されている。

  5. 小さなたまねぎ(ツィプリチカ)


      たまねぎに関する民謡を引用した曲で変奏曲形式になっている。穏やかなテーマから思いもよらぬ轟きも聞こえてくるが、終結では「・・・とあったとさ」と、爺様がむかしばなしを語り終えるかの口調となる。

  6. 足踏みダンス(ドゥパーク)


      後半の開始部であり、ここから1曲毎に技巧的で激しい曲と穏やかな曲がコントラストを付けながら終曲(=第10曲)まで一気に「スメタナの世界」に聴き手を引きずり込む。
     前半5曲に無かった「極めて速い かつ 力強い」歯切れ良い序奏があっという間に終わると、テンポを落とさずに主要主題が出てくる。片足づつ力強く「足踏み」するのがはっきり聞こえるように スメタナ は作曲しているのだが、テンポがやたら速いので、演奏家の腕の店どころである。めくるめく次々に変奏されるが「足踏み」は激しさを増すばかり。途中2回出てくる寂しげな副主題との表情の違いが大きい。

  7. 騎兵隊(フラーン)


      チェコで今でも人気ある民謡「騎兵隊の恋人がいたのよ。私は彼が大好きだったの。」がほぼ原型で主題となっている変奏曲。全曲中、最もロマンティックな曲想。それでいて、変奏技巧は リスト を目標にしている!

  8. オプクロチャーク


      この曲も民謡を主題とした変奏曲だが、変奏主題自体が「女声と男声の掛け合い」になっているのが最大の特徴。変奏曲でもこの「掛け合い」がそのまま生かされて変奏されるのが、技巧的に難しく派手。リスト「ハンガリー狂詩曲」を思わせるフレーズが長く続くのも魅力。

  9. お隣の踊り(ソウセツカー)


      「お隣」が「家」を指すのか? 「村」を指すのか? 「国」を指すのか? 諸説ある曲。但し、スメタナ「チェコ舞曲集第2集」の前年に作曲&出版された ドヴォルザーク「スラブ舞曲集作品46」について、ドヴォルザーク が語っているところだと「隣国=オーストリア」から伝わった踊りで「レントラー」だと言う。シューベルトは「ウィーンの貴婦人レントラー」作品67 を残している。ウィーンから伝承して来た「都会プラハの舞踏会」情景なのかも知れない。全10曲中、最も優美で都会風。

  10. 跳躍ダンス(スコチナー)


      「飛び上がる(跳躍)」がスコチナーの特徴。オペラ「売られた花嫁」から ドヴォルザーク が「スラブ舞曲集第1集」で高く評価して取り上げたのも「スコチナー」。スメタナは「チェコ舞曲集第2集」を結ぶに当たり、「スコチナー」でチェコがこれからさらに高く飛躍することを願った。終曲ではリスト風にテンポと音量を最大限に上げて全曲を締め括る。
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スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1810)

2011-03-22 21:37:01 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
 「チェコ舞曲集第2集」の前に「チェコ舞曲集第1集」が作曲されている。2年前の1877年だ。「第1集」はスメタナが生涯を賭けて作曲を続けた「ポルカ」が4曲で構成されており、『スメタナ作曲ポルカの最高傑作』の評価が高い。中でも、第2曲と第3曲は名曲の誉れが高い。sの「チェコ舞曲集第1集」が完成した後もスメタナは「わが祖国」後半の作曲を続けていたのだが、翌年1878年に大事件が起こる。

ドヴォルザークが「スラブ舞曲集第1集」作品46第5番「スコチナー」にて、スメタナ「売られた花嫁」をそのまま引用した!


