Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

読売日本交響楽団第452回定期演奏会批評(No.1385)

2006-09-30 23:30:56 | 批評
 昨日「ロジェストヴェンスキー指揮 読売日本交響楽団 ボロディン交響曲全曲演奏会」を聴いた。感動した。以下、その批評である。

読売日本交響楽団第452回定期演奏会 ロジェストヴェンスキー指揮 読売日本交響楽団 ボロディン交響曲全曲演奏会



 おそらく日本初の「ボロディン交響曲全曲演奏会」と推測される。最少に言って、1996年以降は存在しなかった!


  1. ボロディン : 交響曲第3番 イ短調(未完 & グラズノフ補筆&編曲)
  2. ボロディン : 交響曲第1番 変ホ長調
  3. ボロディン : 交響曲第2番 ロ短調


のプログラムビルディングであったが、最後に置かれた名作 = 交響曲第2番ロ短調 が圧巻。 ホルンソロやクラリネットソロだけでなく、管楽器全体の水準の高さが、(他の2曲とは比肩できない)この曲の素晴らしさをはっきり聴かせてくれた。
 ボロディンは ブラームスと同年生まれ(!)であるが、やや「作曲技法として古くさい」感触がある。 シューマンを媒介として、シューベルト & ベートーヴェン の交響曲を模範としながら、規模がやや不足している。
 これが「現世界の大交響曲指向(← マーラー や ブルックナー)」と相容れないのだろう。 この日の ロジェストヴェンスキー指揮の演奏を聴くと
  • 「日曜作曲家」と自嘲した趣きは皆無!
  • 規模は「シューマン」程度

のロシア国民学派作曲家の全力の曲が聴けたことがうれしい。 もしかすると「曲自体が内包する力」以上の演奏だったかも知れない。
 できる限り近い内に「読響 + ロジェストヴェンスキー指揮 のボロディン交響曲第2番」CDを聴きたい。 
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作曲家論 : シューマン第5回 (No.1384)

2006-09-28 19:50:03 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 シューマンの本領は「作品9~作品17」に表れている。内、作品10はスカなので、作品数にして わずか 8作品。 だが、この8作品の素晴らしさは、他の作曲家(もちろんバッハとかベートーヴェンとかシューベルトとかです、ハイ)に比肩する。
 本日号では、その初めの2作品の「最高録音」を紹介する。(シューマンファンであるならば)絶対に納得してもらえるCDである。 明日以降 「作品12~17」の名演CDを紹介する。期待してほしい。
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キーシン シューマン ピアノソナタ第1番&「謝肉祭」



2曲とも第1位 キーシン (RCA 09026 63885 2)





1,924円(税込)



  • 演奏   :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 音質   :☆☆☆☆☆


2001年録音。 この2曲に関しては、私がこれからどんなに長生きしても「これ以上の演奏」を聴ける可能性は極めて低い(1%未満!)と思わせる名演である。 どちらも「スカな演奏」が横行する曲。ソナタ第1番 は、ポリーニ盤(DG)が以前は名演と思われていたが、キーシン盤が出た後では、存在価値は(歴史的以外には)薄い。
  • 作品9 = 「謝肉祭」
  • 作品11 = ピアノソナタ第1番嬰ヘ短調

である。 この2曲は、キーシン盤で是非是非聴いてほしい。
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作曲家論 : シューマン第4回 (No.1383)

2006-09-27 22:50:24 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 本日は、没後150年の「シューマン」について、『CD批評』を掲載する。もちろん「推薦できるCD」である。「ポンティのスクリャービン」を掲載した悪影響で「推薦できないCD」を掲載するのが主要! と思っていらっしゃる方がいらっしゃるようだが、あくまで「注意して下さい!」は出しても、基本的には「推薦CD」中心にする。
 一生掛かっても弾ききれないレパートリーのある「ピアノ音楽」について、「アホな演奏」中心に紹介しているヒマはありません!!
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アシュケナージ シューマン 選集



