Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

シューベルト舞曲の自筆譜番号「MS.」について(No.1606)

2008-12-18 21:29:35 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
来年2月12日に佐伯周子が弾く「D977」についても、この「MS.問題」は付きまとっている。

自筆楽譜が存在している曲であり、オリジナル形ははっきりしている!


のだが、1989年「新シューベルト全集:ピアノソロ:舞曲I」までは実態がわからない曲だった。
・・・が、2008年末の現在から見れば 19年も前のこと。誰か他のピアニストがガンガン演奏していると思ったら、全然違う実態。誰1人として(日本では最小に言っても)演奏していない。おそらく世界中誰もが演奏していない。エンドレスのCDはヘンレ版演奏だ!
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シューベルト舞曲の自筆譜番号「MS.」について(No.1605)

2008-12-17 19:08:44 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
エプシュタイン & マンジェフスキの方針は

  1. シューベルト生前出版楽譜が「最も正しい編集方針」 ← 正しいと思う
  2. シューベルト死後出版楽譜も「次に正しい編集」 ← 正しく無いと思う
  3. シューベルト自筆楽譜は「最も軽い資料」 ← 結果はこうなっている

となった。

  1. 1889&1897年 旧シューベルト全集 エプシュタイン & マンジェフスキ校訂

  2. 1951年 ドイチュ著「シューベルト主題カタログ」初版

  3. 1956年 ヘンレ版「シューベルト 舞曲全集全2巻」 ミース校訂

  4. 1973年 ウィーン原典版「シューベルト 舞曲全集全2巻」 ヴァインマン校訂


と延々と「84年」もそのままの形で引き継がれ続いた。あちゃーーーーーーーーーーーーーー!!!


シューベルト舞曲楽譜の編集方針に初めて異論を唱えた = モーリス・ブラウン


であり、最小に言って 1966年 の段階で「単行本」として出版されている。学術論文としての提出は数年前であろう。その後の推移は以下の通り。

  1. モーリス・ブラウン著 : 「シューベルトに関するエッセイ」1966年

  2. 新シューベルト全集 :「ドイチュ シューベルト主題カタログ 新版」1978年

  3. 新シューベルト全集 :「ピアノソロ第6巻 : 舞曲第1巻」リッチャウアー校訂 1989年


が出版された。どれを読んでも「自筆譜重視」はひしひしと伝わってくるのだが、なぜか日本では完全に無視されている。世界的にも同じかも知れない。
 「大差無いかも知れない。大差あるかも知れない。」中立的に考えてもこのようになるのが普通。「なぜシューベルトの自筆楽譜稿は軽んじられるのか?」は私高本には納得行かなかった。この2月から(何年掛かるかはわからないが)名手佐伯周子のピアノで「新シューベルトの通り」に全曲聴けるのは、楽しみでならない。
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シューベルト舞曲の自筆譜番号「MS.」について(No.1604)

2008-12-16 19:54:41 | 作曲家・シューベルト(1797-1828

シューベルトが作品番号付き生前出版したピアノソロ舞曲一覧



  1. 作品9 : (36の)オリジナル舞曲

  2. 作品18 : (12の)ワルツ、(17の)レントラー、(新しい9の)エコセーズ

  3. 作品33 : (16の)ドイツ舞曲と(2つの)エコセーズ

  4. 作品49 : ギャロップと(8の)エコセーズ

  5. 作品50 : (34の)「感傷的なワルツ」

  6. 作品67 : 「ウィーンの貴婦人レントラー集」
    (16のレントラーと2つのエコセーズ)

  7. 作品77 : (12の)「高雅なワルツ」

  8. 作品91 : (12の)「グラーツワルツ」


以上8作品である。

8作品群全てに「出版譜通りの自筆譜」は一切残っていない


 これが、「シューベルト舞曲にだけ存在する固有の問題」である。ピアノソナタや即興曲、楽興の時などでは、楽譜が残っている曲の方が多い。(作品53 D850,作品78 D894,作品90 D899)歌曲も自筆譜が残っている曲は多い。(「魔王」作品1 D328など)
 イ短調ピアノソナタ作品42(D845)や楽興の時作品94(D780)のように、自筆譜が全く残っていなければ、出版楽譜を元に校訂されるので、これはこれで問題は少ない。舞曲の場合、作品49 と 作品67 と 作品77 と 作品91 はこのパターンである。


 ・・・で、作品9,作品18,作品33,作品50 は「シューベルト学者が頭を抱える事態」が発生している。つまり

  1. 自筆譜は存在している。

  2. しかし、「伝承の形」が出版楽譜とは全く異なる!


 この事態に「シューベルト学者」は直面した。

真っ先に解決を迫られたのは、旧シューベルト全集編纂責任の エプシュタイン&マンジェフスキ


であった。その結果は以下のようになった。

  1. シューベルト生前出版楽譜最優先

  2. (旧シューベルト全集刊行以前に)刊行された死後出版も次に尊重

  3. 旧シューベルト全集時点で刊行されていない「曲」についてのみ、「抜き出し」で新規に刊行する


であった。これはこれで1つの解決案であったが、この案が「旧シューベルト全集舞曲刊行」119年後まで「尾を曳く」結果になるとはエプシュタインもマンジェフスキも思っても見なかったことだろう。
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シューベルト舞曲の自筆譜番号「MS.」について(No.1603)

2008-12-15 19:40:01 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
他の作曲家の問題とも違う。
シューベルトの他の分野の問題とも違う。

