Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

ブリュートナー(No.2589)

2022-09-30 23:23:10 | グランドピアノの買い方・選び方

世界最多=7ブランド有する ブリュートナー


ブリュートナー は「裸線の弦を高音に(他ブランドは全て3本を)4本張り、アリコート を効果的にしている唯一のブランドとして有名。
ブリュートナーの特徴については、2019年お亡くなりになった 森田ピアノ工房 創業者 森田裕之さんエッセイ Morita Piano Repair Shop  をご覧頂きたい。ハンマーの打弦位置が「音を柔らかくする 1/7」が大いなる特長である。


本日より、「ヨーロッパ6大ピアノ」にブリュートナーを加え、「ヨーロッパ7大ピアノ」とする。


世界一 ブランド数が多く、全体像が分かり難いピアノ製造会社 = ブリュートナー社である。

旧東ドイツ ライプチヒ は第2次世界大戦前、ドイツナンバーワンの ピアノ製造会社の集積地であった。日本の1980年頃の浜松、と言えば分かり易いだろうか?
1989年ベルリンの壁崩壊直後にドイツ統一になり、国営企業だった ブリュートナー社 はブリュートナー家に返還された。他のピアノブランドも元の社長に返還された、と推測できる。現在のブランドは次の7。

  1. ブリュートナー
  2. ヘスラー
  3. レーニッシュ
  4. イルムラー ヨーロッパ
  5. イルムラー スタジオ
  6. フプフェルト ヨーロッパ
  7. フプフェルト スタジオ

全体像を理解するのに3ヶ月以上掛かってしまった。(世界一、全貌理解が難しいピアノ会社である。ブリュートナー関係者以外で理解している人は皆無に近い。"Irmler" でgoogle検索すると、間違ったページがトップに来る>< )
「ブリュートナー」「ヘスラー」「レーニッシュ」はファースト・ラインであり、「イルムラー ヨーロッパ」「イルムラー スタジオ」「フプフェルト ヨーロッパ」「フプフェルト スタジオ」の4ブランドはセカンド・ラインである。ファースト・ライン が3ブランドあるピアノ会社はブリュートナー社だけである。(ファースト・ライン が2ブランドの会社も存在しない。)

販売系統が大きく2つに分かれ、1つがファースト・ライン「ブリュートナー」「ヘスラー」販売Blüthner World News、もう1つがファースト・ライン「レーニッシュ」を販売 Rönisch Pianos

これは、東ドイツ時代に製造していたのが「ブリュートナー」「レーニッシュ」の2ブランドだけだったことに起因すると考えられる。販売先の 西ドイツや日本の総代理店は、ベルリンの壁崩壊とは無関係に営業を続けているからである。

上記ピアノクリニックヨコヤマが「ブリュートナー」「ヘスラー」「イルムラー ヨーロッパ」を販売。「イルムラー ヨーロッパ」はセカンド・ラインで、初めポーランドで製造し最終組立てがブリュートナーである。「イルムラー ヨーロッパ」の前は「イルムラー プロフェッショナル」で サミックインドネシア工場 の部品を使って、ポーランドで製造し、最終組立てがブリュートナーであった。Irmler Europe,J. G. イルムラー - Wikipedia
現行機種「イルムラー ヨーロッパ」がサミック インドネシア工場部品を使っているかは不明である。「イルムラー スタジオ」は、中国ハイルン社で製造し、最終組立てがブリュートナーである。
イルムラー ヨーロッパ になる前の イルムラー プロフェッショナル時代の価格表(米ドル)が、これ。Irmler Pianos - Models, MSRP, Serial Numbers & History

ここまでの「ブリュートナー」「ヘスラー」「イルムラー ヨーロッパ」「イルムラー スタジオ」は、「ブリュートナー系列ブランド」扱いである。https://www.bluethnerworld.com/en/instruments
価格は
◎ブリュートナー > ヘスラー > イルムラー プロフェッショナル > イルムラー スタジオ
である。
イルムラー ヨーロッパ は、イルムラー プロフェッショナル の後継機種なので、価格は上昇している。
◎旧東ドイツ人件費 > ポーランド人件費 > 中国人件費
であり、輸送費を掛けても、中国で作るのが最も安い。

