Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

5周年(No.1681)

2009-08-22 22:10:27 | ピアニスト・佐伯周子
唐突だが、

本日2009.08.22 = 佐伯周子ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲完全全曲演奏会5周年の記念日


に当たる。
 当初「15年掛かる!」と言ったのは、ほぼ 1/3 消化しているので、大筋では当たっているのだが、これから先10年間継続できるかどうかは微妙(爆

1. この先10年間、私高本が「元気にプロデュース」できるか?
2. この先10年間、佐伯周子が「シューベルトに脇目も振らずに演奏できるか?」
3. 聴衆の皆様が「シューベルトを支持」して下さるか?

辺りがポイント。

D655- D894 のピアノソナタがわずか5年で完全に演奏できた! こと自体が奇跡!


かと思う。佐伯周子には感謝するばかりである。
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『第3グランドソナタはどれ?』 その4(No.1680)

2009-08-20 21:50:08 | 作曲家・シューベルト(1797-1828

ジョン・リード が唱えた説 → D823 は「ピアノソナタ」だ!



 私高本が尊敬する「最高のシューベルト学者」の1人がジョン・リードである。リードの "Master Musicians SCHUBERT" を読んだ時は、衝撃を受けた。何年前だったかな? 「佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲完全全曲演奏会」の前に「岡原慎也 晩年のシューベルト」を企画した前後だったと思う。(余談だが、私高本は当時は「後期シューベルト = D887以後説」だったので、「後期ピアノ曲全曲演奏会」と思っていた。)


 "Master Musicians SCHUBERT" を読むと

D823 = ピアノソナタ と本文でも、作品目録でも明記されている


が特徴。「迷い」は全く無い。
 ジョン・リード の学説は、さすがに「他のシューベルト学者」も無視できず、"SCHUBERT HANDBUCH(2007)" にも『D823 = ピアノソナタ説』が掲載されている。日本では全く話題にならない内に「世界情勢」って変わるんだよね(爆
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『第3グランドソナタはどれ?』 その3(No.1679)

2009-08-19 19:43:04 | 作曲家・シューベルト(1797-1828

根強いファンがいる D664 = 第3グランドソナタ説



 このソナタは、自筆譜も筆写譜も断片すら残っていない曲である。1829.09.30 に初版が「作品120」として出版され、D568 に比べて作品番号が「2ヶ若い」のが特徴。作品番号が若いこと以上に

兄フェルディナンド・シューベルトが作った「作品目録」に 1825年 ピアノソナタ イ長調 と書かれていた、が根拠


である。
 う~ん、シューベルトのピアノソナタに「イ長調」は2曲しかない。

  1. D664
  2. D959(1828.09作曲)

 後者の可能性がゼロなので、D664 = 1825年作曲説 を支持する人たちは、D664 を「第3グランドソナタ」と信じ切っている。


 『兄フェルディナンド作成作品目録』は現存しないが、多くの人が興味を持っており、自分の興味があるところを「又引き」しており、1825年の「ピアノソナタ イ長調」が書かれていたことは間違いない。但し

1825年に「イ短調ソナタ D845」が欠けており、他の年にも見当たらない!


と言う欠陥を有している。
 この兄フェルディナンドの作品目録は、結構間違いが多く、「D353 を 弦楽四重奏曲ホ長調 → 弦楽四重奏曲へ長調 と誤記」などがあることも有名。シューベルトが遺した莫大な曲を楽譜を見ないで「思い出を辿って綴った箇所が多い」のでこれも止むを得ないだろう。


根拠 : 兄フェルディナンド・シューベルトが作った作品目録に「1825年 ピアノソナタ イ長調」あり


反論1 : 当該の作品目録に「1825年のイ短調ソナタD845」が完全に欠けており、長調と短調を誤記した可能性が極めて高い


となる。さらに

反論2 : 「シューベルトのグランドソナタ」の規模を時間的にも楽章数的にも有していない


もある。D568 に比べても小さいソナタである。さらに

反論3 : 出版社ヨーゼフ・ツェルニー は、シューベルトの死の直前から付き合い始めたなので、D894 完成以前に原稿を渡した可能性が皆無


 作品105 の4重唱曲4曲を手渡したのは、間違いなくシューベルト本人である。それからの付き合いなので、D894 以前に原稿を手渡す可能性は無い。この辺りが、

新シューベルト全集編纂メンバーが D664 ≠ 第3グランドソナタ


と明解な態度を取っている原因であろう。
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『第3グランドソナタはどれ?』 その2(No.1678)

2009-08-16 04:06:22 | 作曲家・シューベルト(1797-1828

ベーレンライター新シューベルト全集編纂グループに拠る最有力候補 = D568


 新シューベルト全集の「ト長調ソナタ D894」の項目には次の記載がある。

おそらくシューベルトは、この第3の作品が変ホ長調のソナタ(D568)になることを意図していたと推測される


ヤマハミュージックメディアから出版されている日本語版(YP24)のP5に日本語で掲載されているのでご覧頂きたい。

根拠 : 「第3グランドソナタ」としてシューベルト没の翌年1829.05.27 に「作品122」としてペンナウアーから出版された


反論 : いつ誰が「第3グランドソナタ」として出版しようとしたか? が不明



 形の上から「最も合致しそう」と新シューベルト全集編纂グループが見込んでいる曲が D568。「第3グランドソナタ」として出版されていることが大きい。出版社ペンナウアー は「第1グランドソナタ 作品42 D845」も出版しており、ピアノソナタ出版には理解力の高い出版社と考えられる。