これが「シューベルト : ピアノソロ曲舞曲」の問題が顕在化しない最大の原因だと、私高本は感じる。

自筆譜稿 = 出版稿 の作品が1点も無い = シューベルト作品番号付き生前出版ピアノソロ舞曲


う~ん、このことを明言しないと、おそらく誰もわかってくれないんですよね > 問題の深刻さ。この先は明日号に書きます。
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シューベルト舞曲の自筆譜番号「MS.」について(No.1602)

2008-12-14 20:33:16 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
2004年8月に「佐伯周子 新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲完全全曲演奏会」を開始してから、早いモノで4年を超えた。

  1. 第1回に「ピアノソナタ D840 の新補筆完成版世界初演」を弾く、と言うぶっ飛ぶ構想 で開始

  2. 本当に演奏してほしかったのは 『Tanze.I』に入っている 数々のシューベルトの舞曲の自筆譜稿


である。2009.02.12 についにその1回目が聴ける! 私高本は 今から本当に楽しみだ!!


 来年2月から、佐伯周子が演奏する「シューベルト舞曲」はおそらく世界中のピアニストが全く振り向きもしなかった境地を切り開いてくれる。

モーリス・ブラウンが「音楽学的」には最小に数えて単行本で30年前に唱えた説であり


「シューベルトの舞曲」は「自筆譜稿 または 信頼のおける筆写譜稿」が重要


との説。これは

1989年には「新シューベルト全集」で出版」された


ので、普遍的になっている! と思ったのは、愚かな私高本の過ち。未だに日本に限らず、全世界的に全く敷衍していない!!

 基本的には「ヘンレ版のシューベルト舞曲」は悪くない楽譜である。ウィーン原典版はやや問題がある。旧シューベルト全集は「新譜当時最高の楽譜だったが、今は古びた」というところ。
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シューベルト「即興曲集」D899(No.1601)

2008-12-13 19:07:56 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
D899 第2番以降の調性構成は次のようになる。

  1. 第2番は「第1番の第2主題が来るはずの並行調 = 変ホ長調」で開始

  2. 第2番終曲は同主調の 変ホ短調 で終わる

  3. 第3番は「第2番終曲の並行調 = 変ト長調」で開始。「第2番中間部の真ん中の 嬰ヘ短調 の同主調」でもある。

  4. 第3番中間部は「並行調であり、第2番の終曲調である 変ホ短調」

  5. 第3番中間部の真ん中は「主部の下属調 = 第2番の中間部の同主調 = 変ハ長調」

  6. 第3番コーダは「第2番中間部の調 = ロ短調 = 変ハ短調」で開始

  7. 第4番は「第3番中間部の真ん中の下属調 = 変イ長調」で開始

  8. 第4番は基本的に「第1番の第2主題呈示部の調 = 変イ長調」で主部が推移し、終曲


と言う構成。つまり

前の曲または第1番で、「既出の調」「並行調」「同主調」「出るハズの調」が次曲に必ず来る


ように出来ている。第4番冒頭のように臨時記号で書いてあるので、見落とし易い箇所も多く、この構成は「良い演奏」で聴かないとなかなか「良さが味わえない」のも事実である。
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シューベルト「即興曲集」D899(No.1600)

2008-12-12 20:35:49 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
祝 1600号!

って、1ヶ月以上手に付かなかったバカなオレ(爆
実は、シューベルトと全く関係ない音楽の文章を根詰めて書いてました。書き終えても放心状態。挙げ句の果てに2日も寝込んでしまった(藁
今日から、シューベルトに戻ります。ご安心を。

絶妙の調性設定で「出版社=ハスリンガー」を欺いたシューベルト


シューベルトは「シューベルト的には一旦完成した D899 の草稿」を結局破棄した。イェルク=デムス がその素晴らしい才能を惜しんで補筆完成した楽譜もオーストリア = ユニヴェルザール社 から出版されているのだが、内容に「キワモノ」の怪がちょっとあり、ほとんど誰も(デムス本人以外は)手を出さない。私高本は「日本初演」を聴きに昔々「新宿文化センター大ホール」に行った記憶がうっすら残っている(ボケてなければ1978年だったと思う)が、あまりの客数の少なさに「このホールはこんなに響くのかよ!!!」と言う記憶があるくらいだ。(30年も前か! 年がバレる!! デムスが信じられないほど多くの女性から人気あって、サインもらいに行ったのにサインが貰えるのにすごく長い時間が掛かったことも思い出される。)

歌曲の世界で「転調の天才」と呼び続けられたシューベルトの才能の飛翔! = D899 全4曲


である。以下、簡単に記す。

第2番 変ホ長調 D899/2



  1. 主部  : 変ホ長調(第1~82小節)
  2. 中間部 : ロ短調 → 嬰ヘ短調 → ロ短調(第83~168小節)
  3. 再現部 : 変ホ長調(第169~250小節)
  4. コーダ : ロ短調 → 変ホ短調(第251小節~283小節)


第3番 変ト長調 D899/3



  1. 主部  : 変ト長調(第1~24小節)
  2. 中間部 : 変ホ短調 → 変ハ長調 → 変ホ短調(第25~54小節)
  3. 再現部 : 変ト長調(第55~74小節)
  4. コーダ : 変ハ短調 → 変ト長調(第75~第86小節)


第4番 変イ長調 D899/4



  1. 主部  : 変イ短調 → 変イ長調(第1~106小節)
  2. 中間部 : 嬰ハ短調(第107~170小節)
  3. 再現部 : 変イ短調 → 変イ長調(第171~275小節)


となる。
詳細な解説は明日号で掲載する。
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