第1位 アシュケナージ (DECCA DECCA 4709152)





5,788円(税込)



  • 演奏   :☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆
  • 音質   :☆☆☆☆


1972~1995年録音。7枚組。
 同じ曲を(他レーベルに)再録音開始した時に「中止したのか!」と残念に思ったCDである。 20年以上掛けて丁寧に録音していたのに、ソナタ第3番ヘ短調op.14 などを遺して録音中断に至ったのは、残念でならない。
 1曲づつでは、やや「掘り下げ不足」に感じる曲もあるが、アシュケナージの「繊細な神経」が良い方向に向けて、実績を挙げた録音である。
 1枚当たり 3桁の価格になり、「お買い得」と思う!
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作曲家論 : シューマン第3回 (No.1382)

2006-09-26 23:51:23 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 う~ん、「シューマン論」は反感買ったかも? しかし、「作品番号1桁時代」は「旋律パクリまくり」だったことは事実なのだが、、、
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シューマン 一流ピアニストが到達できない「全集」



 「なぜ」なのだろうか? コルトーもアシュケナージも(他の有名ピアニストも)シューマンピアノ曲集全曲録音 は為し得なかった。 私高本個人の見方ではアシュケナージは 成し遂げるかに見えたのだが!

 「シューマンピアノ曲全曲録音」は存在することは存在する。だが、デムスや伊藤恵のシューマン録音を聴いて満足できるのか? 演奏なのか?録音なのか? はにわかには断定できないのだが、個人的には満足できない。

 シューマンは好きな作曲家の1人なので、言いたいことは多い。もし可能ならば「シューベルトで素晴らしい演奏を聴かせてくれている佐伯周子で 1回は今年に演奏会を聴いて頂きたかった!」が実感。 今さら遅いのだが。
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作曲家論 : シューマン第2回 (No.1381)

2006-09-25 22:21:43 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 真っ先に述べる必要なことがある。

シューマン は素晴らしい一流の作曲家だが、旋律の不足に生涯悩まされた「世界初の作曲家」である



 シューマンのピアノ曲は素晴らしい! 特に「歌曲の年」の前までに作曲された作品の素晴らしさは、その中に「妻クララへの思い」が込められていようとも、「他の女性への思い」が込められていようとも、名作である。
 ・・・が、シューマンは 同じ年生まれの ショパン だけでなく、1才年下の リスト に比べてさえも、

旋律線 = メロディーライン が思い浮かび難かった作曲家


である。
 「作品1」を「アベッグ変奏曲」のような「自分の創作とは思われ難い主題」の変奏曲でデビューした作曲家は、シューマン以前には(名を為した作曲家では)皆無。 最小に言って(交響的練習曲作品13の主題だけでなく)「作品番号1桁時代」は、主題は「パクリまくり」であった。素人作曲家の無名作品だけでなく、シューベルトやパガニーニのメチャ有名作品もある。
 私高本個人としては、「歌曲の年」までで、ほぼ全ての才能を吐き出してしまったと思える作曲家。但しその後の作品であっても、「ピアノ協奏曲イ短調 op.54」1作だけは、なぜか素晴らしい!

 今年は「シューマン没後150年」である。川上敦子も佐伯周子も特に記念する演奏会はしないので、これまで取り上げて来なかった作曲家であるが、一流作曲家である。 なぜか「一流ピアニストの全曲録音」が存在しない。この辺りが、ショパンなどに比べて低い評価を得る原因なのだろうか?
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作曲家論 : バルトーク 第5回 (No.1380)

2006-09-24 20:03:11 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 バルトークの生涯で、「最も長い職歴 は ピアノ科教授」である。「作曲科教授」では無い。 生涯を「ピアノ教育に捧げた」と言っても良いのかも知れない。そんなバルトークの1面を知るのに最も良い楽譜を
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バルトーク お薦め楽譜 その4