アントン・ペンナウアーが出版した曲一覧



  1. 作品31 D717「ズライカII」 1821.03頃作曲 1825.08.12出版

  2. 作品39 D636「憧れ」 1821.02.08以前作曲(第1稿)1824.04.24作曲(第2稿) 1826.02.08出版(第3稿)

  3. 作品43/1 D828「若き尼」 1825作曲 1825.07.25出版

  4. 作品43/2 D827「夜と夢」 1825作曲 1825.07.25出版

  5. 作品55 D859「ロシア皇帝アレクサンドロス一世の逝去に寄せる大葬送行進曲」 1825.12.01以降作曲 1826.02.08出版

  6. 作品42 D845「第1グランドソナタ」 1825.05作曲 1826.03.01出版

  7. 作品56/1 D767「逢う瀬と別れ」 1822.12作曲(第1稿) 1826.07.14出版(第2稿)

  8. 作品56/2 D737「竪琴に寄せて」 1826.07.14出版

  9. 作品56/3 D738「林にて」 1826.07.14出版

  10. 作品66 D885「ロシア皇帝ニコライ陛下の塗油式に寄せる大英雄的行進曲」 1825.12.24以降の作曲 1826.09.03「塗油式」実施 1826.09.14出版

  11. 作品87/1(初版は作品84) D713「不幸な男」 1821.01作曲(第1稿)1827.08.06出版(第2稿)

  12. 作品87/2(初版は作品84) D637「希望」 1827.08.06出版

  13. 作品87/3(初版は作品84) D638「小川のほとりの若者」 1819.04作曲(第1稿)1827.08.06出版(第2稿)

  14. 作品64/1 D825(4重唱曲) 1826夏作曲 1828.10.06出版

  15. 作品64/2 D825A(4重唱曲) 1826夏作曲 1828.10.06出版

  16. 作品64/3 D825B(4重唱曲) 1826夏作曲 1828.10.06出版

  17. 作品122 D568「第3グランドソナタ」 1817.06作曲(第1稿)1829.05.27出版(最終稿)

  18. 作品124 D857「デルフィーネ」と「フローリオ」 1825.09作曲 1829.10.30出版

  19. 作品123 D786「ヴィオラ」 1823作曲 1830.11.26出版


 以上の通りである。


 ペンナウアー出版の曲については、

  1. 名曲の「率」が極めて高い

  2. ピアノ曲は、作曲 → 出版 が極めて短い!

  3. 歌曲は「手を入れた稿」で出版することが多い


の3点が特徴。
 作品55 D859「ロシア皇帝アレクサンドロス一世の逝去に寄せる大葬送行進曲」 は わずか2ヶ月の内に 作曲 → 出版 されたことは間違いない。

  1. 連弾曲
  2. 行進曲
  3. 時節の話題に盛り上がる曲

であったにせよ、すさまじい速度だ!
 しかも

ペンナウアーは、「試し刷り」をシューベルトに見せて「できる限りの改善した初版」を提供した良心的な出版社


である。
 こうした努力がシューベルトの信頼を得て、主要歌曲を出版するようになったのだろう。


 ピアノ曲に戻る。連弾曲は信じられない速さで出版された。「第1グランドソナタ」も1年掛からずに出版された → しかも「試し刷り」の校訂を入れて!!!

 D568 は、D845 に比較すると「小さな規模のソナタ」である。変奏曲も無いし、ロンドも無い。しかし「ペンナウアーの出版パターン」からすれば「受け取って1年以内には出版がピアノ曲の基本」のようである。

逆算すると、1828年5月過ぎに楽譜受け取りの可能性が極めて大


となる。



『後期シューベルト(1825年3月以降)のクセ』の1つに「同じ調性で作曲を続ける」


をここに指摘する。

  1. 1825年3月からのハ長調 → D944(=D849) と D840

  2. 1826年6-10月のト長調 → D887 と D894 と D872「ドイツミサ」

  3. 1827年夏以降のハ短調 → D899 と と D915 と D958

  4. 1827年夏-1828年9月のハ長調 → D605A と D780 と D934 と D956

  5. 1827.12 - 1828.01のヘ短調 → D935 と D940

  6. 1828春 - 1828.09のイ長調 → D951 と D959

  7. 1828 - 1828.09の変ロ長調 → D898 と D960


となる。このリストに1つ追加したい。

1827.11 - 1828.06の変ホ長調 → D929 と D946/1&2 と D568 と D950


 変ホ長調リストは結構興味深い。

  1. 初の「国外出版作品 → 作品100 = D929」

  2. D946/1 を「序奏」と考えれば、変ホ長調作品 = D946/1&2

  3. シューベルト ミサ曲の最高傑作 = D950


である。


 シューベルトの「変ホ長調の傑作」は、この時期以外にもあることはある。

弦楽四重奏曲変ホ長調 D87 → 1813年作曲 は傑作


である。
 だが、他の変ホ長調作品への影響は極めて小さいだろう。交響曲やピアノソナタには「他の変ホ長調作品」は今のところ見当たらない。


 もう1度「原点に戻る」を実行する。

原稿受取 → 出版 が手早いペンナウアーが3年以上も放置するか?