のだ!
 ドヴォルザーク は スメタナ より17才若い同じチェコの作曲家。スメタナ はリストと親交が篤く「新ドイツ派作曲家」の1派と見なされていた。リスト が開発した「交響詩」を主力に作曲し、ついに

交響詩の最高傑作 = 「わが祖国」作曲途上で第4曲「ボヘミアの草原にて」まで作曲&初演済みだったスメタナ


が、1878年瞬間である。
 一方、ドヴォルザーク は読者の皆様がご存じの通り、「ブラームス直系の保守派作曲家」として世に出た。ベルリンの「ブラームスお抱え出版者 = ジムロック」から新作を出版してもれるように口を利いてもらったのが、1877年。

ベルリンのジムロックからの「委嘱作品第1号 = スラブ舞曲集第1集作品46」だった


のだ!
 それまでも、地元=プラハ では、大作曲家の1人として扱われていた ドヴォルザーク だが『世界的大作曲家委嘱作品第1号』は力が入った。その「スラブ舞曲集第1集」全8曲の内、唯一「他の作曲家からの引用」をしたのが、「スメタナの売られた花嫁」なのだ。
 ドヴォルザーク「スラブ舞曲集第1集」は超有名なように「ブラームスのハンガリー舞曲集」を手本にしながら(ジムロックの委嘱条件!)、「5つの曲名」を使い分けた。

  1. フリアント(1番&8番)


  2. ドゥムカ(2番)


  3. ソウセツカー(3番&4番)


  4. スコチナー(5番&7番)


  5. ポルカ(6番)



 これは

ドヴォルザーク による「舞曲史上の大革命」


だった。
 ハイドン&モーツァルトの時代から、「舞曲集」は人気があり、シューベルト が大人気を取る。ショパン や リスト や シューマン や ブラームス も倣う。J.シュトラウス ファミリーも無限かと思われる曲数を作曲。しかし、「同じ曲種だけでつなげる」だった。
 ベルリンを中心とした「ドイツ圏」の音楽ファンは「次々と現れる異国情緒あふれる舞曲集」に心を奪われ、1878年5月のピアノ連弾オリジナル版出版と同時に爆発的人気を得た。その人気の力に押され、「全曲管弦楽版」も同年の内に出版された! (ちなみにブラームスは「ハンガリー舞曲集」の内、自分自身で管弦楽化したのは1番、3番、10番の3曲のみ)


 「チェコ舞曲集第1集」までは「ポルカの曲集」ばかり作曲していた スメタナ は、上記の通り、特に他の作曲家に比べて、時代遅れだったわけではない。リスト や ブラームス と同じ作曲法だっただけである。
 ドヴォルザーク「スラブ舞曲集第1集」の人気は、ドイツ語圏内だけでなく地元チェコでもすさまじかった。
・・・と言うよりも、プラハの方が驚喜していたようだ。「管弦楽版」が出版される遙か前の 1878年5月16日に(管弦楽化が完了していた)1番+3番+4番 だけで「世界初演」したのは、プラハだった。もちろん、スメタナ も目の前で繰り広げられた熱狂を目の当たりにした。


 翌1879年に 連作交響詩「わが祖国」作曲を完了すると、「チェコ舞曲集第2集」全10曲に没頭する。全10曲に別の名前を与え、「ポルカ」は1曲も含まなかった。
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スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1809)

2011-03-21 20:51:31 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
 スメタナが生涯の大傑作「わが祖国」全6曲を作曲した直後に作曲された曲集である。作風は(弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」とは全く異なり)

『チェコ民族の生活をありのままに音で描く』


であり、(チェコ語が全くわからない私高本が断定は出来ないが、おそらく)成功した作品。いろんな登場人物(?)がいる。地域や年齢も巾広い各種「踊り」を筆頭に、「熊」「騎兵隊」「たまねぎ」なども登場(爆

「わが祖国」を通り越し「売られた花嫁」の世界が再現!


である。

面白可笑しくてそれでいてちょっと寂しい感傷


が満ち溢れている。
 スメタナは「過去の大作曲家」を調べ尽くしたようで、頂点を「第1番」「第6番」「第10番」の3ヶ所に置いた。バッハ「ゴルトベルク変奏曲」やリスト「巡礼の年第2年イタリア」などを分析しまくったのだろう。「冒頭」「後半開始部」「終曲」にポイントを置いた。

たった1つの問題は、当該3曲が「リスト並み」の難曲になってしまったことだけ!