パップ晶子編集 ニュースタンダードピアノ曲集 作品集(2)




  • 推薦度  :☆☆☆☆☆
  • 正確さ  :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 校訂報告:☆☆☆☆☆

価格: ¥ 1,680 (税込)


2002年出版。 2003年には既に第2刷が発行される人気曲集である。

  1. 10のやさしいピアノ小品 BB51
  2. ピアノの初心者のために 18のやさしいピアノ小品 BB66
  3. ルーマニアのクリスマスの歌(ルーマニアのコリンダの旋律) BB67

の3集が収められており、全てが「初級者向け」作品である。既に紹介した「子供のために 全2巻」と同じ方向の曲集ばかりが集められている、と考えて良い。

 いろいろと工夫が凝らされているが、最も「他社版」と異なるのは、ルーマニアのクリスマスの歌(ルーマニアのコリンダの旋律) BB67 である。
  • バルトーク自身が「演奏会用編曲」した曲が
  • 曲集全部が終わった後に
  • まとめて最後に集められている

が特徴。

 素晴らしい楽譜なのだが、2点だけ同じパップ晶子編集校訂楽譜と比べた場合、やや物足りない。

  1. バルトーク自作自演録音についての考察が、この曲集だけ欠落している!(← 10のやさしいピアノ小品 第5番&第10番は バルトーク全曲の中でも録音が豊富な曲だけに残念)
  2. 「子供のために」全2巻冒頭にあった「挿絵」があればさらにわかり易い

の2点。もし改訂版を出す機会があればお願いしたい。
 民謡の日本語訳まできちんと正確に記されている素晴らしい楽譜である。
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作曲家論 : ガーシュイン第8回 (No.1379)

2006-09-23 23:41:57 | 作曲家・ガーシュイン(1898-1937
新譜を聴いた。10枚全部聴いた。4枚は8月25日号「宣言」通り、前出と全く同じだった。これからの批評は

  1. これから新たに購入する人だけでなく
  2. 4枚組を購入してしまった人にも「有効な批評」

である。


George Gershwin Box (Membran 223491)CD新譜批評




2006年9月5日発売

10枚組 1,924円(税込)



  • 演奏   :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 音質   :☆~☆☆☆


CD1,CD2,CD10 の3枚だけでも 価格以上の価値がある!



 CD2,CD4,CD6,CD8 の4枚が、既出の同レーベルと同じ内容であることが事前に読めていたCDであり、残り6枚で「価格価値があるか?」と思っていたが、
  • CD1 → 新出の自作自演で ラジオ録音集大成
  • CD2 → 既出
  • CD10 → 「Blue Monday」 録音。これは聴きモノ!


である。 新出残り4枚は私高本の好みには合わなかったが、価値があるのか無いのかは(クラシックバカの)私高本には判断できない。映画のサウンドトラック録音は「つまらない」と感じた、ことだけここに記す。 多くの映画サウンドトラック程度の録音であり、
  • 音が平べったくて
  • 何が何だかわからん!

だけである。 3枚だけで、この価格に対しては滅茶苦茶安い! 音もこの3枚であれば、CD1とCD2は「同時代の録音比」では相当に良いことを保証する。
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作曲家論 : バルトーク 第4回 (No.1378)

2006-09-22 23:36:27 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 本日号はバルトーク。 1年前まで著作権が残存していた関係で、楽譜もCDも「著作権分高かった」のだが、今や著作権フリーになり、世界的作曲家となった! (← バルトーク並びに著作権所有していた遺族の皆様、ごめんなさい!)
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バルトーク お薦め楽譜 その3



パップ晶子編集 ニュースタンダードピアノ曲集 作品集




  • 推薦度  :☆☆☆☆☆
  • 正確さ  :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 校訂報告:☆☆☆☆☆

価格: ¥ 1,680 (税込)


2000年出版。
 本年購入したのだが、「初版&第1刷」だった。 (1) も記載されていないので、2000年時点では後続の楽譜が刊行されるかされないかは決まっていなかったと推測される。
 割合に初期の作品から「難しくもなく易しくもなく」の作品が選ばれており

  1. バルトーク自作自演CD録音と「楽譜」との比較
  2. 初版楽譜のミス、が修正されている!