これが最もおかしい点に私高本は感じる。シューベルトが「第3グランドソナタ」と名付けた可能性は「変ホ長調の自筆譜が全く見付かっていない」のだから否定はできない。ただ、1825.08-1826.10 の間に「出版用に移調して、改訂」ならば、もっと早く出版されている可能性が高いのだ。

「第4グランドソナタ=D894」が「幻想曲」として出版された後に、『番号が揃っている第2番の次の作品番号』として 移調&改訂 の可能性が極めて高い


と私高本は考えるのである。
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『第3グランドソナタはどれ?』 その1(No.1677)

2009-08-15 17:11:47 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 シューベルトの「数についての不思議な点」は結構多い。

  1. 通し数が辻褄が合わない
  2. 自筆譜記載の年月日の辻褄が合わない

が主な点。この『第3グランドソナタはどれ?』は前者の代表例である。



  1. 1825.05作曲 1826.03.01出版「第1グランドソナタ」イ短調 作品42 D845

  2. 1825.08作曲 1826.04.08出版「第2グランドソナタ」ニ長調 作品53 D850

  3. 1825.08-1826.10作曲 「第3グランドソナタ」調性不明

  4. 1826.10作曲 1827.04.11出版「第4グランドソナタ」ト長調 作品78 D894「幻想ソナタ」


と言うラインナップが存在していることは、昔々のシューベルト学者たちが既に知っている。問題なのは

すっきり該当する「第3ピアノソナタ」は存在しない


に尽きる。う~ん。


 ニ長調ソナタ作品53 D850 を作曲&出版後、ト長調ソナタ作品78 D894 は「ピアノソナタ」としてでなく「幻想曲」として出版された。

D894 の自筆譜には『IV.Sonate furs Pianoforte allein Oct.1826』の署名あり


なので、本来は「第4グランドソナタ」になるハズだった。だが、

「第3グランドソナタ」は出版されていなかったので「第4グランドソナタ」としては出版できない!


事態が発生する。1827年4月直前だろう。手紙のやりとりからすると「ソナタ でも 幻想曲 でも良い」とシューベルトは(渋々)承諾し、「幻想曲」として出版された。
 1825年以降のシューベルトは「これ!」と思った作品はほぼ売り込みに成功する作曲家になりつつあった。1825年より前には、最少に考えて

  1. 1824.03作曲 弦楽四重奏曲第14番ニ短調「死と乙女」D810 出版失敗

  2. 1824.06作曲 連弾ピアノソナタ ハ長調「グランドデュオ」D812 出版失敗

  3. 1825.04作曲 ピアノソナタ第15番ハ長調「レリーク」D840 出版失敗


があった様子。「死と乙女」は曲想が暗過ぎ、「グランドデュオ」は変奏曲とロンドが無かったこと、「レリーク」も変奏曲とロンドが無かったこと、の可能性が高い。皮肉なモノで、「死と乙女」は変奏曲があり、死後は最も人気の高いシューベルト器楽曲になったにもかかわらず、生前出版はできなかったのである。
 D812 と並行して作曲された 連弾変奏曲 D813 は、「作品35」として 1825.02.09 に出版されているので、

出版社の「変奏曲好み」は余りにも偏って強い!


ことを断言できる。
 せめて「死と乙女」は生前出版してほしかった、と私高本は祈るような気持ちになる。


 ・・・で、D850 → D894 の「シューベルト主題カタログ」を読むと、「第3グランドソナタ」に該当する可能性のある曲は1曲も無いのだ!
 新版でも旧版でも1曲も無い! この時期は 交響曲「グレート」D944=D849 の第2楽章~第4楽章作曲 & 仕上げ の時期であり、作曲数がシューベルトとしては異常に少ない時期ではある。
 だが、「自分にウソを付く」ことは決して無かったシューベルト。「第3グランドソナタ」を実際には作曲しなかったのに「第4グランドソナタ」の署名はしなかった、ことだけは断言できる。
 どの曲が「第3グランドソナタ」だったのか? は、新資料が発見されない限り断定はできない。

新資料 = 「第3グランドソナタ」署名入り自筆譜再発見!


 これが出てくれば完璧だ! 1日も早く再発見してほしい次第だが、シューベルト学者が大勢で手分けして捜索しているにもかかわらず、21世紀の今日まで見付かっていない。
 そこで、

「可能性が極めて高い」と推測される3曲 = D568,D664,D823 の3曲を1晩で聴いて頂く → 2010.01.07演奏会


を企画した。佐伯周子 と 岡原慎也 の協力を得て実現する。これまで出て来た学説は多く、他の曲も候補に挙がったこともある > 有力シューベルト学者

 だが、最新学説を中心に据え、「可能性が1%未満の学説」は外して、有力な3曲だけを演奏して、聴衆の皆様に聴いて頂くことにした。どれもが名曲である。そして、どれもが「他のシューベルト学者から同意が得られない弱点」も持っている。「音楽の質の問題」ではなく「外見的問題」である。 私高本も最後の最後のところは全くわからない。

最新研究ではこのような考えになっていて、実際の音を聴いて頂いて、全3曲とも愛聴してほしい曲ばかり!