だが、モラヴェッツをもってしても第6番と第10番は「弾く気になれない」難曲だったようだ(泣

 ・・・で、他の7曲が「技巧的に簡単な曲」か? と言うと、全く違うのだ。「チェコ音楽コンクール2010」で佐伯周子の演奏で聴いた第7番も「聴き映え」が全く違うのだ。う~ん、相当に技巧的な曲のようだ。「第1集」に比べると、何が違うのだろうか? > チェコ舞曲集第2集


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スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1808)

2011-03-20 20:59:03 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
 スメタナと言う作曲家は「わが祖国」ばかりが取り上げられる。その意味で、ベルリオーズ や ビゼー や ムソルグスキー に近い。同じチェコの同時代の作曲家=ドヴォルザーク とは、全く違う扱いである。「わが祖国」だけに限ると、ドヴォルザーク「新世界より」と同等かそれ以上に演奏頻度が高いのだが、他の曲の演奏頻度が極めて少ないのだ。「スメタナ4大名曲」に絞って考察してみよう。

スメタナ:「売られた花嫁」


 この名作オペラに関しては、原因ははっきりしている、「チェコ語上演できる世界的歌手が極めて少ない」からだ。昔(と言っても1970年代までは)「オペラ訳詞上演」は少なくなかったので、ドイツ語圏のオペラハウスではドイツ語上演していた時代がある。録音も残っている。今も後進の指導に当たっている世紀の大歌手の フィッシャー=ディースカウ が ヴェルディ「ドン・カルロ」ドイツ語訳詞上演を DG に録音したり、2才年上の マリア・カラス が ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」の終曲をイタリア語訳詞上演で EMI に録音していた時代があるのだ(爆
 チェコ語オペラの大作曲家は、スメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェク の3名なので、これだけのレパートリーではオペラ歌手として食っていけないので、チェコ人とスロヴァキア人歌手以外はほとんど手掛けないのが実情。

「売られた花嫁」は、明るい曲想で、チェコ民族の希望を失わない陽気な気質を見事に表現した名作


なのだが、「原語上演」の壁に阻まれている(泣

スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」


 この曲は、「弦の国=チェコ」の弦楽四重奏団が頻繁に演奏するおかげで、一定のファンが付いている。名録音も多い。「わが祖国」の次に演奏頻度の高い曲である。
 弦楽四重奏曲には2つの系統がある。

  1. モーツァルト → シューベルト → ドヴォルザーク の「優美弦楽四重奏曲」路線


  2. ベートーヴェン → スメタナ → バルトーク → ショスタコーヴィチ の「私小説弦楽四重奏曲」路線



 どちらも素晴らしいのだが、「芸風」が全く異なる。「ベートーヴェン と シューベルト」や「スメタナ と ドヴォルザーク」は住んでいる街も時代も重なっていて、ジャンルによっては「近似性」を感じることもあるのだが、弦楽四重奏曲に限っていえば「スメタナ と ドヴォルザーク を混同する人は皆無」である。(「ベートーヴェン と シューベルト」も同様だ。)

 チェコは、スメタナ と ドヴォルザーク だけでなく、ヤナーチェク や マルティヌー などなど「弦楽四重奏曲の名作曲家」が目白押しなので、「チェコの弦楽四重奏団」の活躍が目覚ましい。
 ・・・が、逆に言うと、チェコ語に全く左右されない(楽譜の指示用語もごく普通に「イタリア語」で、シューマンの曲を演奏するよりも語学的には楽!)にも関わらず、チェコの団体以外には意外にも演奏&録音は少ない。「わが祖国」とは全く違う扱いだ! ドヴォルザーク弦楽四重奏曲「アメリカ」が、チェコの団体どころか、欧州の & アメリカの & 日本の 団体から演奏&録音されているのとは対照的。やはり「優美弦楽四重奏曲」路線の方が人気あるのだろうか?
 「耳が聞こえなくなったスメタナ」の苦悩の半生(← この時からまだまだスメタナは生きる!)を絶叫することはなく、描いた名作だと思う。次作第2番になると、苦悩が創作技術に覆い被さるようになってしまった感もあるのだが。