「レーニッシュ」「フプフェルト ヨーロッパ」「フプフェルト スタジオ」は「ブリュートナー系列ブランド外」で、「レーニッシュ ブランド」は、これ。Rönisch Pianos
「フプフェルト ヨーロッパ」「フプフェルト スタジオ」はこれ.。https://www.hupfeld-piano.com/en/
「レーニッシュ」はアサヒピアノが販売しており、ファースト・ラインである。アクションは、チェコ ベトア社製である。但し、レンナー社HP を見ると、レーニッシュ のアクションも製作しているのだが、ヤマハ&カワイ のアクションを作っているようなモノだろうか?
「フプフェルト ヨーロッパ」は(アサヒピアノではなく)ピアノクリニックヨコヤマが時折販売している様子である。アサヒピアノ は、サード・ライン と ファースト・ライン しか扱わない方針のようである。スタインウェイ に極めて似ている。
「イルムラー スタジオ」「フプフェルト スタジオ」は日本国内では販売していない。
セカンド・ラインの一次生産国が違うのは、ブリュートナー社だけかも知れない。(他は知らない)

Haessler(ヘスラー) | ピアノクリニックヨコヤマ 売約済ピアノ情報 をご覧頂きたい。


<引用>
ピアノの命ともいわれる“響板”も、ブリュートナーと同じ材料で作られています。
同価格帯のピアノの中でも、ここまでのクオリティーを保っているピアノを
探すことはなかなか難しいでしょう。

それもそのはず。
実はこのHaessler(ヘスラー)、世界中で販売されていますが、
他の国で購入されると、中身が違います。
当店がBluthner(ブリュートナー)の日本輸入総代理店になって以来、
ブリュートナーもヘスラーも、当店特注のピアノなのです。

世界一のアクションであるレンナー社製アクション使用。
響板の仕上げや、使用部品についても、こと細かいサイズやメーカー指定をして
製造する職人も、日本に輸入するものに関しては
ブリュートナーを製造している職人のみが携わるよう徹底しております。
また、整音や実際の製造工程についても、実に細かな注文を出して、
特別に製造しております。
<引用完>


コンサートチューナー = 横山さんの言葉。日本向け「だけ」特別仕様のファースト・ライン。他国向けとは違うのである。

引用元の写真を見ると、ヘスラーグランドピアノは裸線が3本、ブリュートナーは4本。「made by Bluthner」と明記されている。4本弦に拘らなければ「日本向け特別仕様ヘスラー」は純ドイツ製がこの価格。ブリュートナーブランド と ヘスラーブランド の価格表にリンクを貼ります。(消費税率=8%時代なので旧価格と思われるので注意!)

http://bluthner.jp/price_b.html,http://bluthner.jp/price_h.html
これがファースト・ライン価格!
旧東ドイツの賃金廉い工場と言え、これはお値打ち品。ペトロフよりも廉いのだから、純ドイツ産ピアノが。
「ブリュートナー S」は145cmのアップライトピアノ、他社では全く見たこと無い背の高い寸法。

これもファースト・ラインのヘスラーグランドピアノは

・ヘスラーK175 = 505万円
・ペトロフP173 Breeze STANDARD=649万円

う~ん、これは廉い!
格段に廉い!
チェコ ペトロフより廉い!
仕入れ後、即完売になるのは理解できる。


<引用 続き>
ブリュートナーの響きの秘密は「アリコート」にある。とよく言われますが、
実は、アリコートによって響きが増幅されているわけではありません。
最も大きな秘密は、響板の構造にあります。これは、日本ではまだあまり知られていないようで、
ブリュートナーといえば“アリコート”と思っていらっしゃる方が多いようです。

他のメーカーにない、響板の構造(木目の曲げの力の加え方)によって
微弱な音から大きな音まで満遍なく、驚くほど豊かな響きが増幅されるように
作られているのです。これは、ブリュートナーにしかない製造方法です。
※文字だけで説明するのが難しく、ご興味がおありの方は是非ともご来店頂き、
当店代表の横山から、構造セミナーを受けられてみてください♪