だからである。
 明日号から、個別の曲の「第3グランドソナタ」の支持ポイントと反論ポイントを記述する。おそらく「3曲の内1曲が該当している」ハズである。「馬券」よりも当たる確率は低いが、「宝くじ」よりも当たる確率が高いぞ!
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8/12(水)演奏会プログラムノート後記(No.1676)

2009-08-13 14:11:51 | ピアニスト・佐伯周子
 昨日はお暑い中をご来場頂きまして誠にありがとうございました。まず初めにアンコール曲のご報告をさせて頂きます。

  1. ベートーヴェン : エコセーズ 変ホ長調 WoO.83

  2. シューベルト : ピアノソナタ第17番ニ長調「第2グランドソナタ」作品53 D850 第3楽章 スケルツォ


でした。


 演奏会プログラムノートに「書かなかったこと」として、シューベルト自身が自筆譜に書かなかった「D946/1&2 の題名」があります。おそらくシューベルト自身は

題名は何でも良い。出版されて1人で多くのピアニストに弾いてほしい! 聴いてほしい!!


だったと思います。
 昨日の 佐伯周子 の演奏を聴きながら『感じた題名候補』は

  1. 幻想曲

  2. 序奏と華麗なる大ロンド

  3. 即興曲集


の順に「名前が合致するだろう」と言う感触。「楽興の時」は無い、と感じた > あくまで私高本の感覚だが。


 会場には、有望若手ピアニスト から 超有名財界関係人 まで来て頂き、開演前から何やら華やかな雰囲気。

佐伯周子 の「皆様にドリンクだけでも、気軽に楽しんで頂いて下さい!


の言葉と好意の申し出により、当日休憩時は

無料でドリンクを楽しんで頂く「フリードリンク」をご提供させて頂いた


佐伯周子 に感謝!


【プロデューサーによる演奏会演奏の感想】

佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲完全全曲演奏会 第6回


は「第1回」から数えて丸5年が経過し、第6回が終了した。

当初計画した『第1チクルス』 → D840 で開始し D845 で終了する『D760 → D894』が完了


したことになる。D760 → D894 の主要曲、つまり

  1. D365「36のオリジナル舞曲集」作品9

  2. D760「さすらい人幻想曲」作品15

  3. D145「12のワルツ、17のレントラー、9のエコセーズ」作品18

  4. D784 ピアノソナタ第14番イ短調 

  5. D840 ピアノソナタ第15番ハ長調 「レリーク」新補筆完成版

  6. D845 ピアノソナタ第16番イ短調 作品42「第1グランドソナタ」

  7. D850 ピアノソナタ第17番ニ長調 作品53「第2グランドソナタ」

  8. D894 ピアノソナタ第18番ト長調 作品78「幻想ソナタ」


が全て完了したことになる。
 5年前には想定していなかったことだが、

  1. D783 「16のドイツ舞曲と2のエコセーズ」作品33

  2. D735 「選定候ギャロップと8のエコセーズ」作品49

  3. D779 「34の感傷的なワルツ」作品50

  4. D734 「16のウィーンの貴婦人レントラーと2のエコセーズ」作品67

  5. D969 「12の高雅なワルツ」作品77


の 5曲集が抜けている!
 私高本の頭が抜けているんだよね > 5年前は、現在ほど「シューベルトの全体像が掴めていなかった」が原因。上記舞曲集の内、私高本自身は佐伯周子に D735 と D969 の2曲集は聴かせてもらっているし、一番上の D783 は「ブレンデルの超得意曲」なので、全曲像は掴めているようにも思えるのだが(爆


 多くのピアニスト(おそらく 90%を超えるピアニスト)は、シューベルトのレパートリーについて

  1. D899 以降の曲 = D899,D780,D935,D946,D958,D959,D960

  2. または D760 で開始して

  3. この8曲集内で完結してしまう!


のである。この8曲集が名曲であることに異存は一切無い。しかし、その間に作曲された D784 → D894 も同等の名曲揃い! なことは、ほとんど全ての聴衆には『閉ざされた真実』であったのが5年前の2004年である。

大曲ほど名演を演奏する驚異のピアニスト = 佐伯周子


に『シューベルト完全全曲演奏会』を持ちかけたのはそんな時であった(爆
 最初の2回は手探り。「佐伯周子のオハコ → ショパン」が前半プログラムに入った演奏会が第2回までであった。第3回の「D894 の名演」を経て、第4回の「オリジナル舞曲集の超名演」に出会い、第5回の「ピアノソナタ第17番ニ長調の超名演」を聴かせてもらい、今回第6回の超名演揃い!!!