が魅力。全てを見渡したわけではないのだが、相当に、丁寧な編集 & 校正 で出来ている。 おそらくミスは
  • P42 3段目160小節の 右手3拍目の2ヶの音符に「シャープ」が抜けたことだけ!

だと思う。 素晴らしい楽譜がまた1つ日本から出た!
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東京オペラプロデュース「ドビュッシー:ロドリーグとシメーヌ」日本初演初日批評 (No.1377)

2006-09-21 23:46:32 | 批評
 素晴らしいオペラ公演だった! 「ドビュッシーの新たなオペラ」が日本の聴衆に「ドビュッシーの遺したママ」紹介された瞬間に立ち会えた!

素晴らしかった 東京オペラプロデュース「ドビュッシー:ロドリーグとシメーヌ」日本初演初日




  1. ドビュッシーのオペラ「2作目」が聴けた!
  2. 他人のオーケストレーションなどが「手の入っていない状態」で(おそらく世界初で)オリジナル形態が聴けた!
  3. 主演ソプラノ = 松尾香世子 が入魂の名演で聴かせてくれた!


の3点で意義あった公演。 「オリジナル通りのピアノ版」での上演を企画し、実行してくれたスタッフ(← おそらく 松尾洋代表)に深く感謝する次第である。

  • ドビュッシー「ロドリーグとシメーヌ」を上演することは
  • ベルク「ルル」を上演することに匹敵する!


ことだけは、ここに明記しておきたい。東京オペラプロデュースの快挙である。


 私高本を初めとして多くのクラシック音楽ファンは、「ドビュッシーのオペラ = ペレアスとメリザンド」と思っていると思う。完成したのはこの1曲だけだから。しかし、この「ロドリーグとシメーヌ」も「ドビュッシーらしい作品」である。良くも悪くも!


  1. 作曲の経緯 & 未完成になった原因の推測 → プログラムノート が明快
  2. 様々な角度から焦点を当てた解説 → プログラムノート が明快


である。

 この日本初演(もしかしたら この「オリジナルの形での公開世界初演」)が成功した原因は以下の通りと思う。


  1. ドビュッシーオリジナル通りの「ピアノスコア版」で演奏を決めた!

  2. 指揮者(高野秀峰) & ピアニスト(飯坂純 & 瀧田亮子 2台ピアノ) の充実

  3. 演出プラン(松尾洋)の充実

  4. シメーヌ役の 松尾香世子 の充実



と思う。 明日の Bキャストも聴く。 そして 批評掲載する。 「ドビュッシーピアノ音楽ファン」にこれだけは伝えておく。

22日(金)公演を聴き逃したら、次はいつ「ナマ」で聴けるかわからない!



 貴重な公演が明日金曜王子駅下車ゼロ分(王子ホールの公式説明だが 地下鉄で行っても「エレベータ待ち」がある可能性は極めて高いので3分は余裕を見てほしい)の「北とぴあ」で 18:30 から 楽日公演がある。
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佐伯周子 シューベルトピアノソロ曲完全全曲演奏会 Vol.2 批評(No.1376)

2006-09-20 22:32:16 | ピアニスト・佐伯周子
 音楽専門誌「音楽の友」と「ショパン」の最新号(=10月号)に、8月13日 佐伯周子 シューベルトピアノソロ曲完全全曲演奏会 Vol.2 の批評が掲載された。 ありがたいことである。 佐伯周子 はこの2編の批評を糧にして、さらに飛躍できるように鍛錬を重ねてほしい。 次回リサイタルは 2007年8月8日「シューベルト シューベルトピアノソロ曲完全全曲演奏会 Vol.3」である。 批評は以下の通り。
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音楽の友 2006年10月号 Concert Review (p204) 高山直也 批評


