プリマドンナオペラは、プリマドンナが『場』を作り上げる!
ヴェルディ「椿姫」、ドニゼッティ「ルチア」を思い浮かべてほしい。ヴィオレッタ、ルチア に聴いた後の感動は集中している。「プロヴァンスの海」だけ良くて「良かった公演」と思う聴衆は皆無だろう(爆
東京オペラプロデュース「ブリーカー街の聖女」が実施できたのは、橋爪ゆか & 福田玲子 2名のプリマドンナが居たおかげである。これについての感謝は、これまでの批評に書いた通りである。「ブリーカー街の聖女」は、管楽器編成が「変形2管」と言うか「変形3管」と言うか? オーボエとファゴットだけが2管で、他が3管、ホルンだけ4本でチューバ1本あり。さらに、ティンパニ1名 + 他打楽器3名、ピアノ(スタインウェイのAだったように見えた)、ハープ と言う大編成である。弦楽器は 8-6-6-4-3 だったが、響きとしては「8型」と言うよりも「3管編成」に聞こえる。しかも結構「強奏」が多い曲だ。橋爪 & 福田 の ff が無ければ「埋もれてしまう」のだ。東京近辺に「民間オペラ団体」は多いが、「自団体メンバーだけ」で公演が成立しているのは、「東京オペラプロデュース」と「東京二期会」くらいだと思う。二期会に比べて1桁少ない(2桁?)会員の中から、このような日本初演オペラの難しい主役をダブルキャストで選出できるのは、これまでの活動の成果に他ならない。
橋爪 と 福田、2人の歌唱は全く違った。書き難いことだがはっきり書く。(これしか私高本の価値は無いからね)
ff 方向の音量は2名にほとんど差が無かったが「ダイナミクスレンジの巾広さ」は 橋爪ゆか が圧倒的に上であり、表現力全体も圧倒的に 橋爪ゆか が上だった
その原因は2点に集約される。
pp 方向に、橋爪ゆか は無限に音が広がるが、福田玲子は mf まででそれ以下の音量ではストンと「響き」が無くなる
橋爪ゆか は「アメリカ人か?」と言うほど『自然なアメリカ英語』に聞こえるが、福田玲子 は「母音だけで押す」唱法で「子音」がほとんど識別できない
これだけであるが、これはオペラのプリマドンナを務める上で「天と地の差」になった。もっと前にきちんと書くことができれば、福田玲子 に良かったのだが、大好きな シャブリエ「エトワール」アロエス役 などを聴いた時には、
私高本の猫頭がフランス語を全く理解できていなかったので、「きちんと批評出来なかった」ことが原因。深くお詫びする!
福田玲子 は音程は正確だし、音量はふくよか。だが、「何か違和感あるよな?」と感じていた。フランスオペラで聴いている時は(私高本の猫頭では)何が原因か? 全くわからなかった。私高本の仏語力が原因。avoir の活用さえ、全貌は未だに理解できていない程度のバカである(泣
「外国語力理解力皆無」と揶揄される私高本も、メノッティ「ブリーカー街の聖女」程度の英語は「字幕を見れば」理解できる。(字幕制作の増田恵子さん、ありがとうございました!)「イタリア語なまりで歌った方がいいのか?」とかはわからないし、「イタリア語なまりの英語」発音の癖もわからないが。
「today」と言う単語でさえ、(発音が明瞭方向な単語だが)福田玲子では「何と言ったか?」が聞き取れない。前日に 橋爪ゆか では明瞭に聞き取れていたので、これは福田自身の問題である。(メノッティは無関係)
その結果として、信じられないほど、「Aキャスト」と「Bキャスト」で「差」が生じてしまった。
Aキャストは全員「自然な英語発音」だが、Bキャストは「母音で押す」になってしまった
からだ。この呪縛から逃れられたのは「合唱団」だけ。楽日公演で「英語発音」が最もきれいだったのは、合唱団員であった! う~ん、考えさせられる事実。ちなみに
東京オペラプロデュース合唱団は、「新国立劇場合唱団の最高の時」並みの合唱
だった。少なくとも、天吊りマイクはあったので、私高本の発言が信じられない人は、東京オペラプロデュースに頼んで、聴かせてもらってね。人数も少なめだし、私高本も「聴いた瞬間」は「人数と響きの違和感」があったが、これこそ
東京オペラプロデュースが「張り出し舞台」を設置して(チケット代金回収を諦めてまで)得ようとした音響そのもの!