 次回公演が今から楽しみだ! 「第3グランドソナタはどれだ?」 の副題が付いたプログラム。次号以降で詳細を書く予定。ちなみに

佐伯周子の演奏のおかげで「ブログ記事の質」は保たれている


ので、応援コメントをお待ちしております。(応援トラックバックも歓迎!)
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8/12(水)の演奏曲順と「プレトーク」について(No.1675)

2009-08-11 19:17:44 | ピアニスト・佐伯周子
明日の演奏曲順が決定した。

  1.  12のワルツと6のエコセーズ 作品18 D145 第1分冊

  2.  ピアノソナタ第16番イ短調「第1グランドソナタ」作品42 D845

  3.  17のレントラーと3のエコセーズ 作品18 D145 第2分冊

  4.  2つのピアノ小品 D946




 プレトークについては、開演24時間前になっているのだがまだ確定ではないのだが

佐伯周子 のピアノ演奏が入る予定


である。
 前回プレトークよりは、グッと満足度が高くなるハズです。D946 について、「実際の音」でいろいろと違いを実感して頂ける可能性が高いです!

当日券あり


です。明日の東京は晴れるようなので、是非是非聴きにお越し下さい。

(追記)
ピアノソナタ第16番イ短調作品42 D845 の第4楽章「Allegro vivace」をこれだけ「楽章通して」軽快かつ快速かつ不気味に演奏したことは聴いたことがない!!!
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続 佐伯周子のシューベルト演奏の魅力(No.1674)

2009-08-10 22:13:06 | ピアニスト・佐伯周子
 今日も通して聴かせてもらった。その魅力を箇条書きにしてみた。

  1. 「シューベルトの構築力の大きさ」がそのまま聞こえて来る

  2. 「シューベルトの精密な細部の磨き上げ」がそのまま聞こえて来る


 この2点に尽きると感じる。

シューベルトは楽譜を細部まで細やかに指示するタイプ


と私高本は感じる。細かな人もいれば、大まかな人もいる。ウィーンの作曲家では

大まかな代表 → ハイドン


細やかな代表 → マーラー


だろう。
 時代が下るに従い細やかになるワケでもなく、マーラー以降の作曲家でもマーラーほどは緻密に書き込む作曲家は少ない。ハイドンと同時代を生きたモーツァルトはハイドンよりは細やかだと感じる。

大曲を作曲する人ほど「細やか」


が基本だと感じる。
 マーラーの交響曲はブッ飛ぶほど時間的にも編成的にも大きい。サントリーホールの舞台が狭く感じられることが多い(爆
 大きな曲を野放図に記譜したママにしておくと、とんでもない演奏を実行されてしまう確率が極めて高い。マーラーほど細やかに書き込んでも、「とんでもない演奏」に当たってしまうことが多いのが現実だ!
 ハイドンの主力とした交響曲は、ベートーヴェンの交響曲ほどは大きくないだけでなく、モーツァルトの後期交響曲に比べても「やや小振り」である。モーツァルト「ジュピター」などは、当時としては異例の大きさだ! さらに、モーツァルトは「オペラが主力の作曲家」ともみなされる。

時間的にも登場メンバー的にも圧倒的に、 オペラ > 交響曲


である。


 演奏を聴いて、佐伯周子 に「最も近い演奏家」として1名だけ名前を挙げるならば

ホグウッド


である。
 指揮者だし、古楽器演奏がメインだし、ほとんどイメージが合致しない人も多いだろうが

ホグウッドは「指揮者」であると同時に「鍵盤楽器奏者」の名手


なのだ。モーツァルト交響曲完全全曲録音ではフォルテピアノを「弾き振り」したことは有名。他に「シューベルト:ヴァイオリンソナタ全曲(4曲)録音」でもフォルテピアノを演奏した名演あり!!!

ホグウッドの演奏の特徴 = 作曲家の良さを最大限に引き出す


 これだけである。「ホグウッドを聴いた!」と言う感触は薄い。モーツァルト交響曲全曲録音を聴くと『モーツァルトの神髄を聴いた!!!』と言う感触が真っ先に来る。使用楽譜は『ベーレンライター新モーツァルト全集』なので、楽譜を見ながら聴くと「おぉ、楽譜の通りの演奏だと、こんなに素晴らしい曲だったのか!」と感じる箇所だらけである。
 「シューベルト交響曲」に関して言えば、『ホグウッド指揮東フィル』で「未完成D759」と「グレートD944」を東京オペラシティで聴いた。素晴らしい演奏会だったが「シューベルトが前面に出て、ホグウッドは後ろで控えていた」感触だった、ことをここに記す。


 同じモーツァルト交響曲を、ワルターやカラヤンの演奏で聴くと随分違う感触だ。「ワルターを聴いた」「カラヤンを聴いた」と言う色彩が強い。
 古楽器指揮者でも、ブリュッヘンは同傾向。「ブリュッヘンを聴いた」と感じ、「モーツァルトを聴いた」感は薄い。楽譜と違う様々なアイデアがテンコ盛りなので、モーツァルトを聴いた感触は後退して当たり前だ。


 ピアニストは『基本的な方向として「個性」を前面に売り出す』傾向が強い。他の楽器と組まずに単独で演奏会が成り立つ唯一の楽器だからだろう。昔々の伝説ピアニストは別にしても「録音が残っているピアニスト」を聴くだけでも

  1. ラフマニノフ
  2. ルービンシュタイン
  3. ホロヴィッツ
  4. リヒテル
  5. ブレンデル
  6. グールド

などなど「個性的な演奏」が鳴り物入りで聞こえて来る。ルービンシュタイン、ホロヴィッツ、リヒテル、ブレンデル の4名は「シューベルト:ピアノソナタ第21番変ロ長調D960」の名録音を残しているから時間がある時に聴いてほしい。同じ曲とは思えない!(爆