佐伯周子p


 今年5月の「伊福部昭追悼演奏会」で東京デビューし、現在、洗足学園音楽大学大学院2年に在学中の気鋭のピアニスト佐伯周子の演奏会。およそ15年をかけての「シューベルト、ピアノ・ソロ完全全曲演奏会」の第2回演奏会にあたる。
 前半は、ショパン「12の練習曲」、後半はシューベルト「ピアノ・ソナタ嬰ハ短調」D655、<<楽興の時第4番>>D780-4、「ピアノ・ソナタ第14番」というプログラム。
 まず、彼女の演奏は一見つつましやかであるが、聴き進んでいくにつれ、自らの音楽を語る姿勢が強く浮かび上がってきたのが印象的。ショパンでは、アルペッジョの粒立ちが十全とはいえなくもなかったが、みずみずしい感性で色彩感を持って描ききっていた。
 シューベルトも、ことさら歌いまわしにおぼれることなく、深い読み解きによる無駄のない語り口で紡いでいく。それは内省的な佇まいを持ちながらも、演奏家としての強靱さが垣間見えた。若々しさもあるが、今後が楽しみである。
(8月13日・東京文化会館<小>)
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月刊ショパン 2006年10月号 「演奏会から」 (p126) 壱岐邦雄 批評


シューベルトの魅力w浮き立たせる 佐伯周子 ピアノリサイタル



 佐伯周子は洗足学園音楽大学大学院在学中ながら『ベーレンライター新シューベルト全集によるピアノソロ完全全曲演奏会』を展開していて、これはその第2回でもある。加えて今回のリサイタルには、ショパンをスタインウェイで、シューベルトをベーゼンドルファー・インペリアルで弾きわけるという趣向もあった。
 前半はショパンの練習曲作品10全12曲をナショナル・エディションの譜面を見ながら弾いた。左右の手のバランスを整えてまずは練習曲としての本性を浮き彫りにした上で硬美音をきらめかせ、低音を強靱に轟かせるなど、スタインウェイの特性の活かしつつピアニスティックに響かせた。
 後半のシューベルトはピアノソナタ断章断片嬰ハ短調D655(高本秀行補筆)、『楽興の時』第4番、ピアノソナタ第14番で、これも譜面を見ながらの演奏。『楽興の時』の中間部の柔軟優美な歌やソナタ第14番フィナーレなど、ここでもベーゼンドルファーのソノリティを活かしながらシューベルト本来の魅力を浮き立たせ、奏でた。
 このシリーズは15年ほどの長期におよぶというが、ベーレンライター版新シューベルト・ピアノソロ曲の全貌を識る喜びとともに、その間の彼女のピアニズムの研磨や音楽性の深化も併せて期待したい。
(8月13日 東京文化会館小ホール)
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東京オペラプロデュース「ドビュッシー:ロドリーグとシメーヌ」日本初演(No.1375)

2006-09-19 23:53:04 | 演奏会案内
 ピアノ音楽の大作曲家 = ドビュッシー の「オペラ日本初演」が明後日 21日から、東京京浜東北線王子駅下車0分の「北とぴあ」にて開催される。 「ピアノファンは注目!」公演である!
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ドビュッシー:オペラ「ロドリーグとシメーヌ」日本初演 = ドビュッシーオリジナルのピアノ伴奏版!



 表題の通りである。 日本初演なので、私高本も詳細についてはよくわからないことがある。
  • ドビュッシーのオペラは「ペレアスとメリザンド」1作だけ! と思っている人は多い ← あっ、私高本の数日前の姿!
  • 「ピアノ伴奏のオペラ」が実在するのか?