スメタナ:「チェコ舞曲第2集」


 上記2つの曲に比べてもさらに人気が薄い。私高本は1982年以降、「音楽の友」で全曲演奏会の告知を見たことが無い。全世界に3種類の「全曲盤」が現役盤であることはある。但しどれもが評判を勝ち得てはいない。
 佐伯周子の演奏を「チェコ音楽コンクール2010」で、1番+6番+7番+10番 で聴いた。1番は「モラヴェッツの超名演」があるのでその魅力の全貌を知っていたが、「6番と10番」の鮮やかな技巧による爽快感! はそれまで聴いたことの無い名演だった。審査員の皆様からも高く評価頂き、「第1位優勝」の栄誉を頂いたことに感謝!
 佐伯周子の演奏を聴くまでは「第1番だけが圧倒的な名曲か!?」と思っていたが、どうも違うようだ。

スメタナ「チェコ舞曲第2集」は、「売られた花嫁」の世界を取り戻し、さらにリストの「超絶技巧」を加えた曲集


 「神話の世界」を描いた「わが祖国」(と弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」)でスメタナが描き尽くせなかった世界が、スメタナの心に残っていた。「熊」みたいに荒々しい表情もあれば、「小さなたまねぎ」みたいにかわいらしい表情もある。
 ここだけの話だが「指の独立性」が「リストの超絶技巧練習曲」並みに保たれていないと、声部進行が不明瞭になるようだ。う~ん、これはキツい(爆

 「モルダウ」くらいの人気があれば、「リスト弾き」がこぞって弾く可能性は高いのだが、「よく知られていないから、評価はわからない」状態の「超絶技巧曲」って、誰が弾くのだろうか???
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スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1806)

2011-03-18 22:34:19 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
スメタナの「4大傑作」の1つだが知られていない。作曲順に

  1. オペラ「売られた花嫁」(1863)
  2. 連作交響詩「わが祖国」(1872-1879)
  3. 弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」(1876)
  4. 「チェコ舞曲第2集」(1879)

である。スメタナはベートーヴェンと同じく、聴覚障害が出現してしまった悲劇の作曲家の1人だが、ベートーヴェンとは異なり、「聴覚障害が出現後に器楽曲は傑作が出現し始める」のが1つの特徴。
 「わが祖国」のスケールの大きな世界だけでは描き尽くせなかった世界を弦楽四重奏やピアノで表現した曲が他の「スメタナの傑作」である。
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作曲家論 : スメタナ第1回(No.1393)

2006-10-16 19:32:50 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
1週間以上ブログを休んでしまったことについて、読者の皆様に深くお詫び申し上げます。実は


  1. シューマン 作品12~作品14&作品22 の改訂問題に悩む(← 作曲順番が特定できない!)
  2. 丁度その時「安かったから買った新譜のスメタナ」(← 私高本にはよくある行動パターン)を聴いて あまりの感動&衝撃!

で、思わず「私高本の音楽観」を再考する1週間となりました。スメタナは「わが祖国」だけの作曲家でないことだけは、私高本がここに宣言します!
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スメタナ(1824-1884)総合評価



ピアノソロ曲:☆☆☆☆☆
ピアノ協奏曲:無し
ピアノ室内楽:☆☆☆☆☆
連弾&2台 :無し
歌曲伴奏  :(現在のところ不明)
ピアノ教育 :(現在のところ不明)

音楽史評価 :☆☆☆☆☆

コメント 等は明日号以降にて。
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