佐伯周子のシューベルト = シューベルトの指示通り


はご自分の耳で確かめてほしい。8/12(水)に楽譜を持ち込みながら聴いて頂くのも1つの方法だろう。「近めの音」を好む方ならば、最前列であれば楽譜が見える明るさが確保されていることはここに記す。


 シューベルトは「時代的には、極めて時間的に長い音楽」を作曲した。それが原因で「出版予定曲のキャンセル」なんてことも喰らっている。(→ 作品29の2 と 作品29の3 の弦楽四重奏曲 の出版はキャンセルされた!)
 それにもめげずに作曲を続けたのがシューベルト。曲名を勝手に変更されたりも経験する。その防御策か(?)、D946/1&2 は「曲名なし」である。そのような外見的なことよりも、シューベルトは「曲の細部」にこだわる。

シューベルトの意図通りの演奏 → 佐伯周子のシューベルト


を1人でも多くの方に聴いてほしい。
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D946/1&2 と D145 の「オリジナル版」演奏初演(No.1673)

2009-08-09 18:54:40 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 8/12(水)の 佐伯周子 の D845 の演奏については、

  1. バドゥラ=スコダ
  2. ブレンデル
  3. グルダ

などと「ほぼ同じ補筆」演奏なので、シューベルトファンの皆様ならば「それ聴いたことあるよ!」とおっしゃる可能性が高い。「演奏の質」でなく、「音符進行」についてである。


 ・・・で、プログラムの他の2曲についてであるが、

  1. D946/1 が「聴いたこと無い終曲!」

  2. D145 が「聴いたこと無い曲順!」


になっている。特に「演奏の質」が異なるのが D946/1&2 である! これは「誤記」でない。 D946/1 も異なるが、D946/2 も相当に異なる感触なのだ。



  1. 「ある楽章」を

  2. 「中間楽章」と認識して弾くか?

  3. 「最終楽章」と認識して弾くか?

  4. これで「演奏は全く異なる」


 シューベルトの例であると「ピアノソナタ ホ短調 D566」の「第2楽章」が最も良い例であろう。世界初のシューベルトピアノソナタ全曲録音ピアニスト = ケンプ は「終楽章」と認識 して演奏している。続く クリーン も「終楽章」と認識 である。最近の録音では バドゥラ=スコダ も ティリモ も「中間楽章」と認識 して演奏が実績。 「どちらかが必ず正しい」と思って聴かずに、『ピアニストの認識で演奏の質感が変わる』ことの方が大切だろう。


シューベルト全曲演奏を意図する全ピアニスト → D946/1&2 は演奏 → D946/3 と合わせた「3曲構成演奏」



が過去実績だ。シューベルトのピアノ曲は「曲数が多過ぎ」で完全全曲録音したピアニストは確実に世界で皆無。完全全曲演奏するピアニストの最初になるのが、おそらく 佐伯周子 であろう。「ピアノソナタ中心」であったり「後半作品中心」であっても『全曲演奏に限りなく近い人』を列挙すると以下の通りである。

  1. ケンプ

  2. クリーン

  3. ブレンデル(3回)

  4. バドゥラ=スコダ(2回)

  5. エンドレス

  6. ツァハリアス

  7. 内田光子

  8. シフ

  9. シュヒター

  10. ダルベルト

  11. プリュデルマシェール

  12. ティリモ

  13. ヤンドー

  14. ヴァイヒェルト

  15. クーパー

  16. ビルソン


 漏れがあるかもしれないが、主なピアニストはこの辺りだろう。「ピアノソナタだけ」しか録音していないピアニストもいるので、D946 を全員が弾いているわけではないが、

D946 を弾いたピアニストは全員 D946/1-3 を続けて弾いている!


ことをここに明記しておこう。


 D946/2 が「中間楽章か?」「最終楽章か?」の問題について、大きな差があるか? 大した差は無いか? について、疑問のある方は是非 8/12(水)の 佐伯周子リサイタル を聴いて頂きたい。 D566/2 で発生した問題が「後期シューベルト」で起こっているのだ!


後期シューベルトの「アレグレット系の終楽章 = D840,D850,D894,D959



である。 佐伯周子 は、D840,D850,D894 の3曲を既に「完全全曲演奏会」で弾いた。3曲ともに素晴らしい名演であった。(小曲には若干の不完全燃焼が残ることが多かったのだが・・・)
 D959/4 こそ、私高本は「佐伯周子のシューベルト」で聴いたことが無いが、どうも

アレグレット系の終楽章演奏は「お手の物」!


にしているようだ。これは心強い!
 「D946/2 の彫りの深い演奏」は、是非是非「シューベルトファンの皆様」に聴いてほしい。私高本1人が聴くだけではもったいない!!!!!


 ・・・で追記。「作品18 のワルツ」が「アシュケナージ録音」以上で聴ける日が来るとは、思ってもいなかった! アシュケナージの演奏は素晴らしいからね!!!