などなど、、、

 東京オペラプロデュース公式ページ「ロドリーグとシメーヌ」 はこちら。チケットはまだある気配。
 Aキャスト 主演ソプラノ = 松尾香世子のブログ はこちら。 美人です! その上、「ハイEs」までは軽々と聴かせてくれていたことは、私高本が太鼓判を押します! 舞台裏まで相当に詳しくわかると思うぞ!

 当 PMJ では、両日公演を批評の予定。 何せ、日本初演オペラの上に、「CDにも存在しないオリジナルの形での上演」とのことなので、
  • ワクワく感 と
  • 「大丈夫?!?!」感 が交錯

である。 もし、「ドビュッシー音楽好き」「ドビュッシーピアノ好き」ならば、足を伸ばして見ると、「日本初演の感動」を味わえるだろう!
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作曲家論 : バルトーク 第4回 (No.1374)

2006-09-18 23:44:54 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 本日号はバルトーク。ちょっとヤバげな作曲家だが、いいぞ! 1年前まで著作権が残存していた関係で、楽譜もCDも「著作権分高かった」のだが、今や著作権フリーになり、世界的作曲家となった! (← バルトーク並びに著作権所有していた遺族の皆様、ごめんなさい!)
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バルトーク お薦め楽譜 その2



パップ晶子編集 ニュースタンダードピアノ曲集 バルトーク子供のために(2)




  • 推薦度  :☆☆☆☆☆
  • 正確さ  :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 校訂報告:☆☆☆☆☆

価格: ¥ 1,680 (税込)


2006年出版。
 副題に「スロヴァキアの子供の歌と民謡によるピアノ初心者のための小品集(オクターブ内の)」とある。
 第1巻 = 「ハンガリー編 40曲」に比較して、
  • 「ハンガリー音楽」の特徴は無く
  • 「ドイツ音楽」に馴染んでいる人(← 演奏家も、指導者も、生徒も!)には「楽」

な特徴がある。 バルトーク生前の大ヒット作であり、いくつかの「校訂楽譜」があるが、この パップ晶子版は

  1. 校訂報告が正確!
  2. 挿絵が極めて有用
  3. 日本語が正確(← 相当に大切なポイント!)

である。 「初版至上主義者」以外の日本人であれば、この楽譜は必携だと思う。
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カワイ表参道 リニューアル記念オープン迫る! (No.1373)

2006-09-17 21:51:08 | ピアノ音楽全般
 本日、「カワイ表参道」の内覧会に行って来た。『表参道ヒルズ』を道を挟んでの立地。 『ヒルズ』オープンは今年冬だったっけ? 今日もすごい人出だった。
 約2ヶ月の期間改装しており、「どれほど素晴らしく生まれ変わるのか?」と注目されていたが、果たして予想以上に素晴らしかった。
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カワイ表参道 9/23 リニューアルオープンの見どころ!



  1. 2階新設の『コンサートサロン パウゼ』の素晴らしさ
  2. 3階新設の『ピアノスタジオ』の『スタジオA』はいいぞ!
  3. 1階楽譜売場がさらに充実

であった。 カワイ表参道ホームページ に随時最新情報が掲載されると思うので、ご覧頂きたい。
 「ピアノ」も「ピアノ楽譜」も質量共に充実した陳列がある!

 ・・・で。「イチオシ」が2階『コンサートサロン パウゼ』である。 フルコンサートグランドピアノが2台据え付けられていて(!)、真ん前の道を走る車の音は99%カット! である。
 昔改装前のココには「喫茶店」があったことを覚えていらっしゃる読者の方も多いだろう。 あの時とは「遮音」自体が全く違う。 40dBくらい改善された感じである。ピアノも カワイフルコンサートグランド が2台。今日ショパンを弾いていた人を聴いたが、良かった。 9/23以降は コンサートが目白押し。興味ある人は聴きに行って下さい。
 尚、ここだけの話だが、「スタジオA」は超割安。(Bに比べても) 1度、ご自分の目と耳で確かめて下さい。
 立地も「日本最高」であり、今後 ヤマハ銀座店 を凌ぐ店になるかも。
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新旧CD「録音比較」 (No.1372)

2006-09-16 22:28:59 | CD&DVD 紹介&批評
 う~ん、読者の方から頂いていながら、実現できていなかった企画がコレ。「新マスタリングとか言っているCDは音質が圧倒的に良いのですか?」と言う質問。う~ん、うなった。結果、第1弾がコレ!