非常にコストパフォーマンスの高いグランドピアノです。
同価格帯のさまざまなピアノをみても、細部にわたってここまでの材料を
使って作られているピアノは、現在ではなかなかありません。
<引用完>


「日本向け」と「他国向け」が違う仕様になっている。

  1. アクション 日本向けは レンナーアクション
  2. 外装 日本向けは 艶消し

細かな違いは他にもあるだろうが、ピアノクリニックヨコヤマHP記載に拠ると、この2点が大きく違う。では、「他国向け」は何を使っていたのか? 外装が「艶出し」もあることは分かるのだが、アクションについては見付からなかった。
参考にしたのが、旧東側チェコの ペトロフ 日本総代理店ピアノプレップ のアップライトピアノHPアップライトピアノ紹介 | 株式会社ピアノプレップ
<引用>
そしてペトロフ社製アップライトの最も大きな特徴は、ピアノのメカニック部、アクションの多様性です。

Petrof Original・・・ペトロフ社で製造したもの
Petrof-Renner・・・レンナー社の部品を取り寄せてペトロフ社で組み立てたもの
Detoa・・・チェコ最大の老舗木製玩具メーカーであるデトア社で製造したもの
Renner・・・ドイツのアクションメーカーであるレンナー社で製造したもの

ペトロフのアップライトピアノには、上記4種いずれかのアクションが内部に搭載されています。
※日本に正規輸入されているモデルはレンナー社製もしくはペトロフ・レンナー製アクションを使用しています
<引用完>
1945-1989 期間は、ブリュートナーもペトロフも西ドイツ レンナー社とは取引出来なかったはず。ペトロフ は、「Petrof Original」「Detoa」アクションを使っていた。ブリュートナー社の別ブランド=レーニッシュ もチェコ デトア社アクションを現在も使っている。レンナー社 以外のアクションが悪い訳ではない。(この時点でスタインウェイは使用していない。)だが、リヒテルは「ソフィアライブとプラハ以外のペトロフは鍵盤が重い」と言っているので、一部のピアニストには好まれなかった。

古いHP(2001年頃?)だが、栗田楽器「レンナーアクション」 レンナーアクション  をご覧頂きたい。「ブルッツナー」表記が「ブリュートナー」である。「ヘスラー」は無い。「ペトロフ」も無い。

  1. ファツィオリ
  2. ベーゼンドルファー
  3. ブリュートナー
  4. ベヒシュタイン
  5. フォイリッヒ

2001年頃、ヨーロッパ7大ピアノ中、スタインウェイ(後年レンナーアクション採用&レンナー社買収 スタインウェイ、ピアノアクション大手のRenner社を買収)とペトロフ(後年レンナーアクション採用する)以外全ブランド採用である。2022年現在ヨーロッパ7大ブランド全採用である。

ブリュートナー社の「レーニッシュ」がチェコ デトア社アクション仕様になっていること、20年前にはヘスラーはレンナーアクション不採用、から類推すると、デトア社アクション か 自社アクション を仕様の可能性が高い。

コンサートチューナー 横山さんのブログを読むと、ブリュートナー社の職人気質は半端無く高く、ピアノ職人の域を通り越して、「チェンバロ工芸職人」「フォルテピアノ工芸職人」の感触。超絶人気職人だと30年待ち、と言う伝説もある人たちに近い。
半年遅れは日常茶飯事、とのこと。

Blüthner(ブリュートナー) 233cm 1905年製 ※非売品 | ピアノクリニックヨコヤマ ピアノ展示情報 
100年以上前のブリュートナー。店に展示してあり、販売しない。
100年持つ一流ピアノである。リンク先の 谿博子(たにひろこ)さん の ドビュッシーCD 聴きましたが、素晴らしい演奏&素晴らしい音色です。ドビュッシー はブリュートナーグランドピアノ購入後、次々とピアノ名作品を生み出した逸話が有名です。
コメント
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