 アシュケナージは「多芸の人」で、ピアニストとしてよりも指揮者として大成して行った。N響常任指揮者は凄い!!!
 旧ソ連のピアニストとして、穏健に「妻の祖国 = アイスランド」に移住したのはいつだったっけ? 「作品18 = D145 のワルツ録音」とどちらが早かったんだっけ? ピアニスト = アシュケナージ を代表する素晴らしい録音で、『D784 + D664 + D817 + D145W』 がオリジナルの形だ。全4曲とも素晴らしい!!!


 初めて「LP」を聴いた時の衝撃は大きかった > アシュケナージ録音。ブレンデル や アインシュタイン は、この曲を大して評価していなかったからだ。 素晴らしい曲である。「ピアニストが最高傑作と感じる舞曲集」は、もちろんピアニスト毎に感性が異なる。勿論、学者や評論家毎にも異なる。


 個人別の最高傑作舞曲はおそらく以下の通り。

  1. アシュケナージ → D145のワルツ

  2. アインシュタイン → D790

  3. ブレンデル → D783

  4. バドゥラ=スコダ → D969

  5. 内田光子 → D790 と D820

  6. ウェーベルン → D820


 このような状況。「唯一の確固たる名曲」は選べない(爆
D365『36のオリジナル舞曲集』も D734『ウィーンの貴婦人レントラー』集も D924『12のグラーツのワルツ集』も名作だが。

 リストやプロコフィエフやラフマニノフやラヴェルは、またそれぞれ違う意見が出てくることだろう。
 もしあなたが「シューベルトファン」ならば、『佐伯周子の D145演奏』は聴き逃さないでほしい、と願うばかりだ > D845 も D946/1&2 も素晴らしいが!
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私高本は30年以上「シューベルトに何を聴いていた?」のか?(No.1672)

2009-08-07 20:31:26 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 「佐伯周子のシューベルト」が5年前から「今の水準」であったハズは無い! 5年前の「第1回」も素晴らしい演奏会であり、ご来場頂いた皆様からは満足頂いた旨のアンケートも受け取った。だが(前回からであると思うが)今回演奏会は1桁は上の演奏会になっている。う~ん、ここだけの話だが

ブレンデル、グルダ、ポリーニ、ケンプ、バドゥラ=スコダ などの同一曲録音を聴きまくったが、佐伯周子の方が上


なのだ。
 佐伯周子で聴かせてもらったピアノも小さいから、通常あり得ない。私高本が聴いているステレオは大したことは無いが、「きちんとフルコンサートグランドピアノの魅力」は最低限は聞こえて来るシステムである(爆



『佐伯周子のシューベルト』の最大の魅力 → 冒頭楽章の第1主題で『聴衆の心を掴む』こと!


と思う。
 ブレンデルもポリーニもグルダも(以下略)、皆極めて素晴らしい「シューベルト弾き」である。彼らの録音を繰り返し聴いて私高本の「シューベルト像」も作り上げられた。その演奏を『佐伯周子のシューベルト』は凌駕する。

  1. ダイナミクスレンジの大きさ

  2. 透明度の高い声部進行

  3. シューベルト指示通りの「速めのテンポ」


の3点がその基盤のようにも感じる。
 特に「ダイナミクスレンジ」についてだが、「フォルティッシモの大きさよりもピアニッシモの小ささ」が印象深い。 ヤマハC7 って、表現力が相当に高いのだろうか?????
 わからん(爆
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佐伯周子のシューベルト演奏の魅力(No.1671)

2009-08-06 23:24:58 | ピアニスト・佐伯周子
 本日、「ピアノソナタ第16番イ短調 作品42 D845」と「2つの小品 D946/1&2」と「9のエコセーズ 作品18 D145」を佐伯周子に聴かせてもらった。なぜか「ワルツ」と「レントラー」は省かれていた。このブログが悪かったか?(爆



イ短調ソナタ 作品42 D845 は、「交響的な第1&第3楽章 と ピアニスティックな第2 &第4楽章」の対比が魅力!


である。特に第1楽章は、「これまでの名録音をはっきり凌駕する演奏」だと感じる。古い録音だと技術の問題もあるかもしれない。『第3楽章と第4楽章』は、信じられないテンポで弾く。マジかよ? って感じ。 ブレンデルとかグルダとかバドゥラ=スコダとかポリーニとかと比べて。スピード違反で「青切符」切られても知らないぞ(爆
 
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シューベルトの意図通りには伝承しなかった名曲(No.1670)

2009-08-05 20:09:34 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
8月12日(水)に 佐伯周子 が弾く3つの曲集は

シューベルトの意図通りには伝承しなかった名曲


ばかりである。
 臨時記号(#,♭など)が抜けたり、スラーの位置がずれていたり、テンポ指示が微妙に異なる曲は、シューベルトに限らずモーツァルトでもショパンでも多々ある。また、一旦作曲完了してから作曲家自身が改訂したために「稿」問題が発生している作曲家も多い。ブルックナーの交響曲が最も有名だが、シューベルトのピアノ曲も問題が多発していることはファンの間ではこれまた有名。
 ・・・なのだが、シューベルトのこれらの曲では

  1. シューベルト自身の「改訂」が原因では一切無い
  2. 細かな臨時記号やスラーの位置程度の誤差の範囲でない

ことが顕著。曲毎に見ていこう。

ピアノソナタ第16番イ短調 作品42 D845「第1グランドソナタ」の4小節の欠落


 第2楽章に「4小節の欠落」があるままに、初版が出版された。1826年3月1日のことである。

1958年に バドゥラ=スコダ が論文で指摘するまで132年間、4小節欠落した状態だけで演奏され続けて来た


のである。楽譜に反映されるのは、1979年ロンドン王立音楽院版 までさらに21年を要した。変奏曲楽章の「第1変奏曲」なので、これが欠落していると聴いていて非常に「座り心地悪い曲」に聞こえる!