である。松尾史子代表が決断してくれたおかげである!!
・・・で、他の主要役についても、きちんと記述しなければならないだろう。
ミケーレ役 は Aキャストの 羽山晃生 が圧倒的に上
ドン・マルコ役は Aキャストの 工藤博 が圧倒的に上
デジデーリア役は Aキャストの 田辺いづみ が圧倒的に上
であった。他にも書けば
マリア・コローナ役は Aキャストの 小野さおり が圧倒的に上
カルメーラ役は Aキャストの 鈴木彩 が圧倒的に上
アッスンタ役は Aキャストの 丸山奈津美 が圧倒的に上
これまでの東京オペラプロデュース公演では無かった事態。原因を私高本が推察するに
プリマドンナの唱法が伝播した!
だと感じる。
「Aキャスト」は「橋爪ゆか の歌唱」が伝播し、「Bキャスト」は「福田玲子 の歌唱」が伝播した。私高本は、そのように感じた。Bキャストの脇役の何人かは過去に発音悪い、とは感じていなかったのだが、この公演では「英語発音悪いね」と感じた。もしかして、私高本が仏語や独語の理解力が無かっただけ、の可能性もあるので、断言はできないが(爆
Aキャストのミケーレ役=羽山晃生 について。過去最高の歌唱&演技。高音に癖があるのが気になっていたが、今回の「ブリーカー街の聖女」公演では1音も気にならなかった。橋爪ゆか との共演がプラスに働いた結果、と感じる。
Aキャストのドン・マルコ役=工藤博 について。いつも「安定した歌唱」なのだが、今回は「入魂の歌唱」だった。感謝する限りです!!
Aキャストのデジデーリア役=田辺いづみ について。「嫌われ役」を見事に嫌われて演じてくれた。これまでとは別人のように「嫌われモード」をプンプンと匂わせて死んでくれました><
Bキャストの人は、「子音が立たない」発音。あぁ、プリマドンナの唱法が影響したなあ。「マリア・コローナ」みたいに アンニーナ登場前にほとんど大切な出番が終わってしまうソリストでさえ、プリマドンナの唱法が大影響。小野さおり(A) の「あこぎなあおり」は再現されなかったことも印象深い。アッスンタ役=丸山奈津美 の押し出しの強さも Bキャストでは印象に残らなかった。
・・・って、結局、
プリマドンナの唱法に全てのキャストが影響されて、指揮者や演出家でもひっくり返せなかった
ということになった。
ここで「原点」に戻ってもう1回振り返ってみよう。
メノッティ「ブリーカー街の聖女」の、東京オペラプロデュース原語日本初演は「世界初録音」を越す出来で Aキャスト公演を聴かせてくれた上に、「新国立劇場中ホール」で過去最高の音響を提示してくれた
である。
このような素晴らしい公演に(2日とも)現場を聴かせて頂いた私高本は幸せである。これから、新聞やクラシック専門誌に批評が掲載されるだろうが、私高本の猫頭を越す批評が掲載されることだろう。
あぁ、演出と指揮について書いて無いわ(爆
演出は「幕引け」が最高。2日目にカーテンコールに出て来なかったのは、どうやら「八王子オペラ:ロッシーニ:シンデレラ」の演出初日と重なったから、らしい。超人気演出家 = 八木清市、である。
あぁ、指揮者 = 飯坂純 についての記述が最後になるなんて、私高本はバカだ。今回の
舞台引き出し案 も おそらく「飯坂純提案」だろう!
指揮者が拒絶すれば、即廃案だからなあ(爆
ホルンパート制御は楽日まで出来なかったが、これは指揮者の責任では無い。「予算の責任」だろう。山岸さんを1本釣りする予算は無かったんだろうな(泣
Bキャストで「ミケーレ役=三村卓也」に、声量が全く不足で「オケを被せなければ音楽が進行しない!」時には、躊躇があった。指揮棒落とすなよな(藁
今回公演が「Aキャスト軸」だったことは、音で理解した。それだけで素晴らしい成果だった。新国立劇場関係者とかは2日目に大勢来ていた。1日目は来て居なかったような記憶がする。2日目のキャストが弱くて、少々焦ったかな? 2日目だけ聴くと「これまでの飯坂純の最善」は描けていなかった。ホルンは2日目の方がマシだったが(爆
メノッティ自身の演出メンバーの「世界初演」を越す演奏を指揮した飯坂純
って、凄いことだと確信する。この公演の(断定は出来ないが)中心メンバーなのではないか???