F.グルダ ベートーヴェン「ソナタ + 協奏曲」全集


 相当に「新マスタリングに優位」なモノを選んだつもりである。

 これで、旧マスタリングの方が良かったら「マスターテープが衰えるに従い、どんどん悪くなっていきまっせ!」状態だったが、さすがに そこまでは悪くない。

  1. アマデオ録音の「ソナタ全曲」は 再マスタリングが「効果あり」
  2. Decca録音の「協奏曲全曲」は 「音が悪いママ」なので
  3. 「再マスタリングしていない」 若しくは
  4. 「再マスタリングしても音は全く良くならなかった」

のどちらかである。 おそらくは、「協奏曲は再マスタリングしていない」と聴いた感触では思える。
 しかも「ソナタ集」の録音の良さも「細かく聴けばわかる範囲」なので、「細かな差異は気にしない」人であれば、買い直す必要は全く無い!(← また問題発言だった?!)

 僅かな音質の差を気にするよりは(無限のカネがあるので無ければ)新たな録音を購入した方が良いと思う(← またまた問題発言だろう!)
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ヴュルツ 全モーツァルトプログラム リサイタル批評 (No.1371)

2006-09-15 21:49:43 | 批評
 昨日は、「パップ晶子 バルトーク講座 → ヴュルツ 全モーツァルトプログラム リサイタル」と言う 充実した1日だった。 そう言えば、バルトーク自身が「モーツァルト演奏の大家」であり、「モーツァルト ピアノソナタ全集 バルトーク版」を出版している。 「解釈版」として有名なのだが、バルトーク自身が「モーツァルト録音」を遺してくれていないので、意外に盛り上がらない。(おそらく出版社も思うほどは売れていないだろう)
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2006.09.15 ヴュルツ 全モーツァルトプログラム リサイタル批評



 前半の2曲 = K280 & K284 は「実質的な日本デビュー」に緊張したのか、本領が発揮されなかったヴュルツであるが、後半の

  1. ハ長調ソナタ K545
  2. ニ長調変奏曲 K25
  3. ヘ長調ソナタ K332

は、「すっかり手の内に入った モーツァルト」を聴かせてくれた。

21世紀のグルダ = ヴュルツ


かも知れない。 「自由闊達な装飾」や「歌いまわし」はそれは手に入ったモノである! ヴュルツ は、
  • ソナタ形式の呈示部繰り返しは実行、展開部 + 再現部 は繰り返さない

を基本に「繰り返し時の表情の違い」を見事に表出する。具体的には

  1. アーティキュレーション を変える
  2. ダイナミクス を変える
  3. 装飾を増やす

の3通り。 現在(おそらく)「最も売れているクラシックCD = Brilliant」レーベル で「モーツァルトピアノソナタ全曲」を任されただけの実力者であり、
  • 「モーツァルトで繰り返しを実行する」ならば
  • 1回目 と 2回目 では「表情を変える」ことを
  • 見事に表出!

である。 付け加えて言えば、「CD録音時(= 1998年)よりも、深く濃い表情が描き尽くされている!」 演奏である。
 後半の K545 → K25 → K332 の素晴らしさは、言い尽くせないほど!

  • ベーゼンドルファー コンサートグランド(92鍵)使用
  • (おそらく)ヘンレ版使用

の演奏であった。 次回来日が待ち遠しい。
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