全く別の曲と組み合わされた D946/1&2


 大作曲家として極めて若く死んでしまったシューベルトにはいくつか散見される問題。出版社が勝手に「他の曲と組み合わせてしまって曲集を作って出版」してしまうのである。

1868年に、ブラームスが「D946/3 と組合せて初出版」


して以来、1951年に ドイチュが「シューベルト主題カタログ初版」にて指摘するまで、3曲が同一の作品集だと信じられてきた。
 ちなみに出版楽譜は【全部】その後も(新シューベルト全集も含め)3曲まとめて出版している。「D946/3 がどの曲集に属していたか?」が判明していないからである。

5小節多い形で出版された D946/1


 これは『ブラームスのシューベルト解釈』が原因。シューベルトは「誰が見てもわかる時は Fine (フィーネ)は書かない作曲家」だった。

舞曲集の自筆譜を見ると、『繰り返し線 = Fine』の時はほぼ全て書いてない


が実績。ブラームス は2番カッコの方に進行すると錯覚し、さらに収拾が付かないので1小節作曲してしまった!
 原典版楽譜では、毎回触れられている問題だが、「ブラームス作曲の1小節削除した楽譜は未だ存在しない」状況である。

作品18の舞曲集は、旧シューベルト全集以来曲順が狂ってしまった


 1823年2月5日初出版の時は何も問題が無かったのに、

1889年ブライトコプフ旧シューベルト全集でエコセーズ第1番~第6番がレントラーの後に移動させられた


 原因は不明。『旧シューベルト全集校訂報告』にも一切記載が無い。旧シューベルト全集以降、ベーレンライター新シューベルト全集が1989年に出版されるまで100年間、全ての楽譜で訂正されないままに出版された。信頼度の高さで有名なヘンレ版も旧全集の曲順をそのまま踏襲してしまった。


 3曲とも名曲なのに、なぜか『シューベルトの意図通りには伝承しなかった名曲』になってしまったのである。
 8/12(水)の 佐伯周子 の演奏を聴くと「今まで聴いたのと違う!」と言う発見をあなたも体験できるかもしれない!
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佐伯周子のシューベルト(No.1669)

2009-08-04 17:57:00 | ピアニスト・佐伯周子
 昨日、佐伯周子 に 8/12(水)の演奏会プログラム全曲を聴かせてもらった。率直な感想を述べる。



大きな曲ほど「演奏の充実」がある = 佐伯周子の特徴


は今回(8/12)もこれまで通りに期待できそう! D840,D894,D850 の「大ソナタ」が過去とても好評だったが、今回の D845 については

  1. 第1楽章の『静けさ』と『爆発』

  2. 第2楽章の『人なつこい主題と表情豊かな変奏曲』

  3. 第3楽章の『リズムの交錯』の楽しさ

  4. 第4楽章の『軽やかな足取り』


が魅力だ!
 聴かせてくれたピアノが 8/12(水)の演奏会で用いる ベーゼンドルファーインペリアル より小さい ヤマハC7 で、低音の魅力はやや後退した演奏のハズ。全長が 65cm くらい短いのだからやむを得ないのだが。


 D946/1&2 の演奏も素敵!

  1. D946/1 は「中間部」の『あたかもグリッサンドに聞こえる上下行』の滑らかさ

  2. D946/2 は特に「第1エピソード」の胸を突かれるような3度のトリルから始まる「突き詰めた緊張感」


がこれまで聴いたことのないほど深い表現。この曲は好きなので、できる限り(実演もCDも)聴いて来たのだが、佐伯周子の突き詰め方は尋常でない! ピアノの全長がもっとあれば・・・
 8/12 の楽しみにとっておこう!!!


 『作品18』については、意外な発見あり。

  1. 前半の『12のワルツ』が極めて充実していて、表現豊かな曲集であり

  2. 後半の『17のレントラー』は前半に比較すると表情がやや淡泊


なのである。(書いていいのか?)
 聴かせてもらった時に「17のレントラー」を「12のワルツ」くらい濃く表現出すことはできるのか? を尋ねたが、どうも曲自体の表現濃度が違うようだ。これまで再三私高本が

●佐伯周子は大曲ほど演奏が充実する

と書いて来たが、『佐伯周子の演奏に起因』するのか? 『シューベルトの作品自体に内在している問題か?』 が断言しにくい状況だ。そう言えば、アシュケナージ(世界的ピアニスト 兼 前NHK交響楽団常任指揮者)はシューベルトのピアノ舞曲で、【作品18のワルツ 12曲】が舞曲中、最高のように考えていて、演奏 & 録音 してくれていたことを思い出し、録音を聞き直して見た。アシュケナージも素晴らしいし、佐伯周子も素晴らしい!!!
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